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30歳になる自分へ、長財布のオーダーをしてくださった方のお話
家具、革財布、金継ぎなど、いろんな創作活動をしています。
PLYLIST(プライリスト)の小尾口です。
今回の記事は30歳になるお客様自身のためにオーダーをいただいた
長財布のお話です。
打ち合わせから制作までを紹介したいと思います。
打ち合わせ
今回オーダーくださった方は実は奥さんのお友達です。
ありがたいことに、いろんなお土産を持ってお財布の打ち合わせに来てくれました。
今現在使っているお財布は大切な思い出のお財布ということで、
その形と同じものがいいということでした。
今回も、最初に「どんなお財布が欲しいのか」という希望を聞いて、それをノートにまとめていきました。
形はラウンドジップの長財布
小銭入れ
お札入れ
収納はなるべく多く
お札入れるスペースには仕切りが欲しい
刻印を何かしら入れたい
というのが基本の要望でした。
その後、革の色や糸の色など実物を見ていただき、どれにするか決めました。
ファスナーのテープ(布の部分)の色なんかの希望を聞きました。
こんなところで、この日の打ち合わせは終了しました。
打ち合わせ後もLINEでさらに詳細を詰める
打ち合わせをした後日、
「こういうのできたりするのかな?」
という、いろんなアイデアがお客様の中でふつふつと湧いてきたようです。
これは僕がものづくりしていてもよくあることです。
実際に素材やいろんなデザインを見たことで、
その場では頭の整理が追いついていなかったけど、
後日、頭が整理されてインスピレーションが湧いてくるみたいなやつです。
ということで、
うちの奥さんとお客様との間でさらにデザインのやりとりをしてもらいました。
お財布の外側と内側で、革の色を変えられるか
とか
仕切りのパーツを木にできるか
とか
刻印は木と革と両方に入れられるか
とか
お客様がデザインしたスケッチを刻印できるか
とか
カードの枚数はもう少し増やせないか
とか
小銭入れに小さなポケットを追加できるか
とか
結果的には、ほとんどの要望には応えられたんじゃないかと思います。
なるべくお客様と作る僕たちとのイメージのギャップがないようにかなり気をつけました。
LINEでこちらから革や木の写真を送ったり、
模型を作ってその写真を送ったりしました。
サイズ感や素材の質感がちゃんと伝わるように。
制作した模型
刻印については、
お客様がご自身でスケッチされたものをこちらで一度CADデータに変換したりしたので、
そこでバランスが崩れていないか確認してもらいました。
あと、木のパーツに刻印した際のイメージ画像を合成してお客様に提出したりもしました。
結果的には何回も修正依頼を受けましたが、
その甲斐あって、お客様には完成したお財布に本当に満足してもらえました。
制作
制作工程は今回はざっくり紹介していきます。
型紙から革や芯材を切り出します。
接着剤を縫って、芯材を革に貼り合わせます。
型くずれ防止のためです。
お客さまデザインの刻印。
きれいに押せて一安心。
PLYLISTでは、刻印デザインの自由度がかなり高いのが売りです。
文字だけでなく、お客様がデザインされた模様や絵なんかもOKです。
刻印のオーダーをくださった方には、
なんとこの刻印そのものも差し上げています。
おもしろい使い方としては、
刻印そのものは自分用のアクセサリーとして。
刻印を入れた革小物はプレゼント用に。
そんなすてきなオーダーもお受けしました。
↓の記事にてそのオーダーについて紹介しています。
今回のお財布のカード収納は縦型。
これがカードの取りやすさのポイントです。
今回のお財布はこんな感じのパーツで構成されています。
ファスナーをぐるっと貼り合わせて
小銭入れのポケットも縫い付けて、ファスナーを取り付けて貼り合わせます。
小銭入れにマチを縫い付けて、
内側パーツと外側パーツを縫い合わせれば完成。
完成
できあがりました。
この革はベジタブルタンニン鞣しのイタリアンレザーです。
シボ(革の表面の凹凸した表情)が特徴的な革です。
ほどよい艶としっとりとした肌触りがたまりません。
お客様に完成したお財布をお渡しした際に、
ずっとすべすべと撫でていらっしゃいました。
