映画感想ep2:インディ・ジョーンズと運命のダイヤル
こんにちは、倒です。
感想文投稿第2回目にも関わらず1作目から8カ月も時間が空いてしまいました。時間が空きすぎて「ですます調」と「であるだ調」の統一を忘れて文章を作ってしまいました。そんなこともあります。
今回の作品は、2023年公開の映画『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』です。
語らずにはいられないっ!なぜなら私は大人になって自主的に映画を見始めるようになる前からインディジョーンズが大好きだったからだ!
くらえ!乗船券を拝見パンチ!!
インディ・ジョーンズと運命のダイヤル
監督: ジェームズ・マンゴールド、ダニアル・リフキ
あらすじ:定年退職した世界的考古学者のインディ・ジョーンズの前に元ナチスの科学者・フォラーが立ちはだかる。かつて手にした運命のダイヤルを巡りインディはふたたび大冒険を繰り広げる。このダイヤルに秘められた秘密と人知を超えた力とは?
※以下映画本編に触れる内容を含みます。また、途中否定的に感じるような内容を含みますので、そちらご承知おきの方のみお読みいただきますようお願いします。
数々の冒険を重ね考古学的価値を追い求めてきた彼自身が遺物となったこの作品は、過去のオマージュをふんだんに散りばめながらシリーズの「最終作」として完成されたものだった。
・単体映画としての評価
・IJシリーズの最終作としての評価
冒頭で、「途中否定的に感じるような内容を含む」と言ったのはこのふたつの評価がそれぞれ異なるためだ。
「全盛期を過ぎた冒険家の最終作」というあらすじの時点で、「よ~しシリーズ一本も見たことないけど行くか!」にはならないとは思うが、如何せん今回のメインヴィランが3日で2億稼ぐ男ことみんな大好きマッツミケルセンなので、その状態で行く人もいるのではなかろうか。今作インディジョーンズ運命のダイヤルを視聴した者としては、シリーズとして終わろうとしている、絶対に続編は無い、ということを見事に提示されたものだった。それはインディ自身が背負う別れと、作品シリーズを追う我々への別れであり、先述した評価はこれが関係してくる。
まず「インディ自身が背負う別れ」というのは、妻であり、息子であり、友人。大学の生徒にとって憧れの教授象、世界中を冒険をしてきたスリリングな日々からの引退を意味する。
ブラウン管の前の一人掛けソファで眠りこけるハリソン・フォード、立ち上がってあらわになったのは彼の年を重ねた肉体。「うわ!年取ったなあ!」と驚いた。ハリソンフォードがおじいちゃんになってるんだから自分だって大人になってるわけだよ…と、きっと誰もが思っただろう。時の流れを表すのにはそれだけで十分だった。そしてその肉体、歩き方、表情から、インディは老い、ユーモアのセンスなどすっかり枯れてしまったことは明白だった。(それはそれとして、かつて甕やら井戸やらで水を飲んでいた博士の脇にウォーターサーバーが映り込んだところにはいささか興奮した。こんなにもウォーターサーバーが似合わない人間がいるだろうか?)
近隣の部屋に住む若者が朝っぱらから騒音よろしく大音量でパーティを開き、機嫌を損ねた先生はバットをもって注意しに行く。ところがこのうるさい老人は小ばかにされ、誰も彼を気に留めない!世間の注目は人間が初めて月面着陸に成功したこと一色だった。
そんなインディジョーンズを誰が想像しただろう?
誰も彼もを引き付けたあの魅力はどこに?
ここでの世界的な考古学者の権威、ヘンリー・ウォルトン・ “インディアナ”・ジョーンズ・ジュニア博士はまさに「遺物」。
過去を追い、過去に取り残されてしまった偏屈で孤独な老人だった。
過去に取り残された(しがみついた)者の話でいうと個人的には『明日に向かって撃て!(1969年)』が挙がるが近いものがある。自転車を「なにが未来の乗りものだ!」と呼び捨ておき銀行強盗に精を出す彼らとインディはよく似ている。色んなものを失って、あっという間において行かれて、彼はすっかり人生の迷子になっていた。
ところがパレードの最中フォラーの部下から襲撃を受け、手綱を握って馬に乗り町を走り地下鉄に追われるシーンのなんと生き生きとしたことだろう。「インディは死んじゃいなかった!」そう思った。
物語後半、ダイヤルで紀元前200年代に飛んだ先生は、そのまま過去に残りたいと強く乞う。それは考古学者としての本懐・矜持から来るものだが、そう言う先生の表情からは理由がただそれだけではないような気がしてならなかった。なんでそんな顔で言うんだよ!自ら博物館に展示されることを望むインディジョーンズなんて見たくなかった!だってジョーンズ先生は幼いころからの私の憧れ、私の「かっこいい」そのものだった!彼の言い分や状況もわかっちゃいるがそれはそれとして「ごめんよ、先生」と焼きゴテを当てたくなった。ゴネる先生の顎を殴って気絶させ未来に戻したヘレナには感謝しなくてはならない。
そこで私はこれまでに彼が財宝を与えられることがあっただろうかと考えた。答えはNOだった。聖櫃も秘石も聖杯も奪取のち、あるべき場所に還してきた。誰も触れることのないよう地下倉庫に保管する。元あった村に還す。遺跡の崩壊と共にその場に残す。ではインディアナジョーンズというお宝をどうするべきなのか?答えはひとつ。あるべき時代に帰すこと。
