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3)ミレニアル政策ペーパー公開シリーズ(後編) 〜これからのシンクタンクの意義とは? 〜

PMI 政策ペーパー#1「家族イノベーション」
公開トークセッション 第2部
これからのシンクタンクの意義とは? 


本セッションの第2部 は、ルールメイキングの第一線で活躍されている皆さんをお招きしてお話したいと思います。

(本記事では4月15日の公開トークセッションをレポート記事としてお送りします。前編第1部の前半)と中編第2部の後半)もご覧ください!)


●モデレーター
・石山 アンジュ(PMI 代表)

●スピーカー
・梅澤 高明さん(A.T. カーニー日本法人会長・CIC Japan会長)
・白井 智子さん(新公益連盟 代表・NCLサステナブルイノヴェイションラボ   共同代表)
・高木 新平(PMI 理事・NEWPEACE CEO)
・田中 佑典(PMI 理事・総務省)

自己紹介

白井さん(新公益連盟 代表・NCLサステナブルイノヴェイションラボ  共同代表):
私が代表を務める新公益連盟は、NPOやソーシャルセクターなど社会課題を解決する100あまりの団体の集まりです。私はもともとは不登校、引きこもり、発達障害者の支援をしていました。フリースクールを立ち上げるなど、地道に現場で活動しながら、政策を変えたり法律を作ることに関わらせていただいています。

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梅澤さん(A.T. カーニー日本法人会長・CIC Japan会長):
CIC (ケンブリッジ・イノベーション・センター) Japan という会社の会長を務めています。日本最大規模のスタートアップ集積拠点「CIC Tokyo」を去年10月、虎ノ門ヒルズに立ち上げました。PMIの皆さんにはミーティング等でも使っていただいています。最終的にスタートアップが200〜250社ぐらい集まる巨大なシェアオフィスの集合体になる予定なんですが、この半年間でも90回ぐらいイベントをやり、コロナ禍にもかかわらず計13,000人くらいオン&オフラインで動員しています。「思わぬ会話から新しいイノベーションのアイデアが生まれる」。そういう場を作っています。

僕は3つ仕事を並行してやっていて、2つ目がA.T.カーニーという大企業向けのコンサル、3つ目がナイトタイムエコノミー推進協議会という一般社団法人です。これは夜の経済活動や文化活動を応援していく団体です。コロナ禍で大きな被害を受けているのが夜間の経済活動なので、実はルールメイキングとして僕が一番忙しくしているのはここです。

高木(PMI 理事・NEW PEACE CEO):
NEW PEACEという会社の代表をやりながらPMIの創設メンバーで理事をやっています。世の中に新しいビジョンを作って、それを投げかけて、仲間を集めコミュニティを作って、ムーブメントを作っていく仕事をしています。

これまでも例えば過疎地域で電車やバスを自動運転で走らせるプロジェクトを仕掛けたり、アンジュさんとはシェアリングエコノミー協会を立ち上げたり、ここPMIの中でも、僕はもともとの専門領域である「表現」の部分をやっています。

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アンジュ(PMI 代表):
では、ルールメイキングの現場で活動されてる皆さんに、この1〜2年で感じていることを、ざっくばらんに話していただきたいと思います。

白井さん:
私がやってきた不登校生の支援では、「社会からこぼれ落ちてる人がこれだけいる」ってどれだけ訴えても、決まった人にしかその言葉が刺さらない、世の中の9割以上の人は聞いてない、というもどかしさとの戦いでした。それがこの1〜2年、コロナをきっかけに、ようやく今まで届かなかったところに、声が届き始めたっていう感じがしています。

ミレニアル政策ペーパー第1弾で取り上げた)この「家族」って、私もずっとやりたいテーマだったんです。日本の家族制度とか結婚制度はおかしいところがいっぱいあるから、新公連の代表になった時に、なんとかしようよって話したら、多くの人に「家族」はタブーが多すぎる、敵が出来るよ、って止められたんです。それを今回みなさんが言ってくださった!

梅澤さん:
ミレニアル世代の皆さんが、こうやってパブリックステートメントとして問題提起をしてくれて本当に頼もしいです。僕も実は「人生100年時代」に同じパートナーと70年間いるのって無理かも、と思ってたところでした。

白井さん:
私も無理だった!(一同、笑)

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梅澤さん:
「人生50年時代」だった制度の「伝統的家族観」を、今も金科玉条のように言うのは馬鹿げていますよね。たかだか過去100年間くらいの家族観ですよ。

民間セクターの出番だ!

