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岡村隆史さん不適切発言に対する、不適切な記事と論調について

初めまして。私は今回問題になった番組「岡村隆史のオールナイトニッポン」またそれ以前の「ナインティナインのオールナイトニッポン」時代からのヘビーリスナーです。出来れば岡村さんを応援したい、という立場です。ただ今回の問題については一歩引いて出来るだけ俯瞰的に見ようと思っています。その上で問題がある元記事と、捻じ曲がった論調が溢れているので、私の意見を書きました。

岡村隆史さんの発言は不適切だと思う。しっかり謝罪して反省すべき。
ただその上で藤田孝典氏の元記事については幾つかの見過ごせない問題点があった。そしてその後さらに炎上している特に石川優実氏や山本和奈氏、Voice Up Japan、上野千鶴子氏、勝部元気氏、伊藤和子氏、望月衣塑子氏などのフェミニストと呼ばれる方々やその周辺の方々を中心として騒がれている行動・発言は「女性差別問題」を盾に行き過ぎた論調を煽っている。

藤田孝典氏の記事について

最近、藤田孝典氏への批判が増えてきた。「貧困ビジネスをしてきた」「過去にこんな失言をした」といった意見だ。ただ、私は正直この点についてはどうでもいい。事実確認が分からないし、調べるのも面倒だし、過去に間違った事をした人が今も間違っているとは限らないからだ。

炎上の発端となった藤田孝典氏の記事を読んで、確かに岡村氏の発言は不適切だったし、それに謝罪を求める内容については反対しない。
ただこの元記事について、問題点が幾つかある。そして特に重大な問題なのは以下の2点だ。

・実際には言っていない発言を題名にしてショッキングな印象を作り、読者の嫌悪感を煽ったこと。

事の発端は岡村隆史のオールナイトニッポン内の『WET STREAM』(『最近あった性にまつわる嫌な出来事』のハガキを送ってもらうコーナー)だ。昨今のコロナ事情で性風俗に行きたくても行けないリスナーからの悩みに答える形で、岡村さんはこう回答した(出来るだけ省略無く、忠実に書き起こしました)

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本当は元のラジオ音源を聴いて欲しいが、聴けない方は活字で確認して欲しい。実際音源を聴くともっと柔らかい印象になるだろう。そして恐らく岡村さんはコロナで自粛中のリスナーを勇気付ける為に、ちょっとしたボケを交えた感覚で回答されたのだと思う。風俗嬢をリスペクトしている人を『風俗野郎Aチーム』と呼んで、散々ネタにして来た経緯をヘビーリスナーなら知っている。

それでも今回の発言は差別的で問題がある内容ではあったのだが。

そして今回岡村氏を炎上させた元記事の題名はこうだ。
『岡村「お金を稼がないと苦しい女性が風俗にくることは楽しみ」異常な発言で撤回すべき』

「楽しみ」をはじめ、実際にラジオでは言っていない言葉を『岡村「〜」』と、あえてカギカッコを付けてあたかも本人が言ったように悪質に改変し、記事の見出しにしてショッキングに読者の嫌悪感を煽ったのだ。

私はラジオを聴くまでそのような発言をしたと思ったし、その見出しを見た人々の中には実際の音源を聴かず、記事を流して読む人もいるだろう。実際、藤田氏の偏った表現によってネット上では未だに「岡村が貧困女性が風俗に来るのが楽しみ、と言った事は許せない!」という意見が散見される。

こんな悪質な報道の仕方が果たして許されるのだろうか?

藤田氏は後にその事(岡村氏が実際「楽しみ」などという言葉は使っていない事実)を指摘をされると、『主旨は「コロナ収束後、生活困窮した女性が3ヶ月くらい風俗で働くことになるから、それを楽しみにお金を貯めましょう」ということだから』と弁明した。

つまり、だいたいの主旨が合っていれば本人が言っていない言葉を本人が言った様に見せても問題無い…という事なのだろうか?

しかしこんな誇大表現が許されるなら、彼はメディアの発言者として責任感が無さ過ぎる。
藤田氏は元記事で岡村氏を「力ある大人」として汚い言葉を羅列して叩きのめしていたが、彼は力あるメディア(Yahoo!ニュース)に架空の発言を見出しにした記事を投稿してわざと炎上を起こした。その結果PVを稼ぎ、原稿料に加え広告収入を稼いでいる力ある大人の一人だ。

こんな事実を捻じ曲げての扇動がOKなら、彼が言う「最悪レベルの下劣な」記事と言えるのではないか。

・藤田孝典氏自身が性産業に対して差別的な考え方に思えたこと。

彼はこの件についても指摘されたようだが、『私の主張は一貫して、性産業従事者個人ではなく、岡村を含めた社会構造、権力構造への批判だということ』と弁明している。

しかし元記事では性産業そのものについて「性の商品化」「女性の性的搾取」という表現を使い、「性産業=悪」と思えるような表現をしている。

そもそも彼は性風俗の存在自体を認めていないのではないだろうか?

