【活動レポート】PMI Legal Community 1月LAB:企業におけるPublic Policy/Public Affairsの役割について
2023年1月18日、PMI Legal Communityで、1月LABを開催いたしました。
PMI Legal Communityでは、ルールメイキングに関連するテーマで、講師の方をお招きして勉強会(LAB)を毎月開催しております。
今回は吉川徳明さん(株式会社メルカリ執行役員VP of Public Policy)をお招きし、「企業におけるPublic Policy/Public Affairsの役割について」というテーマで講義をしていただきました。
以下では、講義の概要やその後の質疑応答の様子をご紹介いたします!
1 吉川さんによる講義
(1)Public Policy/Public Affairsの目的
メルカリには、Public Policyという政策企画を担当するチームが存在しますが、まずはPublic Policyチームがどういった目的で設けられているのかについて解説していただきました。
政策企画に関しては、例えば「社会はこうあるべき」「法律はこうあるべき」という形で、個人としても様々な思いがあると思います。とはいえ、Public Policyチームの仕事は企業活動の一環であるため、政策形成への参加はあくまで企業活動に資するという観点で取り組むというのが大事な前提としてあります。
他方で、Public Policyに関わる人の中には、よりよい社会・ルールを作りたいという思いを持った人も多いと思います。実際にそのことは大事で、単に仕事としてPublic Policyの仕事をしている人よりも、個人として実現したい社会像に向かって熱量を持って動く人は、ステークホルダーからの信頼を得やすいというのは間違いないと思います。したがって、こういった個人の思いも重要と言えます。
このように、Public Policyの仕事の目的はあくまで企業活動につなげる点にあるわけですが、一方で個人の政策形成への思いも重要となる仕事と言えます。また、「企業活動につなげる」ということは個社の利害を主張することを意味するわけではありません。業界全体のため、消費者のため、社会のための共通利益を主張していくことが長期的には自分たちの企業活動に資するということは往々にしてあります。
(2) Public Policy/Public Affairsの役割
Public Policyの目的があくまで企業活動につなげる点にあることを確認した上で、具体的に社内でどういった役割を果たすべきなのかについて見ていきましょう。
Public Policyチームの、他の部署にないエッセンスは「社会と企業の接点」だという点にあります。
企業には様々な部署がありますが、議員、省庁、業界団体、NGO/NPO、メディアといった非常に様々なステークホルダーとの関わりを持つ部署はPublic Policyだけであると言えます。そのため、「社会と企業の接点」であるという特徴をいかに活かして、会社に価値を提供するかが重要となります。
具体的には、社会と企業との間にあるギャップを埋めていくという役割を果たすことになります。
まず、企業から社会を変えるという方向では、技術やビジネスの最新動向を伝えることで、法律を変えるということが考えられます。また、法律以外のルール、例えば、自主規制などの私的ルール、業界慣行、規範やメディアの論調といったものに対しても、自社から働きかけをして変化を起こしていくべき対象となります。
また、社会から企業を変えるという方向では、国内外の政治情勢や社会の価値観の変化を早期にキャッチして、自社の在り方にどう影響するかリスクを見積もり、会社内の意思決定や仕事の進め方を改善したり、アップデートしていくということが考えられます。
例えば、社会におけるダイバーシティ&インクルージョンの重要性はここ数年で強調されるようになりましたが、今までのやり方を踏襲して炎上している企業は多数存在します。こういった事態を避けるためにも、Public Policyが社内に働きかけをする役割を担う必要があります。
このように、「社会と企業の接点」であるという特徴を活かし、企業→社会、社会→企業の両方の方向性で働きかけを行い、社会と企業との間にあるギャップを埋めていくという役割をPublic Policyは担っていると言えます。
(3)事例紹介
これまで抽象的な話が続いてきたので、1つ具体例を紹介したいと思います。
特商法では、個人が事業者としてオンラインで物品やコンテンツを販売する際、住所や電話番号等の情報を公開する必要がありました。
このような規定は、物を売るのは一定の規模がある事業者であることを前提として作られたものと言えます。しかし、ほとんど個人と同規模の事業者が物品やコンテンツの販売ができるような環境が整ってきたという社会の変化に伴い、住所や電話番号等の情報の公開を強制してしまうという問題が生じてしまいました。
そこで、クリエイターエコノミー協会の働きかけにより、一定の条件の下では、個人ではなくプラットフォームの住所や電話番号を表示することでも構わないという法解釈が認められるようになりました。
まさに、企業のビジネスの変化に社会が追いついていない状態の場合に、企業から社会に働きかけることによって、社会を変えることができた事例であると言えます。
2 質疑応答
講義のあとは、会員からの質疑応答を行いました。
例えば、次のような質問がなされました。
このように活発的に質問がなされ、非常に有意義な時間となりました!
3 PMI Legal Communityのご案内
PMI Legal Communityは、「ルールメイキング」という新領域に挑む実践コミュニティです。
官庁出向経験者、 スタートアップ・IT企業のインハウスロイヤー経験者、 キャピタリストなど、様々なバックグラウンドをもつ弁護士・専門家が参加しており、毎月勉強会を開催するなど、学ぶ、考える、つながる場を提供しています。
現在会員募集中ですので、興味をお持ちの方は是非参加していただければと思います!
毎月の勉強会(=LAB)には、トライアル参加という形で、会員でない方も初回無料で参加することができます。こちらも是非ご活用ください。
【団体概要】
名称:一般社団法人Public Meets Innovation
設立日:2018年10月1日
HP:https://pmi.or.jp/
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