ズルルン滞在記4:温泉のない温泉
どーも、この前映画館で寝ていた奴です。
その節はすみませんでした。
と言うわけで、書いているうちにいろいろあったなぁと感慨に耽っているおれ。
滞在中にグルメ以外で何か楽しんだことはなかったか思い出した結果、「アッーー!アレがーー」というのを1発思い出した。
それはベタではあるがタイマッサージである。
タイに行く前に日本の上司が、「おれ君、バンコクには有馬温泉があるからぜひ行くといい」と教えてくれていた。
有馬温泉と言えば、昔ブラマヨの漫才で小杉が「有馬温泉とかええんちゃう」と言っていて、その時からいつかは行ってみたいと思っていた。
関西にあると思っていたがまさかバンコクにあるとは…地球恐るべし。
そして、何を隠そう、バンコクの「有馬温泉」は老舗のタイマッサージ店なのである。
滞在先ともそれほど離れてなく、時間と金に余裕がある時は大変お世話になった。
先に弁明するがいかがわしさはアンパンマン レベルで微塵もない。
おばさんを越えおばーちゃんに差し掛かった大ベテランたちがジャイアンのように指を鳴らしてギッタギタにしてやると出迎えてくれる。
いろいろコースがあってなんのこっちゃかわからんが毎回間違えようのない基本的なコースを頼んだ。
たしか受付でメニュー表みたいなのを見せられて選んだ気がする。
日本語で書いてあったかどうかは記憶を空港に置いてきたため忘れたが、まぁ店名自体、日本人をターゲットにしてます感満載なので、タイ語も英語もわからんおれでもどうにかなった。
1時間が通常だが、日本に比べてお安いのでおれはリッチに2時間を選ぶ。
1時間よりも全身をくまなくゆっくり伸ばしてくれるのでありがたい。
日本でできない贅沢(最近の物価は知らん)である。
コースを選ぶとおばちゃんが現れて「コッチダヨー」とマッサージする部屋に連れていってくれる。
たまに待たされる時は、外で飲み物売っているので日本より甘いコーラをダバダァと飲みながら気長に待つ。
日本のマッサージと違い、押すだけじゃなく、引っ張る、伸ばす、柔らげる感じが気持ちいい。
これまでにおそらく何万人ものジェントルマン達をほぐしてきた手だれである。気持ち良くないわけがない。
おれの前世は餅だったんじゃねーかと錯覚を起こすほどである。
だが、たまに痛い。
そんなにいきますか!というレベルまで伸ばされることもあり、「痛い痛い」言ってると「気のせいだよ」とそこだけ流暢な日本語で返ってくる。
おそらく何万回もこのやり取りをして会得した日本語で、妙なリアリティと説得力で「気のせいか」となってしまう。
なんかギッタギタにされていてもイタ気持ちいいに変わってくる。
現れるおばちゃんによるが、マッサージ中話しかけてくる方もいる。
「イツキタノー?」「リョコウデキタノー?」「ナニタベター?」など、おそらくこちらが答えたところで、自動プログラムで声が出てきているため会話にならないこともあるが、なんかこう現地の方とのコミュニケーションをしている感じは嬉しい。
そんなこんなで時間が終盤に差し掛かると、おばちゃんは何やら取りにどこかに消えていく。
戻ってきたおばちゃんの手には熱いお茶、もちろんジャパニーズグリーンティーである。
これが唯一の有馬温泉テイストであり、このお茶を飲むことで自分の身体が「マッサージ完了しました」となる。
「カラダカタカッタネー」など、定型の帰り際の雑談時、ジェントリーにチップをお渡しする。
いつもは教えてもらった平均単価を渡していたが、タイを離れる時に「おばちゃん、今日でお別れだぜ」と気持ち多めに渡したら「オオイヨー」と返してこようとした。
誤解を恐れず、偏見と悪意を持ってお伝えすると、他の国でこんなこと言ってくる人はいないと思う。
「よっしゃラッキー、金額感知らねージャパニーズから外貨獲得してやったぜ!今日は祝杯だぜ!」と懐に入れてしまうだろう。
しかし、おばちゃんは遠慮する。
「気持ちよかったからもらってください」と伝えると、深々と頭を下げて「アリガトーマタキテネ」などと言ってくれる。
おれはもう来れないんだよおばちゃん、持ってる小銭全部あげちゃうよと思わせてくる。
しかし、小銭はおばちゃんももらいたくないだろうと冷静になって「またねー」とお別れした。
おそらくおばちゃん(達)は今日も疲れたジェントルマンたちを揉んでいるだろう。
そして、ジェントルマンの心遣いに遠慮しているだろう。
いつかタイに行くことになったら、推定100歳を超えたおばちゃんに伸ばしてもらうのが、おれの夢である。
あと関西の有馬温泉に行くのも夢である。
誰か連れてってください。
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