苗場歴15年が選ぶ個人的フジロックベストアクト
フジロックとは「自分との戦い」である
先日Newjeansのライブの話こそしましたけど、当ブログはあまりにも競馬づいてて何なので、たまには音楽の話をしっかりと。今日はいよいよ開催が迫ってきたフジロックについて。
フジロックには2008年から(開催中止になった2020年を除いて)1年も欠かさず3日通しで行っているんで、世の中的には生粋の「フジロッカー」になるかと思いますが(それを自分で言うようになったら終わりですが)、
他の人たちのようにキャンプエリア泊まってBBQやったり、お目当てのアーティストのために地蔵したり、好きなアーティスト以外の時間はのんびりみたいな過ごし方、個人的にはマジで理解できなくてですね(笑)。
毎年高いチケ代(今年に至ってはとうとう3日通し券5万円コース!)払って3日間非日常空間に身を投じに行っているというのに、そこで「何もしない」を楽しむ余裕なんてないっしょ!というのが僕のスタンス。
要するに僕は貧乏性なので、「金払った分元取らなきゃ」って意識が強いんですね。だから3日間狂ったようにライブを見続けているという。基本「見たいものは全部見る」勢い。
今年37歳になり、在宅ワーク中心の生活では日頃の運動不足も深刻で。体力は低下の一途なんですけど、どういうわけかフジロック期間中は元気ハツラツでして。
毎日朝10時から夜中の2〜3時頃まで、常にビールという名のガソリン(動力源)を片手に、ライブ見ながら適当に飯を食い、会場内をひたすらに走り回る3日間。
その結果、昨年自分の意志で立ち止まり10分以上ライブを見たアクトは52くらい。ここまで行くとキチ◯イですね(笑)。実際フルで見たのから2〜3曲しか見てないものまで、濃淡ありますし。
「どれだけ“伝説の瞬間”に立ち会ったか」の証明として
とは言え、そんだけ見てるとフジロックの歴史においてもエポックメイキングなライブに出会う機会もそれなりにあるわけでして。特にグリーンステージ中心で見てない分結構語られてないアクトも多いのではと。
そんなわけで、長い前置きになりましたが過去15回「苗場のフジロック」を体験してきた私の視点から、特に素晴らしかったライブをベストテン形式で紹介していこうというのが今回の意図です。
そうは言っても、仮に毎年45アクト見ていたとしたら、単純計算で675アクトも見ているわけで。改めて数字にすると自分でも引くわ(笑)。だもんで10本なんてとてもじゃないけど絞れないんですけど、
今回はひとまず「どれだけ心を揺さぶられたか」、そして「今でも鮮明にその日のライブを思い出せるか」という基準で10本厳選してみました。
Mark Stewart + The Mafia(2008年、ORANGE COURT)
まずは自分が初めて行った2008年フジロックから。この年大学4年だった僕は、就職も決まってないのに「もうこの先行けないかもしれないから」と無理をして、宿すら決めずにチケットだけ取って現地へ向かうというとんでもない暴挙に出た。
今考えたらそんなリスキーなこと考えられないけど、この年は3日目のトリがガンから復活した忌野清志郎だったり、「見に行かなければ」という思いが非常に強かったんですよね(清志郎は直前に転移が発覚し全夏フェスキャンセルになってしまったのだが)。
そんな中で自分に深く突き刺さったのはマーク・スチュワート。高校時代友人からポストパンクの洗礼を受けて以来、崇拝に近く愛聴してきたThe Pop Groupの最重要人物がこの年12年ぶりに新作を出し、しかも生で見れるとなれば、何を押しても行かなければと思っていたのだ。
で、結果的にこの年はおろか、670以上のアクトを見てきた中でも未だに5本の指に入るくらいのすごいライブだった。当時48歳ですっかり体の厚みも増してよくいる「イギリス人のおっちゃん」風の出で立ちでしたが、マイクを握った瞬間に一変するこのギラつき、切迫感に秒でKOされたよね。
PAにはエイドリアン・シャーウッドが陣取り、強烈なエフェクトとともに「ON-Uサウンドここにあり!」と思わずにはいられない鋭利なビートを展開。あまりの音像と御大の咆哮に、半ば呆然としながら見入っていた。
後年The Pop Groupが再結成し、サマソニや単独でも見れたけど、この時の強烈な体験にはまるで及ばなかった(単に演奏力の問題だったと言えなくもない)。それだけに、この時生で見たマーク・スチュワートのことは生涯忘れられないなと思う。
