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これが恋なのか、なんなのか分からない。
君が他の女の子と話していても何も思わないのに、あの子と一緒だったって聞いた時、私?泣きそうだった。
気がついたら、君がくれた、ファイブオーオーエムエルの緑茶ハイをイッキに飲んでいた。
執着?嫉妬?不安?
何が私をこうさせているのか分からない。重力に従うしかなくて、ただただ悔しくて、地面を思いっきり蹴って立った。
好きだと、君が言う。
ありがとう。と私は言う。
これ以上にもこれ以下にも、どうにもならないでいい。
不毛な言い争いと好き嫌い、右か左かそんなどうでもいい話だっていい。今日はまだ決めたくない、明日も明後日も。ずっと、面倒くさいままでいい。
好きだと言ってくれて君に、私の思う言葉を素直に返すことができない。
私も好きです。その言葉が妙に嘘くさくて、お前ほんと?と共産主義の私が問いかけてくる。
口の中のアルコールが非常に不快で、私は頭がグラりとすることに気がついた。酔っ払っている。気持ちが悪い、後味が最低。
「重力の正しい単位はニュートンです」
私が生み出した高校教師が酔った私の頭の中で叫び続ける。重力加速度分、物体の受ける力の大きさは大きくなる。もう私は、このまま横になってしまいたかった。
りぶまの上から飛ぶって言ったら、君はきっと優しいから助けてくれる。加速しようとしている私を未然に防いで、抱きしめて、僕が一生そばにいるからって死なないでって、きっと言ってくれる。
だからずっと怒ったり拗ねたりしていた。
まだ、君のことが好きなのか分からない。
そういえば、ひどい事をされた。
嘘もつかれた。とっても汚くて、小さな部屋。汚い君と私。それと、ヘラヘラする私。私って倫理観がないのかなあと、時々思ってしまう。酷いことされても、それが自分のことなのかよくわからない。結構どうにかなってしまうからな。
それでも寝る前には必ず思い出してしまう。君が私にくれた一つ一つの言葉たち。
目を瞑るとその一つが星みたいに輝いて、道を作ってくれる。このドアを叩いても楽しいよと教えてくれる。そのどれもが綺麗で、笑ってしまう。もう何時間もこうしていたい。睡眠なんてどうでもいい。
君のまつ毛がどうだったか思い出せない。何だか長くて綺麗だった気がする。
何度も触れて確認したのに、もう表情も思い出せない。
声、声だけは覚えてられる。耳、私には自信がある。
好きなんだよ、と言ってくれた君の、その声を私は覚えていられる。