3分で読めるホラー小説【ただならぬもの】第四章:絶望の階段
四人は恐怖に追い立てられるように廃墟の奥深くへと進んでいった。だが、廊下をいくら進んでも出口の気配はない。焦りと絶望が彼らの心を蝕み始めていた。
「これじゃまるで……迷路みたいだ……」ユウタが疲れた表情で呟く。
「ここ、もしかして……出口が存在しないんじゃないの?」サエコが不安げに言うと、ミカがすぐに否定した。「そんなはずない! どこかに出られる場所があるはずよ……」
だが、希望の薄さを感じ始めた皆の表情はどこか陰りを帯びている。彼らは見えない何かに少しずつ、取り込まれているかのようだった。
そのとき、奥の部屋の扉がわずかに開いているのが目に入った。カズキがゆっくりとその扉に手をかけ、中を覗き込むと、古びた螺旋階段が下へと続いていることに気づいた。
「この階段の先に……出口があるかもしれない」カズキが言うと、全員が黙ってうなずき、ゆっくりと階段を下り始めた。階段は異様なほど狭く、薄暗い明かりがかすかに床を照らしているだけだった。
一段一段下りるごとに、彼らの耳にはかすかな囁き声が聞こえ始めた。声は次第に大きくなり、まるで彼らの周りを取り囲むかのように響き渡った。
「おい……なんか変な感じがしないか?」ユウタが恐る恐る言うと、ミカが不安げにうなずいた。「声が……増えてるような気がする……」
「何か……いるのかもしれない」カズキが足を止め、辺りを見回すと、突然、背後でサエコの悲鳴が上がった。振り返ると、サエコが何か見えない力に引っ張られるようにして階段の下へと引きずられていく。
「サエコ!」カズキが必死に手を伸ばしたが、サエコの姿は闇に飲み込まれるようにして消えてしまった。
「待ってくれ……サエコ!」ユウタとミカも叫びながら駆け下りようとするが、彼らの足元に無数の影が絡みつき、動きを封じるかのように締め付けてくる。四人のうちサエコだけが何かに飲み込まれるようにして消えていったことを理解し、残された三人の心に恐怖が張り付いた。
「サエコを……助けなきゃ……」カズキが震える声で呟くが、その言葉にはもう希望が感じられなかった。
「ここから……絶対に出られないのかも……」ミカが泣き崩れるように言うと、ユウタが彼女を抱きしめ、なんとか彼女を支えようとした。
「でも、俺たちはここで終わらない……サエコを、取り戻して、必ず出口を見つけるんだ」カズキは残されたわずかな勇気を振り絞り、再び階段を下り始めた。だが、その先に何が待ち受けているのか、彼にはもう予想もできなかった。
三人は、出口があることを信じて暗い廊下を再び進み始める。しかし、次第に廊下の両脇に人影が浮かび上がり、何者かが彼らをじっと見つめているような気配を感じ始める。階段の先に待つのは、希望か、それともさらなる絶望か……。