1)ミレニアル政策ペーパー公開シリーズ(前編) 〜ミレニアル世代の違和感から見えてきた家族への提言〜
PMI 政策ペーパー#1「家族イノベーション」
公開トークセッション 第1部(前半)
ミレニアル世代による政策ペーパーの公開
〜昭和・平成の家族のモデルを超えた、多様な幸せを支える社会のかたち〜
今日のイベント告知およびPMIのミレニアル政策ペーパーのリリース(note)はこちらです。
動画:これまでの「家族観」への違和感 #ミレニアル政策ペーパー
PublicMeetsInnovation(以下PMI)が4月7日に公開した、ミレニアル世代の官民100人とつくりあげた「ミレニアル政策ペーパー第一弾 〜家族イノベーション〜昭和・平成の家族のモデルを超えた、多様な幸せを支える社会のかたち〜」。
本記事では4月15日の公開イベントの内容をレポート記事としてお送りしていきます。
ミレニアル世代の「家族」に対する違和感と本音
「社会で一番アップデートが足りないのはどの領域だろう?」と、2年前にPMIメンバーで話した時、その一つが「家族」でした。ミレニアル世代約100人で「家族」と聞いて思い浮かぶことをシェアし合うと、ネガティブな意見が少なからず出てくることが分かりました。
(たくさんの意見の中から一部抜粋)
なぜミレニアル世代には「家族」にネガティブな意見を持つ人が多いのでしょうか。
昭和55年と比較すると、家族の環境はこんなにも大きく変化しています。
たとえば、
●共働き世帯が約2倍に増え、 専業主婦は2/3まで減少している
●一人暮らしが大幅に増えている
●3世代世帯が40%も減少している
●ひとり親世帯&高齢者の単独世帯で貧困が顕著化している
●子どもの就学年齢の延長によって親の負担が増している
つまり、昔ながらの家族という枠組みの中ですべてを担うことが難しくなってきている、と言えるのではないでしょうか。
日本のLGBT・性的少数者は約10.0%という調査があります。
また同性婚について65%が「賛成」と言っています。2015年の調査では41%だったので、この5年で大きく伸びていることがわかります。
そして「性的役割分担」について。「男性は外で働き、女性は家で家事」という考えに、70%の人が「共感しない」と答えています。これは1979年の内閣府による調査ではわずか20%でした。
家族が担ってきた役割9つの機能
ミレニアル政策ペーパーでは、「家族」がこれまで担ってきた役割を9つに整理しました。
これらの機能が、時代の変化とともにすでに家族以外の何かで代替されているのであれば、理論的には家族が負担する必要はもうありません。
一方で、家族が引き続き担ってはいるが、実はもう限界にきているのであれば、何か新しい方法を考えないいけません。
この9つそれぞれの機能は、昔と比べてどう移り変わってきているか考えてみました。家族の機能の中の代表的なものとして「扶養機能」を見てみます。
かつては幼い子どもや高齢者、障碍者などの扶養、ケアは家族の役割とされてきました。
しかし現在は、家族内のケアの担い手が減少し、家族の負担が増しています。また、健康寿命に比べて平均寿命が大幅に延びたことによって、高齢者の介護の負担がどんどん重くなってきています。
次に「教育機能」について見てみましょう。
家庭も教育の重要な場です。
しかし現代は、家族で過ごす時間がどんどん減少しています。50%以上の父親が「子どもと1日30分未満しか過ごせていない」という現状があります。母親ですら半分が「1時間未満」と答えています。
そして80%の人が「家庭教育は自分たちだけでは出来ない」と感じているというデータがあります。
親だって子供と過ごしたい。しかし親も生活のために働いています。そこにジレンマがあるのも事実です。
家族でこの9つの機能をまかなうという前提そのものを見直す必要があると我々は考えました。
これは働き方改革など、社会全体で考える必要のある、大きなテーマだとPMIは考えています。
それぞれが選ぶ家族の形を、優劣なくフラットに認め合える社会をどう作っていけばいいのでしょうか。
私たちPMIは、新しい2つの視点を、政策ペーパーで提案しています。
これまでの社会は、家族を画一的な形に収めることによって効率性を追求していました。
たとえば、行政や企業のマーケティングは、家族を「父+母+子供」という構成要員でみていました。
日本には「児童扶養手当法」という法律があります。これは離婚などの理由で片方の親のみと生計を共にする子どもに対する手当なのですが、なんと、平成20年に法律改正されるまで「父子家庭」はその手当の対象になっていませんでした。「父子家庭は稼ぎ手である父と一緒だから、手当をする必要がない」と行政に思われていたんです。
「普通の家族というスタンダードがない」社会に
1人ひとりが、理想的な家族の形を実現できる社会。その選択が批判されたり、不利な扱いを受けることがない社会を作っていきたい、とPMIでは考えています。
国が家族にサービスを提供する際には、やはり形が必要ですがが、ただ、例えば「婚姻/内縁関係」かによって、相続や保険金の受取りに違いが生じてしまう現状では「婚姻している方が本当は望ましい」という空気感が作られてしまいます。
これを変えるために2つのアプローチがあると考えています。
1つは既存の家族の枠組みを広げていくアプローチです。
たとえば同性婚を婚姻として認めていこう、といった視点です。
(例えばこんな案があります)
2つ目は、家族という単位ではなくすべて個人単位で考えるアプローチです。
行政が「1人ひとり」にサービスを提供できるれば、「婚姻」や「世帯」というくくりで考える必要がなくなります。結婚制度を、「男性/女性」という性別だけで考えている限り、発想のアップデートは難しくなると思うのです。
実はここは私たちがこの政策ペーパーを作っていく上で、とても難しいと思った部分でした。ぜひ皆さんからフィードバックをいただき、PMIは、皆さんと一緒にこれからの家族のあり方を引き続き追求していきたいと思っています。
記:村松優里英(PMIインターン)
《トークセッション 第1部(後半)に続きます》