3分で読めるホラー小説【陰の訪問者】
秋の冷たい風が公園の木々をざわつかせていた。夕暮れ時、僕と友人の翔太は、いつものように学校の帰り道を並んで歩いていた。何度も通った道なのに、今日は妙に薄暗く感じる。翔太がふと立ち止まると、僕はつい肩をぶつけてしまった。
「どうしたんだよ、急に止まるなって」と、軽く笑って肩を叩く。しかし、翔太の顔は笑っていない。彼の視線は、じっと自分の影を見つめていた。
「影……」と、翔太が囁くように口にする。
僕も彼の視線を追って、自分の影を確認した。しかし、普通の影だ。ただの人の形だ。
「影がどうしたって?」僕は軽く流そうとしたが、翔太の表情に引っかかるものを感じた。彼は顔を真っ青にして、足がすくんだように動けないでいる。
「俺の……影……おかしいんだよ」その言葉に寒気が走る。
じっと彼の影を見つめた瞬間、心臓が一瞬止まるような感覚が襲ってきた。翔太の影の中に、もう一つの影があった。人の形をした何かが、彼の影に寄り添うように潜んでいたのだ。
「それ……いつから?」と、震える声で問いかけると、翔太は視線を反らし、肩をすくめた。「最近ずっとだ。でも、今日は……動いてるんだ」
僕は冷や汗をかきながら、翔太の影を凝視した。すると、影の中のもう一つの存在が、ゆっくりと動き出したのだ。まるで、僕たちに気づいたかのように。
「逃げよう!」僕はパニックになり、翔太の腕を引っ張って走り出した。しかし、走っても走っても、翔太の影はその存在を引きずったままだった。影の中の何かが、少しずつその形をはっきりとさせてきている。
家に着くまでの道のりが、これほどまでに長く感じたことはなかった。ドアを開け放つと、僕は中へ翔太を押し込み、急いでドアを閉めた。しかし、息を切らして振り返ると、そこには驚愕の光景があった。
家の中の灯りの下で見た翔太の影には、はっきりとした女性の形をした影が寄り添っていた。その顔が、じっと僕を見つめていたのだ。
「どうして逃げるの?」と、影が囁いたように聞こえた瞬間、視界が暗転した。
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