見出し画像

「私たちはライブでしか伝えることができない」めろん畑a go go〈2019/12/1〜2020/8/23〉

「ライブで伝える」って言い回しはよく目にし耳にするけれど、それは単に「一生懸命やります!」とか「全力でやります!」くらいの意味だと思っていた。
めろん畑と出会うまでは。

中村がライブのMCかなんかで言ってた「私たちはライブでしか伝えることができない」ってのがずっと刺さっている。
去年の12月の大塚でやったギュウ農だったかな。その日はめろん畑はラジオ含めて4現場あって、ギュウ農が3現場目で。
前回のギュウ農イベントに来ていた厄介客が来てるのが見えた。前回の時、オフィシャルのカメラマンの顔面に蹴り入れた奴でさ。あちこちの現場で暴れ回っては出禁になってる有名人らしく、めろん畑が暴れられると聞きつけてやってきたらしい。
確かにめろんのライブはレッキンが出来る荒れ場だけど、それでも最低限の秩序やルールってもんがオタク同士の信頼関係でもって成立してる。なんでもアリってわけじゃない。だもんで、俺は警戒してたんよ。
そしてめろん畑がスタートして、定番のレッキン曲がはじまる。徐々に興奮して厄介客がエスカレートしていくのを少し離れて見ていたのだが、そいつが周りにいた客に膝蹴りをした瞬間にブチ切れて胸倉掴みかかっていた。周りが止めてくれて殴り合いにはならなかったものの、ステージからもその様子はよく見えていただろう。
が、ライブ自体は止まることなくラストの曲のイントロを背中で聴きながら頭を冷やす為にフロアを出た。

1人外に出てタバコを吸っていた。
しばらくすると次の現場への移動の為にめろんのオタクやメンバーが出てきた。厄介客はまだ後のグループも見るのか出てこなかった。
数人のオタクと「さっきは悪かったね」とライブ中に取り乱したことを話していると、中村がトコトコと駆け寄ってきた。向こうから近づいてくるのは初めてだった。さっきの件の話かなと思って、謝ろうと身構えていると「あのね!ザコシの福山のモノマネ知ってる!?すっごい面白いの!」と、中村が大好きなハリウッド・ザコシショウの話をし始めた。これには面食らったが、中村はこういう子だ。「ライブでしか伝えられない」という言葉が脳裏に蘇った。言いたいことはあっても、あくまでアイドルと客という関係なのだ。友達じゃない。直接具体的なことには触れられない。肝心なことは何一つ言葉にできない。そういうもどかしい関係だ。
「最後の現場も来る?」「当たり前じゃん、いくよ」そんな会話をして自分たちは他のオタク達と電車に乗った。
ほどなくして最後の現場、荻窪クラブドクターに着き、その日の最後のライブが始まった。

何曲目だったろうか?ライブを見ている自分に、はっきりと声が聞こえてきた。
もちろん、歌詞でもない、MCでもない。なのに頭の中に「この人をこんな気持ちのまま帰すわけにはいかない!」「そうだね!」「今日あったイヤなこと全部ここで捨てていけ!」「私達が最高に楽しませるから!」はっきりそう聞こえた。中村だけじゃなく、他のメンバーからも。タマちゃんが、ゆふぃが、ルンルンの声が次々と頭の中に聞こえてきた。「私たちのライブを守ろうとしたんだね、ありがとう!」「楽しかった以外の気持ちでは帰さないからな!」
言葉にしなくても、歌とダンスと気迫で伝わってくる。
生まれて初めて「ライブで伝える」とはこういうことかと、ライブでここまで気持ちをはっきり伝えることが出来るのかと、驚きと喜びで胸が張り裂けそうだった。

3本目のライブにも関わらず、相変わらずのエネルギッシュなライブに、いつもの顔ぶれ、小さなライブハウスはその日最高の盛り上がりだった。
自分も彼女たちの気持ちに応えるべく、全力で楽しんだ。

今思えばただの幻聴だろう。メンバーだってその時そんなこと考えてなかったかもしれない。好きを拗らせた、「そんな風に思っていてくれたらいいな」という願望でしかないのかもしれない。
それでも、1人の客にそこまではっきりと幻聴を届けた、幻聴を聞くほどライブに酔わせたのは間違いなく彼女たちの力だ。めろん畑の「ライブでしか伝えられない」凄みをこの日はっきりと身体に感じた。

そしてそれは中村だけじゃなく、この新体制になっためろん畑メンバー全員も持っている力。先日のクアトロワンマンでは、旧メンバーのソロ曲を新メンバーのあみころと千世ちゃんが歌った。正直、そのまま封印してしまっても誰も文句は言わなかったと思う。どうしたって比較されてしまうし、旧メンバー推しの中には快く思わないオタクだっているかもしれない。それでも彼女らは果敢にチャレンジした。「私たちで前体制を超えていくんだ」「これが新しいめろん畑なんだ」と、彼女らの気持ちが飛び込んでくる。
ゆふぃ初のソロ曲でも、憑物が落ちたかのように堂々と、華々しく立ち振る舞う彼女から「もっと私を見てほしい!今最高に楽しい!」そんなオーラが溢れていた。
ルンルンもだ。ソロ曲でも自身の名前がフィーチャーされた曲でも「これが新しいめろんだよ!安心して!私たちはもう大丈夫だよ!」と言っているようだった。

地下アイドルはそのライブパフォーマンスの楽しさや激しさからライブアイドルとも呼ばれているけれど、めろん畑ほどライブアイドルと呼ぶにふさわしいグループはないと思う。まだ地下アイドルオタクになって1年とちょっと。見てきた現場はそう多くはないけれど、めろん畑に勝るライブ力を持つグループはいなかった。特別歌が上手いメンバーがいるわけでもない。高度なダンススキルを駆使するわけでもない。なのに彼女らのライブはここまで人を惹きつける力がある。

これから始まる全国ツアーで、日本中の、もっともっと沢山の人たちにそのライブを見て感じてほしい。画面越しでもあれだけ伝わるのだから、肉眼で見たら、きっともっとすごいことになるから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?