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好きでいられるということ

好きなアイドルを好きでいられるということは幸せなことだと常々思う。
ステージの上で輝く姿を生で見た時直接好きだと伝えることができた時新しいCDが発売された時。こんな時に「好きでいられて幸せだ」と心から思える。

これまで10年以上女性アイドルのオタクをしてきた。これまで「推しメン」と呼べるアイドルは5人いて、その中には「結婚と離婚を経験した子」、「もうほぼ興味がなくなってしまった子」、「自分が推していた時よりも人気が出て今や遠い存在になってしまった子」などがいる。
それでも、運が良かったのかまだ「推しの卒業」は経験したことはなかった。




先日、いつも通り趣味のTwitter徘徊をしていると、推しのうちの1人の卒業が発表されていた。
1番熱心に推していたのは3年前から1年半くらい前までの期間で、今はあまり熱量がなく、行けそうなライブがあれば行くくらいのそんな存在だった。だから本人の直筆メッセージを見ても「そっか〜卒業か〜」としか思わなかった。それで収まる感情だと思っていた。


アイドルオタクをしていると「推しは推せるうちに推せ」という言葉をよく聞く。私はその言葉が好きではない。いや、昔はその通りだと思っていたこともあった気もするが、今はそうは思わない。

だってそんな最もらしいことを言われる前に、好きだったら、会いに行きたかったら、自然と現場に足が向かうはずだから。

器用に数現場を同じモチベーションで推すことができる人もいると思うが、私は1人にしか集中できないオタクだ。今いちばん好きなアイドル以外は「タイミングが合えば見に行ってもいい」くらいの感情にしかならない。だから、積極的に行ける現場を探してない時点で、今は彼女に好きのベクトルが向いていなかったんだろうと思う。その程度の「好き」だったんだと思う。




それでも、やっぱりそれだけで収まるわけないじゃん。寂しいというか、悲しいというか、表現しきれない感情が今もまだ消化しきれず残ってる。

アイドルオタクをしていると、過去の思い出が今の自分を支えているという部分がたくさん出てくるから。

社会人1年目の、不安で仕方ない毎日を過ごしている時にライブに行ってたくさんの元気をもらったこと。アイドルフェスで別の推しのタオルを首にかけたままチェキを撮りに行ったら怒られたこと。直接名乗ったことのない名前をちゃんと覚えてくれていたこと。初めて行った会場からバスタ新宿までの電車の乗り方を教えてもらったこと(笑)


これからもたまにライブに行くたびに、思い出すとちょっと笑顔になれるエピソードが増えるんだろうなと思っていた。続きがなくなってしまうことは、なんて言ったらいいかわからないけど、”怖い”


小〜中学生の頃に好きだった小説の新刊がいくら待っても出ないと思って調べてみたら作者が亡くなっていた、あの時の感情に近いのかもしれない。彼女のアイドルとしての物語は卒業の瞬間に終わって、もう2度と更新されない。新しい姿を見ることはできないし、あのグループのライブに行っても私の好きなあのパートを歌う姿を見ることができない。2度と「久しぶり〜」なんて言ってもらうことができない。


彼女のアイドルとしてのストーリが終わった後の私自身の感情を今想像することができないこと、それが一番怖い。

それでも、好きだと本人に伝えられるうちに好きだと、ありがとうと、最後に伝えなければ納得ができない。




推し活」という言葉の流行によりアイドルオタクが市民権を得つつあるこの時代。少しでも好きなアイドルをすぐに「推し」と呼べるようになってしまったが、私はちゃんと「好き」なアイドルしか「推し」と呼びたくはない。

ちゃんと「好き」でいることは難しい。オタクをする上で、あまり好きのベクトルが向かなくなったアイドルを惰性で推すことほどしんどいことはないと思う。それでも「その子を好きだった自分」を否定したくないから、結局完全に離れることができずにいるということが多々ある。

だからやっぱり好きなアイドルを好きでいられるということ幸せなことだと思う。全てのタイミングが合わないと好きでい続けられないから。



私は、私のために、私が幸せでいるためにアイドルオタクをしている。
アイドルではなくなってしまう彼女にお別れを言いに行くことも、今一番好きなあの子に会いに行くためにたくさんCDを買うことも、これから武道館に立つ大好きだった子の晴れ舞台を見に行くことも、全て自分のためだ。

好きな子がアイドルでいてくれる間は「好きでいられる」権利があるから、これからも私は私が後悔をしないようにその姿を見続けたいと思う。

そして、多分私はアイドルを好きでいることを辞めることができないんだろうと思う。好きなアイドルがステージで歌って踊る姿が大好きすぎるから。欲を言えば、私がステージで歌って踊る姿を見ることを幸せに感じるように、好きなアイドルにはステージで歌って踊ることを幸せに感じていて欲しい。でもそれは私のエゴに過ぎないから、私の見えないところに行ってしまう前にあなたが好きだと伝えることをやめないでいようと思う。


何度でも愛を叫んでいけるなら、それだけでも私は幸せでいられるはずだから。

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