高校の後輩君から漆塗りの木の婚約指輪のオーダーをいただきました
長野県で妻と二人で家具やお財布などを作っています。
PLYLIST(プライリスト)の小尾口(こおぐち)です。
今回は高校の後輩君から
「結婚することになったので、婚約指輪を作って欲しいです」という
とてもありがたく、めでたいお仕事をさせていただきましたので、
そのお話です。
実は最初はお断りしようと思っていました
結婚することになりましたという報告を2021年の年末にいただき、
「先輩に結婚指輪作って欲しいんです」
という相談を受けました。
婚約指輪や結婚指輪といえば金・銀・プラチナ。
婚約指輪を作って欲しいという相談が来たとき、
僕はそんな想像をしていました。
僕は木や革を扱うことはできるけど、彫金とかそういうのは未経験だしなー・・・
しかも一生ものの結婚指輪ですよ。
未経験者が引き受けるには荷が重すぎる・・・
「僕より他の人が適任では?」と思い、
せっかく相談してもらったけど、やんわりと断ろうかと思いました。
しかし、メッセージを送って数日後
「実は彼女が先輩に作っていただきたいと言っています。」
とメッセージをいただきました。
大切な指輪だからこそ、知らない誰かが作った指輪ではなく、
顔が分かっていて、どんな人がどういうふうに作るのか。
どんな想いを込めて作ってくれるか。
そういうのが分かるものが欲しい
という強烈な想いが伝わるメッセージをいただきました。
そしてどうやら、
貴金属類の指輪ではなく、木や革を使って指輪を作って欲しいということでした。
これはもう断るなんてことはできない。
ぜひ作らせてくださいと返事しました。
打ち合わせ
年明けに打ち合わせをしました。
彼女さんと結婚することは決まっているということですが、
正式なプロポーズはまだということでした。
プロポーズは2月。
その日までになんとか準備して欲しいということでした。
そして、よくよく話を聞いてみると、
どうやら結婚指輪ではなく、婚約指輪ということがわかりました。
結婚指輪はまた改めて用意するというお話でした。
ということで、今回僕に作って欲しいのは婚約指輪を一つ。
そして指輪を入れるケース。
ということでした。
婚約指輪と聞いて、なんだかちょっと安心しました。
婚約指輪ならちょっと遊びのあるものでもいいかもしれないなと
僕の中でなんだかすこし余裕が生まれたのかもしれません。
それでも人生の中でかなり重要なアイテムであることに変わりないのですが。
さて、打ち合わせでどんなことを話したかですが
まずはいろいろと素材の話をしました。
木の素材のこと。
革の素材のこと。
それぞれの特徴とかをお伝えした上で、
どんなデザインの指輪ができそうかを写真で送りました。
指輪には木を使い、漆を塗るのが良さそうだということになりました。
桜の木に貝を3ついれて、
色はターコイズのような青と緑の混ざったような感じ。
内側は木の木目が見えるように。
指輪のケースはお任せ。
ではでは作っていきますよ。
制作スタートの前に治具(ジグ)作り
まずは指輪を作るのに必要な道具作りから。
指輪のサイズをあらかじめ聞いていたので、
そのサイズに合うように木の丸棒を作ったり、
指輪を咥えて内側を研磨しやすいようにする道具を作りました。
ものづくりって、意外と準備に時間かかります。
特に、オーダーメイドのものを作るって、
デザイン→設計→材料準備→型や治具作り→制作
という工程をオーダーのたびにやらないといけないので
結構大変。
量産のものづくりだと、デザインから治具作りまでは1回やればいいだけなので、
そこで発生したコストは
生産量で割れば小さくできます。
しかし、オーダーメイドのものは基本1つしか作らないので
丸々準備段階で発生したコストが乗っかり、値段が高くなってしまいます。
個人的にはなるべく価格を抑えたいという思いはあるんですが、
いかんせん、僕と家族の生活もあるので・・・
ようやく制作
まずは薄く割いた木を巻き付けて指輪にしてきます。
木の厚みは0.2mm。
こんな薄いシートみたいな木をクルクルと巻いて指輪を作るのには理由があります。
木の塊を削ったり穴をあけて指輪を作ると、
ある特定の方向に力が加わった時に割れやすいです。
どうしても木には繊維の方向というものがあるからです。
金属の指輪のような直径2〜4mmの太さで
木をそのまま削って作ろうとしたら
強度的に不安です。
かと言って、実用レベルの強度の指輪にしてしまうと、
かなりゴツいものになってしまいます。
ということで、
PLYLISTお得意の突板積層で指輪を作ります。
0.2mmの薄さの桜の突板を10層重ねて
厚み2mmくらい
幅5mmくらいの指輪にします。
ちなみに過去には
厚み1mm
幅2mmの指輪も作りましたが
この作り方なら十分強度がありました。
指輪を接着している間に箱も制作を進めます。
指輪の接着ができたところで、
次は厚みや幅をきっちりそろえます。
そしたら貝を埋める位置をマーキング
指輪と同じく、ケースにも貝を埋めます。
指輪と同じくこちらも3つ。
貝の大きさは直径2mmとかなり小さいです。
結構何回も落として探すのに苦労しました・・・
そんな感じで作業を進めて、
漆を塗る工程までいきました。
しかし、作業に集中するあまり、
漆を塗っている工程の写真を撮り忘れてしまいました・・・
すみません。
ということで、ここからいきなり完成です笑
完成
結果として
木、漆、革、貝と
いろんな素材を使って作りました。
婚約指輪としてはかなりレアなものだと思います。
そして箱もなかなか手が込んだものになりました。
趣味ではじめた木工ですが、
本格的に仕事にしたいと志した当初は
こういう小物を作りたいと思っていました。
象嵌をいれた小さい箱や
それこそ指輪なんかです。
奥さんにも木の指輪をプレゼントしたりしてました。
もはやしばらくそういう細々した小物とは縁遠い仕事をしてましたが、
このタイミングで初心に思い描いていた通りの仕事をいただくことができて
本当に嬉しかったです。
作らせていただき、本当にありがとうございました。
末永くお幸せに。
婚約指輪という記念になるものにも関わらず、
僕にこんなチャレンジをさせてくれてありがとうございました。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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