(↓奇跡的にテレビ放送されたの残ってたけどこの曲じゃない方が…)
Wilko Johnson(2009年、PALACE OF WONDER)
2009年は社会人1年目で、非常に体育会系な会社で営業職やってたんですけど、仕事もできないのに金曜休み取るわけにも行かず初日は定時まで仕事。急いで家帰って適当に飯を食い、新幹線に飛び乗り、現地に着いたのは23時頃。
その日は(結果的に解散直前だった)OASISがグリーンでライブやってたんですけど、ちょうど終わる頃だったのと雨がスゴかったので一足先にパレスに。お目当てはウィルコ・ジョンソン。この人に関しては、是が非でも今年の初っ端として見ておきたかったのです。
というのも、この年のフジロックの直前、僕たちが愛してやまなかったTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのアベフトシが急逝してしまったんですね。そんなアベが自身のスタイルを形作る上で大きな存在となった一人が、他ならぬウィルコだったわけです。
そんなわけでどうしても2009年のフジロックはこの人から始めたく、パレスの最前列を確保。ウィルコのマシンガンカッティングを目の前で浴び、存分にギターで撃たれまくりながら(笑)、往年のDr.Feelgoodの曲もふんだんに演奏してくれて最高だった。
2013年には、「ガンでもう長くない」と言って“最後の来日”を謳いフジに来たものの、セカンドオピニオンで治療がうまく行って再度2015年にも参戦するという嬉しい「死ぬ死ぬ詐欺」をしてくれたことも。結局2年前に亡くなってしまいましたが、この年は本当に格別な時間だった。
そしてこの話は、今は亡きチバユウスケが翌朝グリーンの一発目で「今日のライブは…、俺たちの“大親友”だったアベフトシに捧げます」と語りライブを始めたところまでがワンセット。今思い出すと余計に泣ける…。
(↓は別の年の様子だけど要はこれを目の前でやられたという)
GOMA & THE JUNGLE RHYTHM SECTION(2011年、FIELD OF HEAVEN)
続いては2011年のGOMA & The Jungle Rhythm Section。この年は東日本大震災が発生した影響で、放射能汚染を心配したと思われる海外アーティストが何組かキャンセルになっていて。
(余談だけど、Atari Teenage Riotのアレック・エンパイアは、この年のライブ中「こんな時に日本に行くのかって周りから言われたけど、こんな時だから行くに決まってんだろ!」的なことを言ってたそうで、「この人は本当に信頼できるな」と思ったのもいい思い出)
で、そんな大変だったこの年はいいライブがメチャクチャ多くて。さすがに1年に固まりすぎるのも何なので2つまで絞りましたが、それでもぶっちぎりで個人的ベストアクトとなったのが、GOMAさんの本格的な「復帰戦」となったヘブンでのライブ。
ご存知の方も多いと思いますが、GOMAさんは2009年に首都高で後ろから車に追突されて高次脳機能障害を発症。当初は直近10年くらいの記憶が無くなり、自身が吹いていたディジュリドゥを楽器として認識すらできていなかったという状態だったそう。
そんな中でも、吹き方を体が覚えていて、「脳の記憶」としては蓄積が難しくても「体の記憶」として残していくことは可能だという気づきを得た結果、ついにこの年ステージに復帰したわけです。で、この日の約45分のライブは間違いなく伝説だった。
そもそもJRSとの演奏はディジュリドゥの低音とドラム、パーカッションのみというトライバルなものなわけですが、かつての何ら遜色ないパフォーマンスどころか、ちょっと神がかり的なグルーヴで。ラストの“ONE GROOVE”の頃には、みんな泣きながら踊ってるような感じだった。
そうそう、このライブ中に雨がどんどん小雨になっていって、雲の切れ間から太陽まで顔を出すという展開もあったんですよね。本当に祝祭感に彩られた感動的なステージだった。
Wilco(2011年、WHITE STAGE)
そんなGOMAさんと双璧をなすくらい、個人的に強烈なインパクトだったのはWilco。さっきのウィルコ・ジョンソンじゃなくてアメリカのバンドの方ですね(笑)。その後も2016年のフジや今年の単独も見たけど、やっぱり最初に見た時の衝撃はデカかった。
