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PLYLISTのお財布は紙のような薄さの木を9枚重ねているらしい
長野県で妻と二人で家具やお財布などを作っています。PLYLIST(プライリスト)の小尾口(こおぐち)です。
タイトルが謎すぎてPLYLISTのことを知らない方は「?」しか浮かばないと思います。
ごめんなさい。
タイトル写真にあるような
お財布に木を使ったり、カードケースに木を使ったり
そんな作品を作って販売しています。
今回の記事はお財布やカードウォレットなどに使用している「木」のことについてお話ししようと思います。
なんてことのない木の板に見えますが、
実は0.2mmという紙のように薄い木を9枚重ねて
2mmの厚みの木の板を自分で作っています。
なぜそんなことをしているのか
これからお話しようと思います。
どんなふうに作っているのか?
PLYLISTのYouTubeチャンネルに制作風景の動画をあげています。
そちらをご覧いただくのが一番イメージしやすいかと思います。
ついでにチャンネル登録もしていただけるととてもうれしいです!
木は薄いと割れやすく欠けやすい、そして反りやすい
木という素材は皆さんが想像しているよりも生き物に近いです。
気温や湿度の変化で膨張したり縮んだりします。
そして、真っ平な板も時間と共に歪んだり、反ったりします。
そしてその歪み具合は木によって個体差がめちゃくちゃ大きいです。
さらに、板も「木のどこの部分か」によって縮み方が違ったりします。
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木は繊維の方向というものがあるので、
割れやすい方向と、割れにくい方向があります。
木の立っている姿を想像していただければわかると思いますが、
木は土から水を吸い上げて成長するので、
繊維の方向は地面から空に向かっています。
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木は厚みが薄いと割れやすいです。
パキッと瓦割りみたいにいってしまいます。
ということで
お財布に使う場合、
木の厚みはなるべく薄くしたいのですが(デザイン的に)、
薄くすれば薄くするほど強度が弱く、割れやすくなってしまう。
さらに、お財布は中身を入れると膨らむので、
その膨らみに対しても柔軟に対応して欲しいわけです。
決して割れてはいけない。
そして、極めつけは縫い穴をあけないといけないということです。
僕のお財布は木にも縫い穴をあけて、革と一緒に縫い合わせます。
接着剤で接着するだけでもいいんですが、
デザイン的にもステッチは欲しいし、
接着剤だけで革という柔軟な素材に木が追従しきれない気がします。
あとは、接着剤がだんだんと劣化して、剥がれてくることも結構よくあります。
これは絶対に避けたいので縫い合わせています。
しかし、縫い合わせるということは縫い穴をあけるということです。
僕の革製品は基本的に3mmピッチで縫っています。
手縫いにしては細かい方です。
針が通る径の穴を3mmの間隔であけると、
残った木の部分はわずか2mmほど。
つまり、板の外周は
厚さ2mm×幅2mmの木の集合だけでできているということです。
めちゃくちゃ強度的に華奢なデザインなんです。
これを一枚の板で作ろうとすると、
導管の大きい木材(例えばナラなど)で作ろうとすると、
割れるリスクが結構大きいです。
例えば、落としたりしたときに衝撃で縫い穴のところなんかは
パキッといきやすいです。
これのリスクを減らし、
強度を高めるために考えたのが、
突板を積層するという方法です。
突板を積層するメリット
そもそも突板(つきいた)とは
木を薄くスライスしたもので、
薄さは0.2mmくらいの薄いものから
0.6mmくらいの少し厚めのものまであります。
0.2mmの薄さの木は
もはや木というよりは紙のようでペラペラとしています。
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PLYLISTでは、この0.2mmの突板を9枚重ねて
一枚の板を作っています。
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積層する時は、1枚ずつ繊維の方向を90度入れ替えながら積層しています。
積層するメリットは簡単にまとめると以下の4点です。
反りにくい
割れにくい
曲げようとする力に強い
簡単に修理できる時もある
限りなく薄い木の板を繊維の方向を変えながら何枚も重ねることで、
強度が上がり反りにくくなります。
また、落として角をぶつけてしまった場合でも、
欠けることなく木の繊維が潰れるだけで済むケースもありました。(経験済み)
この時は少し湿らせてアイロンをあてるだけで直りました。
普通に中身を入れた状態でアスファルトに勢いよく落としたので、
一枚の木で作っていたらおそらく割れるか欠けていただろうという感じです。
そうなると、アイロンで修復とかのレベルでは済まない話なので
突板を積層していてよかったなと思いました。
ではなぜ0.2mmの突板でやるのか
0.6mmではだめなのか?
ということですが、
単純に0.6mmの突板の流通量がかなり少ないというのが1つの原因です。
あとは、0.2mmのほうが仕上がりの厚みのコントロールがしやすい
というのが理由です。
0.2mm刻みで厚みを調整できるほうが、融通が利きます。
実は積層した突板をよく見ると、
段差があるのがお分りいただけますでしょうか?
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これは縫った糸がいろんなものに触れて擦り切れていまうのを
少しでも予防するために段差をつけています。
あとは装飾的な意味もあります。
木工的にはシャクリ面っていったりします。
革を縫う場合、縫い終わったあとに糸をハンマーで叩くと少し沈み込ませることができます。(革はやわらかいので)
これによって摩擦による糸の擦り切れを少し予防することができるのですが、
木の場合は革のようにはいかないので段差を付けているということです。
そして、この段差を付けようと思った場合、
0.6mmの突板ではちょっと困るわけです。
この辺はややこしい理由なので割愛しますが。
突板を積層するデメリット
それは圧倒的手間ということに尽きます。
時間とコストがめっちゃかかる。
これゆえにPLYLISTの木と革を組み合わせた商品は高額になっているといっても過言ではありません。
しかし、作るからには中途半端なものづくりはしたくないのです。
作る時間を1日減らすことで安く作ることができたとしても、
その減らした工程が原因で商品の寿命が数年短くなることって世の中結構あるような気がしています。
僕は1日余計に多くかかったとしても、
製品の寿命を少しでも伸ばせるなら、
なるべく丁寧にものを作ることを心掛けたいんです。
正直、見た目は1枚の木と変わらないので、
パッと見のクオリティはなにも変わらないのですが、
全く見えないところに手間暇かかっているということです。
これは正直、いろんな考え方の人がいると思うので、
職人気質の売るのが下手くそな人がやっている自己満と捉えられても
しょうがないかなって思います。
結局、作っても高すぎて誰も買ってくれなかったら意味ないので。
ということで、PLYLISTの商品のなかにも、
この積層突板を使わずに一枚の木を使っている商品もあります。
それはパスケースです。
パスケースはカードを2枚しか収納しない設計になっているので、
膨らむこともないし、
木の部分はカードに挟まれているので、曲げにも多少強いです。
ということで、こちらはコスト削減を優先してなるべく低価格で販売できるようにしました。
そして、こちらの商品は
木の種類と革の種類をセミオーダーで選んでいただくことができます。
お好きな文字を刻印することも可能になっています。
低価格でオーダーメイドをする楽しさ、ワクワクを体験をしていただけたらと思っています。
積層した突板を使った商品はどんなものがあるの?
2022年3月現在はカードウォレットとミニラウンドジップウォレットの2つが定番商品ではあります。
あとはオーダーメイドでお財布を作らせていただいたときに使っています。
定番商品はPLYLISTのウェブサイトにありますので、
ご興味ある方はのぞいてみてください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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