セミンくん物語第一章
《セミンくん物語第一章》
【第1話 土の中の街】
このお話はまだ人間がこの世に誕生するさらにずーっと前、気が遠くなる程前のお話しです。
この時代この星には海と大陸だけが広がり、その木々に囲まれた大陸の土の中にセミ達の幼虫が住む街がありました。この時代のセミ達はまだ自分が空を飛べるとか羽が生えるなどと言うことは全く知らずに、土の中で一生を終えておりました。
土の中の世界、それは真っ暗な世界、でもセミ達の目には地上から入る微かな光が大きく見えて、生活するには何も困らないのです。
そんなセミ達の世界を覗いていると、ある街の空き地に、どうやらセミ達の子供達が集まっている様です。
何やらコチラを見上げて言っている様ですね、、
何を言っているのかな?
第1話『セミンくんと親友ツンツクの話』
【○セミン △ツンツク】
△ お〜〜いセミン 何やってんだ?
○ ん? ツンツク‥ あのさ あの光って何処から来 てるのだろう‥
△何処から来てるか‥セミン‥変わってんな
そんなことよりもよ、あっちで今、ミミンズが居たらしいぞ、行ってみようぜ。皆んな集まってるぞ
○ ん‥う〜〜ん 何が光ってるんだろうな〜
△ セミン 置いてくぞ〜
○あ‥ 待ってくれよ〜 今行くよ〜
セミンくんは好奇心おおせいな、珍しいモノが大好きな子供‥ ツンツクはちょっとヤンチャだけども、根は優しいセミの子供でした。そしてこれから皆んなが集まっている所に居るミミンズと言うのは、まったくセミとは違う種族の身体がヌルヌルした蛇の様な土を食べる生き物、同じ土の中に居る生物ですが、セミ達とはなかなか会うことがなく、子供達はもっぱら捕まえたくて一生懸命です。
△ セミン、 セミンはこっちの穴を見張っててくれ、
俺は向こうの穴から音を出して、こっちに追いやるからな、見張っててくれよ
○ うん‥わかったよ〜 でも、出て来たらどうやって捕まえればいいんだ?
△ そん時は大きい声で俺を呼んでくれよ、頼むぞ
そう言ってツンツクは丘の向こう側に行って、石を叩いて大きな音を出しておりました。
そんな時です、セミンくんの目の前に‥小ちゃなミミンズが顔を出したのでした。
○ お前がミミンズか?‥どうした?なんか怯えてるのか、‥(小さなウ〜ン)そっちの穴から逃げな、黙っててやるから、さあ 行きな、
セミンくんは、何故かおとなしそうなセミンズの顔を見たら逃してしまったのでした。
△ セミン、 どうだ‥ 出てきたか〜?
出てくる訳がありません。セミンくんが逃してしまったからです。セミンくんは親友に一つ小ちゃな嘘をついてしまいました。それがずっとセミンくんが抱えて行く一つの秘密になります。
△ あ〜けっきょく見つからなかったな〜
いっかい捕まえてトッチメテやりたかったんだけどな〜
○ ツンツクなんでトッチメル必要があるんだ?
おとなしいんじゃないのか?ミミンズって言うのは
△ 違うぞ〜 セミン、 ミミンズはこの間バアチャン家大きな穴を開けて、バアチャン落っこちそうで危なかったんだからな〜 その仕返しをしてやりたいんだ
○ でも、オラのミン爺が言ってたぞ、ミミンズはおとなしくてお利口ないい奴だって、言ってたんだけどな〜
△ そんな事ないぞ、セミンとこのミン爺は、結構変わってるって皆んな噂してるぞ、それ嘘なんじゃないか、
セミンくんは、大好きなミン爺を嘘つき呼ばわりされて、言い返してやりたかったのですが、自分が小ちゃな嘘をついてしまったために、それは飲み込んで家に帰るのでした。。
第2話『ミン爺の話し』
【○ セミン ⬜︎ ミン爺】
○ ただいま〜 帰ったよ
⬜︎ ん?‥ セミンか ?
どうした? 元気ないな〜
○ そんな事ないよ元気だよ。
いつもは何でも話すセミンくんでしたが、今日ばかりはミン爺の顔を見て素直にお話しが出来ないのでした。
⬜︎ セミン、こっちにおいで‥ ホラ
○ な〜にミン爺?
