上位の者たちこそ重い責務を果たすこと~ノブレス・オブリージュ
(かわせみ亭コラム#22)
古来日本人は常に連帯を保ち、その共同体の上位の者も下位の者も共にその応分の責務を果たし、弱き者を援け、利己を廃し、義をもってその行動規範とし、この日本列島において幾多の天変地異や戦火をくぐり抜け数千年を生きのびてきました。共に手と手を携えて生きる精神の中にこそ日本人の生きる道があるということをその伝統的な行動規範の中に再度発見すべきでしょう。優位の者こそ大きな義務を負うこと、すなわちノブレス・オブリージュの精神こそが繁栄の永続的な循環を生み出すことに早く気づく必要があります。
日本の社会におけるさまざまな束縛やルールは本来その仲間の者たちとの連帯性を保つためのものであって、その義務は相互的なものであったはずです。しかしながらその日本的ルールが一方的な義務となっているのが今の日本の現状でしょう。大企業は下請け企業にその義務と責任を少ない「利」と交換に押し付け、道に外れた上司は地位を笠に着て部下にその義務と責任を押し付けており、いわゆる丸投げが広く日本人全体を侵食しています。
自分さえあるいは自社さえ利益を獲得できれば良しとする思考や行動は単に私利私欲のなせるわざにしかすぎません。今あるのはすべての善きものを「利」に換えている醜いリーダーたちの姿であり、これらの行動が人や組織の機能を根底から破壊し続けているということにすら気づかないリーダーたちの決定的な愚かさを示しているように思えます。多重請負構造、非正規格差構造に代表される丸投げ的な社会構造を修復しない限り、日本においては革新的なイノベーションも生産性の向上も手にすることはできないでしょう。
なぜこの選択をするのかと問われて、「ほかより良さそうだから」としか答えられないような幼稚な頭からは何も有用なものを生み出すことはできないでしょう。
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