担当ちゃんと私⑦
「え、俺!?俺なの!!??」
「ありがとう〜!!初・飲み直しだーー!!!」
やたらテンション高く、さっきの彼が戻ってきた。もう二人、ホストを連れて。
「こいつの、“初・飲み直し“だから!めでたい!!!」
ホストAが言った。
「いや〜俺ずっと応援してたからさ〜。昨日も、“今日こそ指名取れるんじゃね!?”って話してたところで!!」
ホストBが言った。
彼は入店3ヶ月目の新人だった。
・・・
「姫と王子のカップル誕生〜!!!」
周りに囃し立てられて、
ああホストを指名したんだな、という実感が湧いてきた。
指名になると、隣の席に座ってくれるようだった。
緊張した。
隣に座る彼からはいい香りがしてくらくらした。
なにせ『指名』というものは初めてで、『飲み直し』という言葉もこの日初めて知ったくらい、ホストに関して知識がなかった。
私はただ、イケメンを眺めるのが好きな一般人なのだ
指名したホストを「担当」と呼ぶことも知らなかった。
恐るおそる担当に「“飲み直し”って何ですか、、」と訊くと、「初回で来て、そのまま指名してお店に居続けてお酒とか飲むことだよ!」と教えてくれた。
「ホントにホストとか行かないんだね!?」とびっくりされた。
「じゃあお互い、『人生初の“担当“』で、『人生初の“姫“』だ!」
「初めて指名してくれたお客様って、絶対に忘れないから。」ホストAが言った。
本能・直感での選択だったが、
彼を選んで良かったと嬉しく思った。
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さっきはほとんど話せなかったし、幸い(?)この日はお店が空いていたので、担当を独占することができた。
私の担当は、なんと未成年だった。
歳の差があるから仕方がないのだろうけど、話してみると共通の話題は少ないし、彼が知らないことは多かった。
旅行の話になったとき。
「特に印象に残ってるのはギリシャかな!エーゲ海でね、泳いだんだよ!あのエーゲ海で♪」
と、はしゃいで話したら、
google先生で『 えいげかい 』と検索したのは本当にウケたw
でも、
『わからないことはすぐに調べる』『わからないことをわからないと言う』
そんな真っ直ぐなところが、やはり魅力的だと思った。
アホだけど、熱心で、とにかく一生懸命。
そして非の打ち所なくカッコいい。
化粧室までの案内も担当がしてくれたのだが、後ろ姿もどタイプ過ぎる素敵な脚だった。
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顔がイイ男は、歌舞伎町にはたくさんいる。
けれど、
顔も中身も「素敵だな」と思える男は何人いるだろうか。
・・・
彼にとって、初めての「指名客」。
仲間のホストにもたくさんお祝いされて、彼はかなり喜び浮かれていた。
さっきの香水の話。
「いい香りだね」と言ったら、
「うん、これお気に入り!Pちゃんにも着けてあげる!」と言って、
うきうきした様子で私にも振りかけてくれた。
マーキングされたようで嬉しかった。
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思えばこの日が。この時が。
私と彼との楽しい時間のピークだったかも知れない。
これは大体の男女関係に於いて当てはまるのだが、
始まってしまえば、
あとはもう、
終わるだけだから。
つづく