ペルソナ
最近ふと思うことがある。
「どれが本当の私なのだろう?」
家族の前の私。
友達の前の私。
恋人の前の私。
先生の前の私。
バイト先での私。
一人ぼっちの私。
ここに記した以外にも、たくさんの「私」がいるだろう。
どの「私」にも他の「私」との互換性はない。
だとしたらどれが本当の私?
どっかの偉い人ならこの答えが分かるのかもしれない。
まるで数学の問題を解いたかのように、論理立てた解説までつけてくれるかもしれない。
ただ、私の知り合いにそんな人がいるわけがない。仕方なく自問自答を繰り返す。いや、答えが出ていないんだから自問か。
いつ考えても、結論なんて出ないまま考えることを放棄する。
でも、ある日また「私」について考えを巡らせていると、ふと映画のタイトルが脳裏をよぎった。
『仮面病棟』
それから私は一つの考えに至る。
本当の私はのっぺらぼうなんじゃないか。行く先々で、手元にある仮面の中から適当なものをつけているだけなんじゃないか。
だとすると、どの「私」についても説明がつく。
結論が出たことが嬉しかったのと同時に、少しだけ自分が怖くなった。こんな考えに行きついたから怖くなったわけではない。私ですら見たことのなかった「私」を覗き込んでしまった気がして怖かったのだ。
「私」を知るのが怖い。そう思ったのは人生で初めてだ。
私はそれ以上考えるのをやめた。
このエッセイももうおしまい。
私はフリックする手を止め、そっと仮面を外した。
p.s. こういった考えを心理学用語で「ペルソナ」と言い、ユングという人が始まりらしいです。