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2021 立川談吉年末放談②

毎年恒例となりつつある
立川談吉さんの一年を振り返る年末放談。
コロナが今年ものさばり、思うように活動できなかった一年でしたが
昨年同様、zoomを利用したリモートでお話を聞くこととなりました。
色々なことに気を使わずにいられなかった2021年、
談吉さんにとってはどんな一年だったのでしょうか。
昨夜更新致しました前編に引き続き
聞き手は±3落語会事務局の八百枝です。

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前回は前半のほとんどをラーメンの話に取られてしまいましたが、
次第に新作の話に。

ー今年新作は何本作られたのですか?

談吉:1本ですね。なにか締切がないと作らないから。でもいいのができましたよ。「小さな幸せ」っていうのですけどね。
これはネタができなくて、もう明日だなーという時に外を歩いていたら、知り合いの女性同士が町内で出会って、一人が「こんにちわー」って言ったらもう片方の方が「よく見つけましたねー」って言ったんですよ。これ自然な会話だなと思って、「こんにちわー」のあとに「あれ太った?」とか言うのも自然な会話じゃないですか、これ使えるなと思って女性が主人公の噺をつくりました。
今まではこれを思いついたからこれを書こうみたいな感じだったんですけど、街の中をみて作るというのは新しい試みで少し広がったかなと思いましたね。「竹とんぼ」以来、自分の中でなかなか作れるものじゃないな、あの感じはというのがあったので。


ーあのペガサスを振り回してとばすやつですよね、あれはできた事自体奇跡みたいな噺ですよね。

談吉:あれは確かに奇跡でした。あれをやってしまったから超えることがなかなかできないんだよなぁと自分の中で思ったので。別の方法で作ってしまった。

—作ってしまったということは結構意外なことだったのでしょうか?

談吉:いつもならば、種があってそこに向かっていくにはどうしたらいいだろうか?という作り方をしていて、これは「煮込む日々」もそのように作っているんですけど、
最初はどうでもいいことを言って、テーマはこれです。っていうやりかたを今まではしていたんです。書きたいことを書くために先にどうでもいいことを書こうっていうことをやっていたんだけど、その書き方とは別のやり方、朗々と書き始めて何か思いつかないかなという書き方をやり始めて、案外できるなと思えてきたので、まぁできているかどうかは知らないけれど。
「小さな幸せ」ができなくてボツネタの写真…どこかにいっちゃったなぁ。

—ボツネタの画像?

談吉:ネタを書くために絵を描いてるんですよ。
カジキマグロの…、「偶然、横を泳いでいたカジキマグロ」のフレーズを思いついた時にこれはいけるな!と思ったんですけどね、これを落語にはできない…と思ってですね、そこは本当に悔しかったですね。カジキマグロをどうやって出そうか、思いついた画ではカジキマグロが尖った上顎でなにかスイッチを押っていうのを思い浮かんでいたんだけれど、なんせ水の中だからこれは難しい、いっそ怖い話にしてしまおうかなとも思ったんですけど、学校の怪談みたいな感じで振り返ったところにカジキマグロがいるみたいなものも考えたんですけど、なかなか…。私が思う面白い画を落語として出すのは難しいということを考えて、これは映像作品ならできるかもしれないけど、落語は無理なんだろうなと思ったんですよね。魚類の幽霊の噺は誰かが作れそうだし、いまいちになりそうだから。

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「偶然、横を泳いでいたカジキマグロ」を表現してくれました


ー絵を書いてネタをかいてるんですか?


談吉:絵を書いて作ってますね。何も出ないときは字を書いたりもしますけど。
ボツネタが見つかりましたけど見せられないくらいボツだな…悲しいなぁ。
他に仕草なんかもメモしてますね。手ぬぐいでパンをこねたり、扇子で魚の鱗をとったり、あ、なんか意味のわからないことも書いてありますよ。「竹の子ブラインドタッチ」…?。全く意味がわからなすぎますね。言葉が気に入っただけかもしれません。そんな言葉からもネタを作ったりします。新作の作り方をこういうふうに変えたり新作をやったことによって、古典が本当に変わってきているんですよね。今年の収穫は「穴泥」かなぁ。

ーそれは具体的にどのように感じたのですか。

談吉:好きな噺をやってみてまぁまぁちゃんとできるんじゃないかというところにいったのでそこかな。以前は好きな噺を結構敬遠したりすることもあったんですけど好きな噺にチャレンジできたなーっていうところですかね。

ーテレワーク独演会のときにネタおろしをすることが多く見受けられるのですが、それはなにか理由などあるのですか?