ゴールドのファスナーがチョコ色の革と相性抜群です。
ファスナーの引手は、PLYLISTオリジナルの真鍮製鎚目仕上げです。
これも僕が一つ一つ叩いたり削ったりして手作りしています。
光が乱反射してキラキラと光る様子や、
ちょっとボコボコとしたテクスチャが心地よくて、ずっと触っていたくなるような引手です。
中はこんな感じです。
小銭入れの位置が低いのがポイントです。
これによって
カードが見やすくなっています。
小銭入れのファスナー引手もPLYLIST製。
仕切りにはなんと「木」を使いました。
これは木工も革もやっているPLYLISTだからできることだと思います。
使用した木は北米産のアメリカンブラックチェリーです。
しかも、お客様がデザインした刻印入り。
裏側はお客様が飼っていらっしゃる猫のイラストの刻印です。
小銭入れにはお客様デザインの幾何学模様の刻印。
カードポケットが地味に使いやすいんです。
指をひっかけるとポケットが少し広がるように設計しています。
そのため、カードが取りやすい。
しかも、カードがとにかく見やすいです。
ポケットや小銭入れに邪魔されることがないからです。
横収納だと、カードのほとんどの部分がポケットに隠れてしまうんですが、
この縦収納はカード面積の半分くらいは見えます。
お誕生日ということで、ギフトラッピングもさせていただきました。
レザータグはほどいてから栞としてもお使いいただけます。
PLYLISTがオーダーメイドのお財布に込める想い
今までオーダーをもらったお財布には
1つとして同じものはありません。
「このお財布ずっと長いこと使っているんだけど、もうさすがにボロボロで買い換えたいんだー。でもなかなか思うようなお財布見つからないんだよねー。」
こんなお客様が多くいらっしゃいます。
PLYLISTでお財布をオーダーしてくださる方は、
モノを大切に扱い、一つのお財布を長く使っている方が多い傾向です。
「思うようなお財布が見つからない」という悩みは皆さん一緒ですが、
「理想のお財布」は皆さん違います。
ここでちょっと話は変わりますが、
PLYLIST(プライリスト)という屋号に込めた想いをお話ししたいと思います。
Ply(プライ)=重ね合わせる、撚り合わせる
Playlist(プレイリスト)=音楽の再生リスト(曲を再生する順番をリスト化したもの)
という二つの単語を組み合わせた造語です。
それぞれの価値観、生き方、理念、ライフスタイルに応じた
素材や技術、デザイン、アイデアの組み合わせリストを提案することで、
心から豊かな生活を送るために、少しでも役に立ちたい
そんな想いからこの名前を決めました。
音楽のように
その人にとってかけがえのない存在になるものを
そして、
暮らしと心を少しでも豊かにしてくれるものを
つくれるように、私はなりたいです。
PLYLISTという屋号は
お客様にできるかぎり寄り添ったものづくりをしたい
という想いが前提としてあります。
「なんか思うようなお財布が見つからない」
そんな人と一緒に、理想のお財布を見つけるお手伝いをさせていただくことが
PLYLISTのやりがいであったり、幸せだったりします。
職人や、お店に相談するというイメージよりも
友達とか知り合いに相談するような感覚でいてもらいたいです。
僕はあくまで理想のお財布を見つける旅の伴走者として
使う人の相談にのって
理想の形に近づけるお手伝いをする人
みたいなイメージです。
たかがお財布、と思われるかもしれませんが、
毎日使うものだからこそ、
一人一人の使い方も違うし、
こだわりがうまれやすいものだと思います。
毎日使うものだからこそ、素材にもかなりこだわっています。
質の高い革を使い、
質の高いファスナーを使い、
使う人の使い方に合わせた機能性を持ったものにしたい。
そういう想いがPLYLISTのものづくりにはあります。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
僕の作品やオーダーのものはSNSにも投稿しています。
制作風景や日常まで、基本毎日アップしています。
もし気になる方いらっしゃいましたら、ぜひフォローしていただけるととてもうれしいです。
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