巨女ノ国 ~#002~

 五人の小人たちは、性格も価値観もバラバラでしたが、不思議と仲が良く、”新しい世界が見たい”という共通の目標について、よく話をしました。

一人目「今の小人の村はあまりに小さすぎる。もっと広い世界で私は自分を試したい。私は言葉で人を喜ばせるのが得意だから、巨女のこともたくさん褒めて、喜ばせて巨女に気に入ってもらえるようになるんだ。」

二人目「一人目、お前は言葉が武器だよな。お前にかかるとみんななんか嬉しい気持ちになっちまう。まったく、不思議な奴だよ。

 俺は筋肉バカだから、体力と根性しか売りになるものがねえ。でも、巨女の大きな体を満足させられるのは俺みたいな体力派のやつだと思ってる。」

三人目「二人目は、腹筋割れてるからな。腹筋フェチの女性というのが世界にはいるらしいと聞いている。この村には男しかいないけれど、お前の肉体を賛美する巨女だって、必ずいるはずだ。

 僕は、何かを創っていないと気持ちが落ち着かないが、自分が創ったもので巨女が喜んでもらえたら素晴らしいと思うんだ。絵でも音楽でも物語でも、想像の世界をカタチにしたら、巨女も嬉しく思うんじゃないかな。」

四人目「みんな自分が何かしてあげることにばかり意識がいきがちだな。・・いやいや、これは悪い意味じゃない。ボクなんて、特に何もできることはないから、うらやましくもあるのさ。

 でも、そんな頼りないボクだからこそ、”何かしてあげなきゃ”っていう母性本能がくすぐられるってもんさ。巨女だって、世話好きで甘えさせてあげたい気持ちはあるはずなんだ。」

五人目「何かしてあげるだの甘え上手だの、お前たちは本当に自分に自信があるんだな。ミーは、自分に自信がない。だから、自分のウリとかがわからない。だから、誰にとっても大切なものをウリにしようと思う。

 誰にとっても大切なもの・・それは、お金だよ。お金。巨女ノ国だって、お金がモノをいう世界であることには変わりないと思うぜ?地獄の沙汰も金次第って言うじゃないか。ミーは、ありったけのお金で巨女に気に入られようと思っているのさ。」

 こんな調子で、皆自分の価値観や自分が信じているものを一番大切だと思いながらも、どこかで他の四人のことを認め、尊重し、大切にしていたのでした。

 同じ価値観なんてものはどこにもなくて、ただ、それぞれにとって大切だと思うものが異なっているだけなのだということを深く心に刻んでいたからです。

 そんな五人はある晩、小人の村を出る相談を始めました。

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