多分この頃は『Yankee Hotel Foxtrot』を聴いたことあるくらいで、しかもこの日はYMOからNEW MASTER SOUNDS(バディ・ガイの代役だった)を見てホクホクな感じだったから、「時間帯的にちょうど良いや」くらいな軽い気持ちで見てたはずで。だからこそスゴすぎて食らったよね。
前半はフォーキーというか所謂「アメリカーナ」的なサウンドと、時折ロック感が光る演奏を「ええなあ」と思って堪能してたわけなんですけど、中盤突如として飛び出したアレには何が起こったのかわからず、もう呆然としてしまった。
ここまで言えば何のことかお分かりかと思いますが(笑)、衝撃だったのは他でもない“Via Chicago”。メロウでゆったりした曲が続いているなと思ってたら、突然ギターやドラムが猛然と暴れ出し、収集がつかないしっちゃかめっちゃかな状態に。
かと思えば演奏がスッと元通りになり、再び暴れ出し…と絶妙な緩急で魅せていくこのパフォーマンスには完全にヤラれた。そもそも彼らの高い演奏力があるからこそ成せる技なんで、曲そのものも非常に素晴らしい。
しかもその直後にやったのが確か“Impossible Germany”なんだからもう…。あの執拗なアウトロでギター3人(特にネルズ・クライン)が見せる展開を目の当たりにして、好きにならないわけないじゃん!という。こういう意外と触れるタイミングがなかったバンドとの出会いも大切。
Seun Kuti & The Egypt 80(2012年、GREEN STAGE)
続いて2012年のシェウン・クティ。あのフェラ・クティの最後の息子で、(思想は置いといて)音楽面では父の正統後継者的な存在だったこの人。フジ行きだす頃から存在は知っていたけど、やはりフジロックで見る彼らのライブは格別だった。
フジロック最大の魅力は何かと言われると、自力では出会う機会がないような非US&UKの音楽、所謂ワールドミュージック系のアクトにたくさん触れられることで。アフリカや南米、インド、東欧など、あらゆる地域からやって来る「新たな音楽」に心を揺さぶられたこと数しれず。
中でもアフリカ系のトライバルなビートを基調としたものには弱いんですけど、彼らのような強靭なアフロビートで徹底的に踊らせてくれるのもまた格別。この2年前来た時にもちゃんと見てたんですけど、なぜ2012年のライブなのかと言えば、真っ昼間のグリーンで2時間ぶち抜きでやったから(笑)。
本来ヘッドライナーでも無ければ2時間やることなんてないし、炎天下での2時間は普通なら観客的にもしんどいとこだけど、このビートの前ではすべてが良い方に作用するというか(笑)。夜の涼しい中で聴くんじゃなしに、うだるような暑さの中で踊り狂ってこそこの音楽に向き合ったと言えよう。
実は最初、シェウンは観客の盛り上がりがイマイチと感じたっぽくて、「君たち起きてる?俺ら昨日別の国でライブやって今日着いたくらいなんだけど」的なこと言ってた記憶(笑)。そんな軽い喝もあってか、曲が進むごとにどんどんボルテージ上がっていったよね。
ちなみにこの時、持ち時間120分で演奏したのはわずか9曲。それだけ1曲が長いというのに、こんなに畳み掛けるホーンと煽情的なビートの前では体を揺らすことしかできないですよ。むしろ楽しすぎて長さなんて一度も感じなかった。
Dumpstaphunk(2012年、FIELD OF HEAVEN)
続いては同じく2012年に見たDumpstaphunk。Meters~Neville Brothersで知られるアーロン・ネヴィルやアート・ネヴィルの息子たちを中心とする新世代のニューオリンズファンクバンドなんですけど、コレも最高だったな~。
実は2009年、彼らの親世代であるFunky Metersのライブもヘブンで見ていたんですけど、その時は裏のオレンジがBooker Tでやや被りという信じられない状況。それ故あっちこっち行っておいしいとこ取りしてたからここに挙げるほどにはならず(むしろライブはBooker Tの方が思い入れある)。
私一応学生時代ベースかじってたこともあるんで、ニューオリンズ勢は出てきたら毎度注視してまして。他にもTrombone Shortyとか最高だったアクトはいくつもあるんですけど、それでも界隈で一番だったのはDumpstaphunkだと改めて言っておきたい。