そして記事で、岡村氏は「力ある大人たち」なのだから「利用ではなく支援しろ」と述べている。
岡村氏は性産業の顧客だ。顧客として利用する事が否定されるのだろうか?
お金があろうが無かろうが、権力があろうが無かろうが、貧困者を支援をする・しないも性産業を利用する・しないも当人の自由であり強制される義務など無い。そして性産業の顧客が少なくなれば、労働者である彼女達はより酷い労働環境になってしまう事を無視してはならない。「貧困が無くなること」は理想ではあるが、性産業の利用を否定する事がその理想には全く繋がらない。

(2020年5月14日 追記)ずっと性風俗産業そのものへの考え方を濁してきた藤田氏だったが、5月11日に大竹まこと ゴールデンラジオ!出演時の性風俗への否定的発言を記事化された事で、5月12日に堰を切ったように性風俗産業そのものへの否定的な考え方をツイートを連投した。

「世界屈指の巨大な性産業を全国各地に作り上げ、女性の貧困、子どもの貧困を利用し、ひたすら醜悪な姿を隠し続け、コロナ禍でその蓋が外れると慌て始める。もうこれを機会にポストコロナを見据えましょう。覚悟を決めましょう。もう日常には戻れないし、戻さない」

「寂しい男性は風俗を利用するしかない、居場所を奪うな、とか何の冗談か意味不明。他者とコミュニケーションを図る「包括的性教育」を実施したらいい。そんなにコミュニケーションに難があることが問題なら、性交渉できる技法を義務教育で学ばせたら?性搾取をどうやっても擁護したい論調に辟易。」

「貨幣を媒介させても、性搾取、性暴力にあえば、人は心身に大きなダメージや自殺のリスクを抱える。それをケアするサポートも重要になるが、そもそもこれほど巨大な性産業に依存せずとも、人々が暮らせる社会を構築することは可能。せめてもう少しまともな社会にしようぜ。」

「セックスワーク容認派が跋扈する社会だから、当事者や元当事者が声を上げられにくい。自己承認している当事者の大きな声は響くが、自己否定する当事者の声は影に隠れる。私たちは何を言われようが、小さな声、消えそうな声を丁寧に拾い上げたい。」

やはり彼は性風俗産業の存在自体に否定的だった。酔って連続ツイートしているのかは知らないが、とにかく性風俗への偏見のオンパレードでツッコミどころしかないので呆れてしまった。これだけ性風俗に否定的な彼が風俗嬢の気持ちを勝手に汲み取って書いたのが、岡村さんを罵倒した元記事という事になる。(2020年5月14日 追記終わり)

要友紀子さん(セックスワーカーの健康と安全のために活動するグループSWASH代表)の記事はセックスワーカー達が藤田氏の記事のせいで傷ついている現状を書かれていて、セックスワーカーの立場からの視点がとても興味深い。

Voice Up Japanが立ち上げた『NHKチコちゃんに叱られる降板謝罪を求める署名』について

これは岡村さんに対する必要以上の制裁だ。
やり過ぎだと指摘すると「被害者なのになぜ叩かれなければいけないのか」という意見もあるが、例え被害者であってもそこに否があるのであれば指摘する事はなんらおかしい事ではない。
(ネット上ではただフェミニストを叩きたい連中もいるが、それについては全く同意しない)
また私は石川優実氏の過去の失言など本当にどうでもいい。
今起こっている事について、捻れておかしな形で進行している問題について、おかしいのだからそれはおかしいよと言いたい。

これは岡村さんが不適切発言をした事への相応な対応ではない。
これまで差別されてきた考え方、社会への怒りを岡村さんの今回の発言と重ね、必要以上に叩いている事が問題なのだ。

「謝罪をすれば終わりじゃない」「本当に謝罪の意思があるのか疑問」「半年後には笑い話にしてる」「落着ではなく始まりだ」
全部分かる。分かるけど、それは岡村氏と本当に関係があるのか?
ずっと見過ごされてきた女性差別と日本社会の問題点、無くならない貧困問題と富裕層が貧困層を搾取し続ける社会構造。声を上げる女性達それぞれが感じたこれまでの差別的経験。
それと岡村さんへの制裁を同列に進め過ぎている。
今、矛先を向けるべきなのは岡村さんではないし、ただ「利用したいだけ」ならそれは岡村さんへの立派な人権侵害だ。

最後に

誰だって失敗はある。
「謝罪したんだからもう許せよ」では無く、冷静に今後も見ていけばいいじゃないか。番組を見ない選択肢もある。
岡村氏の発言に差別を感じて傷ついた女性達が、岡村氏に必要以上の社会的制裁を与える権利が果たしてどこまであるのだろうか。

ただ今回の件で改めて女性差別やフェミニズムについて勉強する機会にもなったし、特に戸田真琴さんの記事はとても考えさせられた。

岡村さんの今後の行動、岡村さんへのメディアの報道の仕方、そして不当な扱いについて、岡村さんの1ファンとして、今後も注目していきたい。


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