梅澤さん:
皆さんがPMIを立ち上げた時、きっとアメリカと比べて日本のルールメーキングが遅れている実情も考えたんだろうと想像します。
でも実はこれ、無理もなくて、アメリカはすでに経済の中心がGAFAをはじめとするニューエコノミー側にあります。独占禁止政策もGAFAがメインターゲットになっています。一方で日本は、まだまだオールドエコノミーが強いんです。経産省も、「最初に意見を聞きに行くのはやっぱり経団連」というのが、現実としてある。

高木:
菅政権で「デジタル」と「クリーン」という柱が出て、ようやく自分たち世代のアジェンダが、国の真ん中に来はじめたなという感じはあります。それは僕はチャンスだなと思ってるんです。ただもっと、民間企業の人間が提言をしていけたら、と思います。

白井さん:
「公」の機関では、どうしても「公平性」が求められて、1人ひとりに合った政策というのが作れないんですよね。不登校の子はすでに12万人もいたのに「教育機会確保法」(不登校の生徒等を支援する法案)が2017年に出来るまで、国からずっと無視されていたんですよ。だから、国会議員会館を回ってロビイングしていたんです。フリー・スクールに出会えなかったら反社に行くしかなかったような子が、支援をしてもらい出会いを得れば、今度は支援する側に回っていくとか、そういうエビデンスやデータを使って。その経験から、やはり民間あるいはNPOの存在意義があるんだろうって、痛感しました。

田中(PMI 理事・総務省):
官僚として働いて8年になりますが、ここ数年で感じているのは、霞ヶ関の人材流動性がだいぶ高まったということです。良い意味でも悪い意味でも、官僚を辞める人が増えた。省庁を辞めてメルカリのような企業の政策企画部門に入る人が出てきて「内から外」への動きが進んでいます。

あるいは経産省をはじめ「外から内」の動きも進んでいます。これまでルールメイキングって霞が関の専売特許みたいに思われていたけど、だいぶ裾野が広がったなという感じがしています。

アートも加えたらどうか

アンジュ:
起業家たちも、事業では社会課題を解決しているものの、社会の根本にある課題に自らの事業をリンクさせて、構造そのものをデザインしていこうという起業家って、まだまだ少ないのかな、とも思っていて。

梅澤さん:
僕も同感。でも世の中を変えるインパクトのあるWHYを提示をして、ビジネスモデルを作って社会を変えて、回収するっていう時間軸って、短くても10年、長いと20年かかる仕事だと思います。それを支えてくれる大旦那がいないと、なかなか1人の起業家がやるには厳しい。

アメリカの場合は、ベンチャーキャピタルからの資金供給や、シリアルアントレプレナーで成功したような起業家からのエンジェル投資など、資金調達のエコシステムが早くに出来上がったがゆえに、今のGAFAを中心とする経済構造にたどり着くことが出来たんだと思います。でも日本はまだ、ステージがそれよりだいぶ前です。そういう規模感のあるスタートアップを早く作っていかなきゃいけない。

アンジュさんの話を聞いてると、PMIがやろうとしているのはデザインじゃなくてアートだという気もします。アングロサクソンの世界では、アートって社会像を提示することです。そのためにあえてラディカルなメッセージを社会に投げかけるみたいなことをやってる人たちがいます。

アンジュ:
だから梅澤さんはDJをやられてるんですか。

梅澤さん:
僕がDJをやってる理由は、1つは大昔、音楽家になり損ねた人間なので、もう一度音楽の現場に戻ろうと思ったから。もう1つはナイトタイムエコノミーの活動で夜の現場に足を運ぶようになって、後方支援だけじゃなくて自分ももう一度フロントに立って、そこで発見するものや、できる人脈があるかもしれないと思ったからです。

ミレニアル世代で声をあげていこう

アンジュ:
ぶっちゃけ話をいうと、PMIを立ち上げた時、梅澤さんにアドバイザーになってもらいたいねって話をしていたんです。でもやっぱりここはミレニアル世代、アンダー40の当事者だけで集まって提言をしていくと決めなきゃねって考え直して。

梅澤さん:
それで正解です!

高木:
アメリカのミレニアルズ人口は、Z世代を足すと3割もいます。しかもその上の世代よりも投票率が高いんですよね。国の「票年齢」が低い。
一方、日本は少子高齢の社会だから、未来を見据えた政策提案が出にくいですよね。だから日本のミレニアル以下世代は、今は耐え忍ぶ必要があるなと思います。

でもミレニアル世代の声は、年を追うごとに増えていくわけだし、一方で、シルバーの方たちが作った過去の価値観は、いずれは反映されない時代に移行していく。僕たちは、そこまでなんとか頑張らなきゃですよね。

Thinkに振り切るのはどうか

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高木:
「シンクタンク(Think Tank)」より「Do Tank」だ、と語られることがありますよね。「アクション思考」が求められる時代だ、という文脈で。それはそれで絶対に大事だと僕も思うんですが、あえてシンクに振り切るっていうのもあるのかなと思っています。解決できることだけを考えていくと、小さくなっていく気もする。