談吉:演ったことのない噺だからどんなふうになるんだろうって、ある程度はちゃんと良くなるように、酷くならないようには必ずしないといけないんだけど、ここまでどうやって持っていくのかなっていうのが自分の実験ではありますかね。テレワーク独演会は聞くことしかできないから音を大事にしないと。
音で演って難しそうだな駄目かなーとなったら、いくら仕草を鍛えたってどうにもならないので。だから音を楽しめなかったら見たってしょうがないっていうのかありますね。立川流って基本音ですから。
穴泥はテレワーク独演会でネタおろしをやって、舞台でも何度もかけて、やっと自分でも納得いく形になった。好きな噺ができない噺だったら辛いじゃないですか。だから好きな噺ができる噺になったから嬉しいっていうことですかね。
粗忽長屋もこの前久しぶりにやって結構いい感じになったなーと思ったんですけど、いい感じにできたときって、次にやるときが怖いんですよね。
多分できるんだろうというふうに思ったので、だとしたら別のを演って、別の勉強をしてから演ったほうがいいかなって。他の技術を取り入れてから演ったほうがいいかなっていうことなんで。ウケたからってまた同じ噺をやったって成長がないかなって思うのもあってですよ。

ー来年もテレワーク独演会は続けられますか?

談吉:来年もやりますよ。

ーもう少し告知は早くなりませんか?

談吉:いやねー、ネタが決まらなくてねー。

ーテレワーク独演会を楽しみにされている方も多いので、少しでも早く告知をお願いいたします。お客様を不安にさせないでください。

談吉:申し訳ないのですが、ネタがねー、決まらないのよねー。音だけというのもあるし、時間が短いからというのも含めて、ネタがねー。
面目ない。

ーーー


—来年の抱負などありますか?

談吉:抱負かー。もうちょっと新作を作ろうかな。

ー今年は一本でしたもんね。

談吉:新作派ではないんですけどね、一本以上は作ってもいいんじゃないかなー。とは思いますけど。あとね、「やかん」をやってみたいなぁというのはあります。

—以上?

談吉:駄目ですか?

—ま、まぁいいんですけど。遡ってみると、この2年で談吉さん自身、落語のやり方がかわったり、取り組み方を模索してみたりしてますよね。

談吉:いま、ゆっくりゆっくり成長している時期ですかね。

ー人が自由に闊歩できない時に成長しているというのがなかなか…。

談吉:皮肉ですよね。ほんとなかなか有識者に褒めてもらえないんだよな、(サンキュー)タツオさんしか褒めてくれない。

—でもタツオさんに褒められるなんて素晴らしいことですよ。観ている人に褒められるって最高じゃないですか。

談吉:浅田次郎、ローリー寺西あたりを狙って…いきたい。
あと、もっと遊びに行かないといけないなって。

—遊び…

談吉:一人で寝てるばかりでなく、人間として遊びたいなと思ってます。

これで今年の立川談吉の年末放談はおしまいです。
2021年最後の「煮込む日々」は大晦日21時頃更新となります。
是非そちらもお読み下さい。

最後に談吉さんからこの連載を読んで下さっている皆様へご挨拶がございます。最後までお読み頂き誠にありがとうございました。

ーーー

今年も談吉さんより「煮込む日々」読者の皆様に向けてメッセージをいただきました。目指せ100回!

来年もよろしくお願いします。

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±3落語会事務局
この連載は±3落語会事務局のウェブサイトにて掲載されているものです。 https://pm3rakugo.jimdofree.com