白い暴動
これはフィクションです
フィクションとは嘘ではありません。
頭の中で起こったことを出来るだけ表現したものです。
ダリの絵はフィクションですか?
多分、フィクションだと思います。
The clashを薄暗い部屋でラジカセで聴いていた。1人で。中学生だったか。
8年後もまだ聴いていた。ちょっとマシなコンポでCDで聴いてた。エアコンが効かない西日で焼けたアパートの2階。窓を開けたら細い通りを挟んで家か倉庫かわからないトタンの壁と目線の少し上に窓。壁は確か薄い水色だったと思うが、夜中で色ははっきりわからない。その屋根の向こう側。
火事になってた。消防が来て消火活動をしている。
火が見える。目の前の壁が逆光で真っ暗な闇になる。
俺は一人暮らしを始めて間も無かった。北九州市内の大学に入学したにも関わらず知り合いの不動産に適当に見繕って貰った部屋に住んでいた。さっきまで友達とラジオの公開収録を観に行って原付で帰ってきたばかりだった。いつもの帰り道は通行止めになっていて回り道で原付を押して帰ってきた。通りは火事の見物人が何人も居た。
深夜1時。俺はコンポの電源を着けてタバコを吸っていた。昼間より大分マシだと思うけどベタベタ暑いのは季節のせいだけでは無かった。火の熱は激しく、通りを挟んだこちら側にも間違いなく影響していると思われた。
火事の野次馬こそ、本物の野次馬だと思う。
本物の野次馬を初めて見た。
不思議だけど野次馬に少し温かみを感じた。火事の熱ではなく、優しさを感じた。
髪を脱色した。
耳に元々開いてた穴を追加した。うまく開かなくてすぐに閉じた。
何人か女が部屋にやって来て、そのうち来なくなった。その度に感情が壊れて違う形が構成された。
金の正当な稼ぎ方を知った。それと同時に不当に金を稼いでいる奴等をはっきりと知った。でもその不当さこそが金の稼ぎ方みたいなもんだった。俺は正当さを出来るだけ曲げないでいようと思った。
くだらないってことが凄く面白かった。
猛スピードでバイクを飛ばした。風の音はゴーゴーいってるけどコーナーの入口を確認する頭は冴えていた。車線の端っこをすり抜けた。ギアを四速に上げた。
朝から友達の金を馬鹿みたいにパチンコ台に突っ込んで、馬鹿みたいに玉を出した。勝った金は入れた金を差し引いて山分けした。そのまま雀荘に行って派手なシャツを着た親父や黒服達と朝迄打った。全員帰って行ったので誰かじいさんが来る迄メンバーに打って貰おうと思ったけど、1人今月もう打てない奴が居るってので完全に待ちになった。
どっと疲れがきた。紅茶でも飲んで軽く何か食べて、布団でゆっくり寝たくなった。
部屋にワープして俺は気を失った。起きたら夕方だった。ウイスキーをグラスに注いでちょっと舐めてタバコに火を点けた。