⬜︎ セミンはいろんな所で珍しいモノを拾ってきては、あの大事なモノ箱にしまっているだろ、
○うん‥
⬜︎ 実はな〜その箱と同じ様なものが、セミンの気持ちの中にあるんじゃよ、だから大事なモノはしっかりとしまっておく、でも、大事ではないモノは、どんどん外に出して行かないとその分次の大事なモノが入らなくなってしまうんじゃよ。おんなじだろ?わかるかな?
○ うん‥わかるよミン爺が言ってる事、
⬜︎ そっか‥ 今日なにがあったか教えてくれるかな、この爺ちゃんに‥
○ うん‥
セミンくんは、今日あったミミンズの事、ツンツクが言っていたミン爺の事‥ 全て今日あった事を話したのでした、
⬜︎ ‥そうか‥セミン 良く聴きな‥ エラかったな。
そう一言いうと、ミン爺は遠くの光を眺めながら話を一つしてくれたのでした。
⬜︎ あれは〜 ワシがもっと若い頃の話しじゃが、一度だけ、ずうっと上の洞窟を探検している時の話しじゃ、そこにな〜弱ったミミンズが横たわっておったんじゃ、そのミミンズは、水が欲しい‥水が欲しい‥と、言ったもんで、ワシはそのミミンズに水を飲ましてやったんじゃ、何回か水をやった後、落ち着いたそのミミンズが御礼にと、もっと上の世界の話を教えてくれたんじゃ、。。
第3話『ミミンズの話し』
助けられたミミンズは、ゆっくり起き上がると、大きく息を吐いてその後話し始めてくれたのでした。
「はぁぁぁ〜」助かった〜 帰って来れてよかった。
ありがとう。
‥君たちはセミだよね、そっか、何にも御礼は出来ないけれど‥今日あった事をキミに伝えておくよ。
今日は朝からお腹が空いていて、新鮮な土を食べに上にドンドン上がって行ったんだ。
そしたらいきなり土の無い世界に飛び出てしまったんだよ。その世界は土は無いんだけども、根がずーっと上まで光の輝いている方に向かって伸びてるんだ、その光はとっても不思議で、この世界には無い光、
そう‥色んな光が混ざってるんだよ。
いっこいっこ光を感じていると、いっこいっこ頭の中に、色んなモノが広がって行く‥凄く不思議な光なんだ。そうしてその光を感じていると身体の中に力が湧いてきて、何でも出来そうな気持ちになっていたんだ。
ただその時、何もない光の先から‥そう、君たちと同じ声、セミ達の声が聞こえてて来たんだよ、不思議だろ、そしてその声は何も無い光の中をあっちに行ったり、こっちに行ったり、まるで浮いている様に動き回っているんだ。夢を見ているみたいだった。
ただ‥しばらくすると身体が乾いて来て、慌てて土の中へ戻って来たんだけども、ギリギリこの洞窟に辿り着いた所で、君と出会ったんだよ。
水を与えてもらえなかったら干からびていたよ。
本当にありがとう。
ミミンズは、この不思議な話をミン爺に残して、御礼を言った後、自分たちの穴の世界に帰って行きました。
第4話『光の国』
【○ セミン ⬜︎ ミン爺】
ミミンズの話をミン爺は、遠くの根っこを見ながら懐かしそうに話してくれました。
⬜︎ どうじゃ、セミン
ミミンズはワシらと何にも変わらん、見た目がワシらと少〜し違うだけじゃよ。
○ スゴイやミン爺、ミミンズと直接会ってお話ししたんだね。
セミンは今、ミン爺から聞いた不思議なお話しも驚きましたが、それよりもツンツクから言われた、ミン爺は嘘をついているんじゃ無いか‥と言うことが、ハッキリ違うとわかって、凄く嬉しい気持ちになっておりました。
○ ミン爺‥ 色んな光って、何だろう?
⬜︎ 何じゃろうな〜
○ 浮いてるって何だろう‥?
⬜︎ 何じゃろうな〜
○ 願い事が叶うって、何だろう?
ねぇ、ミン爺
⬜︎ そうじゃな〜 何じゃろうな〜
セミンはその晩寝るまでミン爺に、アレやコレや質問するのでした。
⬜︎ セミン‥光の国には不思議な事がいっぱい有る、そんな国が上の方にあるんじゃが‥ワシらには眩しくて、その世界には行けない様になっとるんじゃ。
○ 眩しくて行けないのか〜
つまんないな〜
⬜︎ さぁ、今日はもう遅い‥ もう、おやすみよ、セミ ン
○ 光の国か〜〜
その日の晩、セミンが見た夢は‥言うまでもありません。
(第一章終わり)