予防学者の石川善樹さんたちが、「Well-beingを国のGDPの次の指標にしていこう」と言っていますよね。主観を指標にするってどうやるの?という素直な疑問とあいまって、めちゃくちゃ面白いなと思いました。確かに、もう「客観を指標にする時代ではない」のかもしれないな、って。

僕たちはそんな風に問いの精度を上げて、シンクに振り切るというのも、ありなのかな。

梅澤さん:
問いのエッジを磨いていくことは、日本は長いことやってきていない気がします。僕の世代を含めて、上の世代の人たちは日本を何十年もこの状態でダラダラやってきて、責任とってないわけですよ。なので皆さんは、ちゃぶ台返しをする権利は持っていますよ。ただ、ちゃぶ台返しする時、格好良くやるためには相当シャープなコンセプトが必要です。(一同、大きく頷く)


ビジョンを描きまくろう

アンジュ:
半年前、菅首相が脱炭素の宣言をしました。でも、アジェンダになったのは良いことなんだけど、なんだかどうしてもミレニアル世代の私たちとしては、国際ルールにフォローしているだけに見えちゃうところがあるんです。「本当に我々日本は、Thinkしているのか?」と。

田中:
みなさんのやりとりは、自分が官僚をやりながら、ずっと悩んできたところです。気付いたのが、そもそも問いの立て方が、PMIと、官僚をやっていた時と全然違うなっていうことです。

官僚はどうしても、課題解決から物事を考えるんです。家族だったら「選択的夫婦別姓」とか「同性婚」という縦軸で物事を考えてしまう。家族そのものはどうあるべきかという発想はない。

でもPMIで考えている時は「あたらしい家族のカタチ」から入る。そこから個別のイシューが出てくる。問いの立て方が根本的に違うな、っていうのをすごく感じました。

「シンクタンク」と「ルールメイキング」はいったん切り離して考えてもいいのかな。ビジョンを描きまくる。現実社会に落とし込むところは、ぼちぼちやっていくのでもいいのかなと、新しい発想を得られたと思いました。

梅澤さん:
ナイトタイムエコノミー推進協議会も、観光としての夜と、文化創造の現場としての夜と、街づくりとしての夜を、思い切り横串刺そうとしてるんです。この数ヶ月、国交省とか文化庁にロビイングしています。シンクタンクとしてエッジーなメッセージを発信する時は、産業界にどう接続するか、も大事です。その接続の場としてCICも是非、使い倒してください。(梅澤さんのやっていらっしゃる「CIC Tokyo」はこちら


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          Public Meets Innovation について

PMIは次の50年の当事者であるミレニアル世代を中心とした、官僚、弁護士、ロビイストらが、各業会のイノベーターらと協働し、社会のイノベーションを目指していく、官民シンクタンク・コミュニティ。

未来の当事者である私たちミレニアル世代が、立場を超えてフラットに議論をしていく場所です。私たちのミッションは、「ヴィジョン・メイキング」
と「ルール・メイキング」。

20210415_PMI冒頭説明資料 (3)

ルール・メイキングにおける新たな手法、人材の育成として、2つのコミュニティを運営しています。

PMI Legal コミュニティ
弁護士が約80名くらい会員がいて、新しいルールメイキングの在り方を一緒に学び合っていく活動です。
公式サイト&申し込みHP https://pmi.or.jp/legal/

20210415_PMI冒頭説明資料 (4)

PMI 官僚コミュニティ
課題解決型の手法ではなく、もう一段、社会が目指すべき方向性や、自分たちが果たすべき役割を一緒に考え、官僚のみんなと一緒に学ぶリベラルアーツコミュニティです。

20210415_PMI冒頭説明資料 (5)

他にも、去年は「#コロナを危機で終わらせない」を合言葉に、コロナ危機を社会がアップデートする好機に変えるためのアイデアを一般の人たちから集め、それを提携のパートナー団体や自治体に届ける、といった活動もしていました。

● PMI ThinkTankについて
この4月より立ち上げた、正解のない時代の未来や社会思想を描き、構想し、共創するビジョン・メイキングとしての PMI ThinkTank 。

20210415_PMI冒頭説明資料

ミレニアルとPUBLICの視点から、現代社会の本質を見抜き、未来や社会思想を構想し議論していきます。その上で、ITテクノロジーをはじめとする新技術やアイデアを用いた解決策の提示をしたり、は何をすべきか、あるいは企業個人はどのような行動に取り組んでいくべきかを明確化し、公共の景色を変えるアイデアや切り口を提示していきます。
また外部機関や海外関係組織とも積極的な交流や連携を図っていきます。

この4月にはミレニアル世代の官民100人の違和感から生まれた「家族」への提言 #ミレニアル政策ペーパー を公表しました。


ご関心のある方は、ぜひ公式HPをご覧ください!
PMI 公式HP :  https://pmi.or.jp/


記:村松優里英(PMIインターン)


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