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3分で読めるホラー小説【ただならぬもの】第一章:迷いの廃墟

 暗い夜道を照らすのは、薄暗い月明かりだけだった。男女4人組、カズキ、ユウタ、ミカ、そしてサエコは、山奥の廃墟へと引き寄せられるように足を踏み入れていた。


「大丈夫か、サエコ?」カズキが不安げに後ろを振り返り、震えるサエコに声をかける。


「……うん、大丈夫」と、サエコは小さく返事をしたものの、顔色は青白く、目がキョロキョロと周囲を探っていた。


「ここ、マジでヤバくね?こんな場所に来るんじゃなかった……」ユウタがスマホのライトをかざし、廃墟の錆びついた鉄扉に目を向ける。風の音が低くうなり、まるでこの場所自体が生き物のように唸っているかのようだった。


「噂ではこの廃墟、20年前に大きな火事があって、多くの人が亡くなったって聞いたんだよ」とミカが囁く。彼女の声はかすかに震えていた。


 カズキが思い切って鉄扉を開けると、錆びた音があたりに響き渡った。中はひんやりと冷たく、何かの気配が肌を撫でるようだった。四人は互いに手を取り合い、慎重に足を進めていく。


 廊下を進むと、古い病院のような造りの部屋が幾つも並んでいることに気づいた。壁はすすで黒く、床には割れたガラスや古びた器具が散らばっている。


「みんな、気をつけて!」ユウタが声を上げた瞬間、廊下の奥から、かすかな足音が聞こえてきた。全員の顔が引きつる。


「誰か……いるの?」サエコが息を呑むようにして尋ねたが、返事はない。むしろ、その静寂が四人の恐怖を掻き立てた。


 カズキが恐る恐るその足音の方へ歩み寄ろうとしたとき、突如、廊下の奥に人影が現れた。それは、一見人間のようだが、顔が朧気に見え、目の周りが異様に黒ずんでいた。


「逃げろ!」誰かが叫んだかと思うと、全員が一斉に来た道を戻ろうと走り出した。しかし、鉄扉はいつの間にか閉ざされ、出入口を塞いでいた。扉を開けようとしても、びくともしない。


「このままじゃ、ここから出られない……」

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