4作目があまり箸が進まず1,2回くらいしか見ていないうえ内容をほとんど覚えていなくて本当に申し訳ない。少なくとも3までは聖棺や聖杯など、最終目標がお宝の奪取だった。ところが今作は、アルキメデスのダイヤルというお宝を経由地として最終的に何を手に入れるのか?という話だったのが、過去作と展開としての大きな違いの一つだろう。
結論から言うと、先生のあるべき場所というのは現代で、そしてマリオンが必要で、最終的に先生は彼女という愛を手に入れたのだった。過去に囚われたインディジョーンズが、今を生きるために自分の居場所を見つける物語。過去に囚われることなく、しかししっかりと見つめ、そこから未来を切り開く、考古学の学術的な展開。外に干してあった帽子をサっと取るあの終わり方から察するに、彼の冒険はまだまだ続いていくのだろう。間違いなくハッピーエンドだ。それじゃあコイツはなんでまだこんなにベラベラ喋ってんだというと、答えはそこに至るまでの旅路にある。そしてここからは、「作品シリーズを追う我々への別れ」の話になる。まず冒頭で哀愁と別れの印象を強く感じた映画だったと述べたが、それは過去作と比較して出した感想からくるものである。
・過去作の人物の再登場・オマージュシーンが多い
・コメディ要素が少ない
悪口?というようなラインナップだが、ここは声を大にして違うのよ!悪口じゃないのよ!と言わせてほしい。じゃあなんなのさと問われるとこれがなかなか難しく、単体映画として見たときの個人的評価の低さの理由はここにあるし、同時にIJシリーズの最終作としての評価の高さもここにある。続編は無いということを伝えるにはあまりに有効だったのだ。
まず今作に関して一番驚いたのは「コメディ要素が少ない」ということだった。IJといえばテンポのいいユーモアのセンスがきらりと光る作品だが今作はびっくりずるほどずっと真面目。それは単に監督が変わったからと言われればそこまでなのだが、単に私が拾いきれていないだけの可能性が高いのでここはあまり深く言及できない。今作に物淋しい印象を感じた理由の一つにはここもあるかもしれない。
そしてIJ名物の「移動経路の地図の上を飛行機が飛ぶやつ」があって安心した(船や列車だったが)。最初の「移動だ!」でお!と思ったものの、地図が出ないまま目的地に到着しており、「ま、まさか…”無い”のか…?」と焦った。なんならこれを見に来たのにくらいの気持ちでいたのでその後ちゃんと2回も出てきてくれたのでよかった。もしかしたらこの時間が一番ハラハラしたかもしれない。
やはり過去作オマージュシーン・いわば『IJあるある』がちりばめられていた印象だった。ディズニー配給となりパラマウントのあとにルーカスフィルムのロゴが入ったので、パラマウントのロゴから本編の山(地形)にオーバーラップする形で物語が始まるといういつものアレが無かったのが少し寂しかった。しかしダイヤルを手にしたフォラーの影が車内のブラインドに映るシーンなど、照明に照らされた人影が壁に映るというところもしっかりこなしてくれて、ビンゴは順調に埋まっていった。そして今作の相棒やキャラクターも実に魅力的だ。気前のいい暴力と破壊は変わらず、倉庫の棚ごと倒してドカドカ破壊していく始末。途中「墓荒らし」と皮肉を言われるシーンもあったが今回も結局おもいっきり墓荒らしてんじゃねーか!やっぱりインディジョーンズといえば豪快墓荒らしだよな!これには聖杯騎士も涙涙。
過去作はもちろんフィクション/ファンタジーにおいてナチスドイツは代表的な悪の象徴として数多く描かれる。それゆえに行われる「悪いやつには相応の、むしろそれ以上の制裁を与えてもいい」という粗雑な扱いについては今作も思うこともあるのだが、それも含めてのザ・アメリカ映画というかんじがする。ナチスドイツ側の人間性が描かれていた「ペルシャン・レッスン」は私の中で新しくかつストーリーも良くて大好きなのだが、その話はいずれ…。
私は先生が冒険をしてくれて楽しかった。また帽子をかぶって鞭を振るって、三輪駆動で狭い路地を走って、洞窟で謎を解いていく姿が見れて胸が躍った。相棒たちと埋もれてしまった自分を見つけて、磨いて、自分を手に入れてくれてよかった。これからもインディジョーンズは私の大好きな冒険物語だ。今そういう気持ちでこの映画について振り返ることができたのが嬉しい。ハリソンフォードは死ぬまで現役を続けるとのことなので、今後の活躍と健康を祈りたい。
(最後に少しだけマッツミケルセンの話をさせてほしい。元ナチスの科学者・フォラー演じるマッツの前髪が大暴れでよかった。そしてずっとダバダバしていてよかった。特にアルキメデスの墓に行く途中の橋渡る時の歩き方とかハワ、ハワワ…としていて本当にかわいい。あとたくさん殴られてるしずっとひどい目に合ってる。なんなら最初の列車の上で先生に円盤を投げられ頭部に直撃したシーンで死んだかと思った。同じ学者でもインディと違ってナード時代を経験している感じが強い。でもベロックとインディが特別動けすぎるのかもしれない。彼もまたキャラクターとして非常に魅力的で、他マッツキャラより戦闘力は低めで、マグルで比較するとだいだいハンニバルレクターの3分の1くらいの戦闘力しかない。いつもちょっと離れたところでおっきいななめ掛けを下げて帽子をかぶって立ってる。テディベアかな?と思いながら見ていた。他マッツキャラと比較した可愛さならトップレベルだった。本当によかった。よいところしかなかった。)
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