まあ当然ミーターズ直系のファンクサウンドではあるものの、それよりももっとポップというか、フュージョンっぽさもあったりファンクを聴いて育ってきた世代だからこそのクロスオーバー感があるというか。いい意味でファンクに縛られていないんですね。
Funky Meters見た時も思ったけど、この界隈はいい意味で演奏がユルい部分もあって。その点彼らはとにかく演奏のキレがすごい。技術的に難しいことはそこまでやってないとも言えるけど、生で見ているとちょっとグルーヴが尋常じゃないんですよね。
そんなバンドの核となってたのは、間違いなくドラムのニッキー・グラスピーで。女性ドラマーとは思えない音の重さ・強さに加えて、タム回しなどのオカズで見せる手数の多さや切れ味の鋭さはもう圧巻。今年のミーターズトリビュート企画には参加しないのが残念。
Kendrick Lamar(2013年、WHITE STAGE)
続いては2013年のケンドリック・ラマー。2018年の台風級の暴風が吹き荒れる中で見た時も『DAMN』のモードを前面に打ち出したライブで非常に良かったんですけども、やはり初参戦だったこの年のパフォーマンスは非常に印象深く。
前年に『good kid, m.A.A.d city』が各方面から大絶賛され、日本でも一躍その名を知られることとなったタイミングだけに、まだ「HIP HOP界期待の新星」くらいのレベルだったわけなんですけど、単にリリックの革新性だけで評価された人じゃないことはすぐわかったッスよね。
この日はバンド編成(DJは含む)でのパフォーマンスだったんですけど、生音ならではの爆音と厚みでライブを守り立てていく。そしてケンドリックは観客を存分に煽り、右へ左で動き回りながらラップを叩きつけていく。
今となっては信じられない話なんだけど、この時は裏がビョークだったんで客入りが結構心もとなかったんですよ。そんな中でもケンドリックは観客とコール&レスポンスを決め、観客も熱い反応でケンドリックの本気を引き出していくいい雰囲気で。
どこかジャジーでアーバンなサウンドだったこの時期、クールな音像に対してシリアスになりすぎることなく、圧倒的なラップで集まったオーディエンスを大いに沸かせたケンドリック。その後の活躍は言わずもがなだけど、つくづくこのタイミングで見といて良かったなと思うライブ。
あと印象的だったのはケンドリックの服装で。この日は結構雨が降ってたものの、この時間帯は雨も止んでたんですね。にも関わらずケンドリックは、100均で買えるような安物の雨ガッパ着てパフォーマンスしていて。その姿が逆にクールでカッコよかったんですよね。それも今じゃありえない話か。
Kamasi Washington(2016年、FIELD OF HEAVEN)
お次は2016年のカマシ・ワシントン。これは本当に忘れられないライブで、個人的フジロック史においてベスト3には確実に入ってくる素晴らしいライブだった。裏がレッチリだったもんで見ている人は多くはなかったが、間違いなく伝説のライブだった。
前年に『The Epic』という3枚組の大作で大きな話題を集めたタイミングで、僕も音源は聴いてたんですごく期待はしてたんですけど、1曲目“Change of the Guard”を演奏した瞬間にもう度肝抜かれましたよね。とにかく全パート演奏が巧すぎて。
この日はカマシのサックスの他、トランペット、ピアノ、キーボード、ベース、ツインドラムにコーラス、途中からカマシの実父(リッキー・ワシントン)がサックスやらフルートで参加という陣容だったんだが、もう音の分厚さからして段違い。そこにこのバリテクなんだからもう…。
各パートの音がそれぞれ際立っているというのに、それが喧嘩することなく、かと言ってビチッと(抑圧的に)統率されているわけでもない、完璧なアンサンブルには震える。グルーヴという言葉だけで片付けてしまうにはもったいない凄まじい演奏。
カマシのいわゆるコルトレーン直系のサックスプレイもさることながら、一番ぶっ飛んだのはキーボード(ブランドン・コールマン)の速弾きで。でかいショルダーキーボードで随所にエフェクトを噛ましながら凄まじい勢いで速弾きを展開するその姿はちょっと呆然としながら眺めていたよね。
(サンダーキャットのお兄ちゃん、ロナルド・ブルーナーJr.とトニー・オースティンによる)長尺のドラムバトルも圧巻だったし、どこを取ってもすごすぎるパフォーマンスは衝撃。その後レッチリも見に行ったけどまるで集中できずカマシのライブのことばっか考えてしまったのはいい思い出。
