優しい花屋さん #5
女性が去った数時間後、
花屋の前を汗だくの若い男性が通った。
ただ通るだけであれば
印象にも残らなかっただろう。
しかしその男性は花屋を前にして
こちらをキツく睨み走り去って行ったのだ。
僕は訳も分からず、
女性の事と男性の事でモヤモヤさせながら
その日の店じまいを始めた。
目を見れないほどの顔をしていた女性。
こちらをキツく睨む男性。
「たまにある不運な日だったのだろう。」
そう思いながら店じまいを済ませ、
花屋の奥の自室へ入る。
なんでもないバラエティーを流しながら
今日の事を忘れようと
冷蔵庫にいる
銀ラベルのビールに手を伸ばす。
ソファの前に置いてあるテーブルには
既に酒のツマミが用意されている。
そのソファに腰をかけ
ビールの栓を開ける。
ゆっくりと一口、二口と
ツマミに手を伸ばしながら一缶を空ける。
疲れのせいか、
一缶空けた頃にはほろ酔い状態だったらしい。
気づいた頃にはテーブルに伏せ
眠りに就いていた。
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