02.不思議の魔塔の錬金術師
「僕の背中についている青いボタンをビビッと押してもらえませんか?」
塔の入り口に現れた鳥型のロボットが背中の赤、青のボタンを見せて言う。
彼……名前をチャコロットと言うらしく、この塔の管理人(鳥?)をしているらしい。
「ここはお約束通り赤押そう」
「胸側の緑も気になりませんか……これは宝石かな?取れないかな……」
赤髪とクロノがチャコロットのすぐそばで彼を弄っている。
すると、チャコロットはワナワナと震えだし叫んだ。
「オイコラ何してんねんワレ!押すボタンは青だって言ったろーが!!」
「あ?何やワレ、今誰にモノいうとんねん。ケッタイな関西弁喋ってビビるとでも思てんのか?」
間髪入れず返した赤髪の言葉で鳥は一言「ゴメンナサイ」と謝った。
言葉尻が怖いんじゃない。赤髪の目が怖かった。
「話進まないからボタン押すよ?」
僕は青いボタンを押すとチャコロットはその先へ案内をはじめた。
「先輩……あの辺りの港町出身じゃなかったでしたっけ?」
「旅芸人の一座にいたからあの辺りの細かな方言は網羅してるよー」
二人が「おっとっととっとって」とか話すのを尻目に塔の中へ入る。
塔内の階段へ向かう道すがら、チャコロットからの説明によると塔は入る度に姿を変える性質を持ち、今は2階以降を魔物に占拠されているとのこと。
「これも何かの縁というもの。塔の中に巣食う魔物たちを退治してくれませんか?」
「一つ聞きたいんだけどいいかな」
「何でしょう」と答えるチャコロットに、僕は続けた。
「ここに伝説の錬金術師の記録があると聞いたんだけど」
『錬金術師』という言葉にチャコロットは小さく反応したように見えた。
機械の翼で器用にも考えるようなポーズをとり、チャコロットは答える。
「ふむ……『伝説の』というのがどの時代のどんな偉業に対して贈られた称号かはわかりませんが……この塔の作られた時代の錬金術師に関する記録は何処かにあったはず……」
パーシバルが遡ったのは60年ほど前の世界だ。時代的には合わず、ここに直接的な手がかりがあるようには思えない。
「錬金術師のルーツを探る…という点では参考になるんじゃないですかね」
クロノくんが言う。
「錬金術師と言えば不老不死や賢者の石の研究もよく聞くし、年代は余り関係ないんじゃないじゃろか」
赤髪までまともなことを言う。
「じゃあまぁ……最速で片付けますか」
3人は各々両手に2本の剣を持ち、扉の先へと向かった。
***
「で、何かわかったことは?」
赤髪が口を開く。その顔には疲れの色が見える。
僕たちは最上階…とはいえ解放されている20階の酒場でこれまで集めた情報を整理することにした。
「まず我々は『錬金術師ゾーネスの栄光第1章』を逃している…ということですね」
「だよね」
「ワロタ」
意気揚々と上がったものの道のりは意外と辛く、入る度に姿を変える塔の性質も相まって入り直すのは厳しいものがある。
「あ、あの……それならはじめのフロアにありましたよ?」
疲れ果てている我々を見かねてか、先程まで回復を担当してくれていたホロナさんが声を掛けてくれた。
「ホロナさん……っ」
「魔塔の守護天使……っ」
「結婚しよ……」
思い思いの(重い)感謝の言葉を投げ3人は旅立ちの広間へ戻るのだった。
どうでみいいけど絶対、ホロナさんには引かれた。
***
「気を取り直して、だ。この塔は錬金術師ゾーネスが神の知識を手に入れるために作ったらしいと」
『究極の錬金術』という本を手に取り、僕はまとめ取り掛かった。
「カード!!カードちょうだい!」
「あ、僕指輪まだ完成してないんで指輪を……」
広間の中央で2人は討伐報酬を物色している。
あいつらココに入りたがったのって、報酬にアクセサリー貰えるからかー。
僕は遠い目をして微笑んだ。
【お話の補足(蛇足)】
あの辺りの港町
主な出身は浅野ゆう子や北川景子。「鬼斬りゃー」の人とかもそうらしいんだけど、小学校の時の担任が似た名前でその人しか顔出てこないんだ。
おっとっととっとって
「おっとっとを置いておいてと言ったのに何故置いておいてくれなかったの?」を方言で言うとエラいことになるという遊び。遊びなのか?
結婚しよ
女神に対しての賛辞。今回は公式の設定のため「魔塔の守護天使」に対しての発言となった。因みに本家『進撃の巨人』では発言された記録はない。