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コンセプチュアルな映画

2017年の映画の話、気づいたら年も明けてたしもういいや〜〜って思ってたけど、気まぐれで観た年内最後の一本が思いがけずツボで、これは!!!とワナワナしたので、これだけ書く。

「淵に立つ」という邦画なんですが。
私は、ミニシアター〜小寄りの中規模映画館でやっていそうな(と私が思っている)邦画が苦手です。何かは感じるけど理解できないって思っちゃう。でもたまにそういう邦画を観たくなって、今作も気まぐれ鑑賞だったのですが、コンセプトをビシビシ感じる演出にめちゃくちゃハマった〜〜。
簡単にあらすじ→小さな工場を営む主人公家族の元に、古い知人の男(浅野忠信)が訪ねてくる。男は少しの間工場で働くことになるが、ある日、残酷な爪痕を残し姿を消してしまう。8年後、皮肉な巡り合わせで再び男の存在が浮かび上がる時、主人公夫婦は自らの心の闇と対峙する……みたいな感じ。※以下、ネタバレは無いです。


まず衣装の考え方が!!浅野忠信の普段着のワイシャツも工場で働くときの作業服も、そんなわけないでしょってくらい真っ白でシワも無くて。それは現実的なスタイリングというよりは「つくられた男の性質」を表現していると思うんだけど。男が姿を消す直前「整えられた白い服」をゆっくり脱いで見えた中の色は……。めちゃくちゃゾクゾクしたっっっっ。ここの考え方がロジカルというかグラフィカルで……。そして浅野忠信よ。悔しいほどキマる。一番上のボタンまできっちり締めているのに、どうしてあんなに性的なんだろう!

男が刑務所に入っていた事を主人公の妻に告白するシーンがまた!ここだけ完全に語りが文語体になるんですよね、不自然なくらいに。それは男が刑務所の中で繰り返し繰り返し言わされ、聞かされ、書かされた文章で、もうスラスラと出てきちゃうんだよ、ただ一連の塊として。その機械的な心の無さと、整えられた実直さのバランスが、怖い。この表現の仕方がすごく舞台的で〜〜〜!興奮!!「クリーピー〜偽りの隣人〜」で、オープンエリアのライティングが変わって急に現実から隔離された世界になるシーンを思い出したりしてました。カッコイイ。

写真の構図を使ったテーマの繰り返し表現とかさぁ!すご〜〜〜く意地悪!8年後、男の代わりにそこにいるのは……。実際に何が起きたのか、映画の中では描かれません。男は悪いことなんかしていないのかもしれない。だけど男が川辺で放った言葉が、観客の心理的な伏線になっているというか……。


ドラマ自体の魅力の中にグラフィカルなコンセプト表現がビシッ!ビシッ!っと配置されてて、地味なんだけど鮮やか!このタイプの邦画で自分なりに理解ポイントがあってグサグサ刺さってワナワナできた事がすごく嬉しかったです。男に対する夫婦それぞれの「罪の意識」みたいな感情も忘れがたく、その表現に妻の信仰が使われていたりするのも!まだ観ていない人には是非観てみてほしい、大切な一作になりました〜〜。とても良い映画納めだった!

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