悪魔のデススパイラル
(かわせみ亭コラム#15)
現在の日本における経済不況はデフレーションの悪循環に陥り、それから抜け出せないでいる。経済的な不況は、真っ先に労働者の賃金カットによる収入減に結びつき、収入の減った人々は支出を減らそうと一円でも安いものを買い求めようとする。その結果、企業はより安いものを供給しなければ生き残れないため、一層の労働賃金カットやより低コストの海外に生産拠点を移さざるを得なくなる。結局、日本国内においては労働者の賃金は下がり続け、非正規労働者は増加し続け、製造工場の海外移転はどんどんと進行していく悪魔のデススパイラルに陥ってしまうのは道理である。この流れは日本一国に限らず全世界的ないわゆるグローバル化によって引き起こされている点において解決をより困難なものにしている。コスト競争に勝ち抜けなければ生き残れないという強迫観念は企業の行動原理になっていると言える。この原理の行き着く先は国民の困窮であり、企業の衰亡であり、国家の衰退である。
それではこの問題をどのように解決すればいいのであろうか。日本一国でも、一つの企業でも、一個人でも可能な解決策はないのであろうか。よく聞く提案として、成長戦略が必要だということを聞くが、一旦このようなデススパイラルに陥った状態で、日本の国のどこに新たな経済成長分野があるというのであろうか。たとえ成長分野が見つかったとしても世界中の企業がどこも同じようにその成長分野に目をつけていることであろう。日本の国にしかできない成長分野など存在しないと言っても言い過ぎではないであろう。新エネルギーだの、最先端技術だのと言ってみても、また新たなコスト競争を引き起こすだけであろう。ここ二十年で日本が世界の最先端を行っていたといわれるものが次々と破綻しているのをみんな見続けてきた。家電産業、集積回路産業、コンピュータ産業、造船業などなど、最先端義技術で遅れを取ったわけではなく、最先端の技術を保持したまま敗れ去っている場合が多いのである。会社更生法を適用されたエルピーダメモリーや危機的な経営状態に陥っているシャープなどはその典型的な例と言える。最先端技術を持ったまま立ち枯れていく日本の姿の象徴を見るようである。今の時代においては、最先端技術を持っているというだけでは会社の繁栄は維持継続できないということである。ではもう八方塞がりなのであろうか。
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