小沢健二(2017年、WHITE STAGE)
2017年の小沢健二もすごいライブだった。その日はグリーンのトリ前がCorneliusで、ホワイトのトリ前が小沢健二という意味わからんスロットになっていて。復活直後の小沢健二がホワイトレベルのキャパで収まるわけないだろと、開催前からみんな言ってたんですよね。
そんなこともあって、Corneliusのライブは途中で切り上げて早めにホワイトまでたどり着いたものの、すでに黒山の人だかり。とりあえず人の間を縫ってなんとかPAテント脇くらいの位置は確保。もうちょっと遅かったら入場規制の憂き目に遭ってたかも。
そんなパンッパンに埋まったホワイトで、オザケンはもう想像を絶するようなヒットメドレーを展開。ド頭からスチャダラパーとともに“今夜はブギーバック”を披露(ほぼ“smooth rapの方”)。ホワイトのスクリーンには演者は一切映さず常に歌詞が表示される形。
スカパラホーンズを筆頭に往年のバンドメンバーが後ろを支える中(全員ボーダーシャツ着てるっていうのもフリッパーズ思い出して泣ける)、往年の名曲とその時点での未発表曲を容赦なく展開。オザケンに促されたのもあり、過去曲ではフロアが大カラオケ大会に。
異常なまでの多幸感がステージにあふれる中、「愛してるよ、ロック好きたち!」という伝説の名言も飛び出し、ボルテージはどんどん上がっていく。ハイライトはやっぱし“強い気持ち・強い愛”かな。終盤の“愛し愛されて生きるのさ”とかも個人的にはグッと来た。
この頃までは王子の帰還を皆が諸手を挙げて歓迎し、実際ライブも素晴らしかったのだけど、ここ最近の活動についてはちと思うところも。そういう意味でもこのタイミングで見れたことは本当に良かったし、後にも先にもないような最強のフェスセットは心に深く刻まれた。
THA BLUE HERB(2021年、WHITE STAGE)
さあそして、ラストは2021年のBLUE HERB。言わずもがなですけど、2020年は世界的なコロナの蔓延により開催中止に。翌2021年は国内アーティストのみでの開催にこぎつけるものの、直前に感染が急拡大しアーティストの感染もあり当日までキャンセルも相次ぐ状況。
世間的にも大きなバッシングに晒される中で、この年足を運んだ多くの人を勇気づけてくれたのがBOSS THE MC(ILL-BOSSTINO)の言葉でした。こういう世の中の状況でBOSSがどんなことを言うのかなんて軽い気持ちで行ったら、終わる頃には号泣でした(笑)。
同じ時間帯は注目のアクトが多くて観客は少なめだったけど、その状況を多分に意識しながら「MISIA?GEZAN?上等。俺らもここで奇跡を見ようぜ!」のパンチラインをぶつけてくる。ここで一気に気持ちを持ってかれた感あったな。
コロナ禍真っ只中にリリースされた“2020”もやり、その曲を終えた時に痛烈な政治への怒りをぶつけつつ、政治家に対して不要不急の名の下に活動を制限され、食い扶持を失っている音楽業界の人々に対する補償をカメラ越しに訴える姿はシビれた。
この時点で1年半続いていた理不尽な状況に対して、多くの人が今更誰に対してどう怒ればという思いを抱える中で、これ以上ないほど真っ当かつ真摯な訴えには本当にグッと来た。言葉のプロとして、ここで批判やディスで終わらせるのではなく心からの思いを打ち明けることのスゴさよ。
ラストは“バラッドを俺等に”。この映像は何度見てもあの日、あの時の気持ちが蘇ってきて泣けてしまう。あの時点では失われ、遠くになっていた尊い「日常」の光景に思いが募る中でのこのリリックはもう…。泣くなっていう方が無理でしたよ。
ちなみに、この曲をやる直前にBOSSが「もうちょい雨降ってた方が俺らはいい仕事する」的な話をしていたら、本当にその日一番くらいの雨脚になったのも“持ってる”というか、より楽曲とライブへの印象を際立たせてくれたなと。この地で「戦った」ことを労う神の采配だったのかもしれない(笑)。
そんな感じ。他にも挙げたいライブはいくらでも出てくるんですけど、いい意味で心に突き刺さったまま取れないトゲのような名パフォーマンス10選でした。今年も新たな伝説の瞬間にどれだけ立ち会えるか今から楽しみです。あとは仕事面が滞りなく進むことだけを願って…(笑)。
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