夫婦水入らず最後の夜。

2021年5月24日 21:59

箱詰めの女王と化したわたし。明日は、引っ越し当日だ。

ダンボールづくりから、いるもの、いらないものを分別し、断捨離をしながら、どんどん箱へ詰めていく。

モノは少ない方が見動きが取りやすいことを実感。
このときばかりとミニマリストになっとけば、こんな苦労はしなかっただろう。と、遅かれし後悔に苛まれる。

時計は午後の3時。もうすぐ、新居にエアコン取り付け業者さんが来る。自称　箱詰めの女王は、詰め込んだ箱を押しのけ、軽く身なりを整えて自転車で新居へ向かう。

箱詰めの疲れがたまっているのか、いつもよりペダルが重く感じる。

新居に近づくと、道路の両脇の大きな木々の葉が、頭上で重なり合い、大きなトンネルとなっている。

太陽に照らされた木や葉の間から、揺ら揺らと、光が注ぐ。

緑のトンネルを、自転車で颯爽と駆け抜ける。視覚的に癒されると、ペダルは、重く感じなかった。

そして、明日は夫と同棲をはじめ、結婚をして、それから、ペットのきぬごしを飼いだした想い出の家ともオサラバ。

月並だけど、この家でいろんなことを共有しあい、お互いの価値観のすき間を埋める合うように、互いに歩み寄った。

価値観が違いすぎて、心が折れそうにもなった。何度も家から出ていった。

でも、夫とふたりで食べるごはんと会話は最高に美味しい。彼の洗濯の畳み方はユニクロの店員並みに上手。だから、毎度新品を着ているみたいに着心地がいい。わたしが畳むよりか何倍も上質にみえる。

わたしの畳み方は、いくら気をつけてもしわくちゃなのだ。

わたしよりも、丁寧に行動する夫と、スピード重視で大雑把に動く妻のわたし。

『むぎのうがいは、とても早送りをしているみたい』　と夫。人から、うがいの感想を聞いたのは初めてだ。

でも、ゆっくり行動したり、ゆっくり話そうとするだけで副交感神経が優位になるって本で読んで。だから、自分へ思いやりを持ちたいなら、そう心がけたい。

夫がいつもみせる、一挙一動、話し方のひとつひとつが、わたしの模範となっている。丁寧な動きって、見るだけで落ち着く。

この丁寧な動きが、人をも副交感神経を優位にさせているのか。

わたしは、いつも呼吸をすることも忘れているタイプ。

気付くと、呼吸が浅くなっていて、からだ全体に酸素が行き渡らなくなっている。

早口だし、なにをするにも、なにかに追われているみたい。

簡単に出来たら、もっと器用に生きられるのかもしれないのにな。

ここから、見る日暮れも今日で最後。

明日からは、わたしの母と実家の犬も一緒に暮らす。

わたし、夫、うちの犬、わたしの母に、実家の犬。

３人と２匹での新たな家族での暮らし。
きぬごしは、昨日から引っ越し作業のため動物病院で二日間お預かり。

昨日、きぬごしを動物病院に預けたことを夫に言うと
夫が「今日からの二日間は、きぬごしを飼う前ぶりの、ふたりきりだね。」

この家に同棲した日の夜に、夫とカラオケに行き、わたしは、安室奈美恵の【キャンユーセレブレイト】を歌ったのを思い出した。

自分も同棲前に、そんなことを歌ったのを思い出して恥ずかしくなり、夫に「安室奈美恵、気取りかよ？」とつっけんどんにツッコんだ。

でも、そんな【ふたりきり】を、ほんの少したのしんでいる。

きっと、屋根の下で夫婦水入らずは、今日が最後の夜。