【バックギャモン】初手21とフリードロップ

まずは拙稿より、フリードロップおよび初手41に関する内容を紹介します。

今回は「相手にフリードロップの権利がある状態で初手21を振った場合」を検討します。

フリードロップとは?

前述のフリードロップ考にも書いていますが、フリードロップとはポイントマッチにだけ存在するテクニックで、「ポストクロフォード(残り1点でダブルをする権利が発生している状態)において、最初にダブルする権利が発生した相手がダブルをした場合にパスをすること」を指します。ダブルをテイクすると必ず2点単位になり、残りの点数が偶数の場合それを奇数にしても影響がないため発生するもので、2away(残り2点)や4awayなど偶数awayの場合に発生する権利です。ただしマッチを通じて1回しか権利がありません。奇数awayのときはフリードロップにはならず、ポストクロフォードで奇数away→偶数awayになることはほとんどないからです(パスをしてもいいことがない。例外はある)。

このフリードロップについて、権利がある場合は「勝率が50%未満の場合はパスする」というのが原則と覚えていいでしょう。8awayくらいから短い場合は厳しく使っていくのも重要です。

ダブルは難しいことを考えるくらいなら最初の機会で打ってしまいましょう。ではテイクパスの判断はどうでしょうか。50%という判断が非常に難しいですが、最低限「相手よりも2段階くらいいい目を振れないといけない」と覚えていいでしょう。
・小さいゾロ目で自陣強化
・中くらいのゾロ目でアンカー前進やアウター強化(4ゾロは制限あり)
・大きなゾロ目で前に進む(5ゾロは制限あり)
・自陣側の駒をヒットする
・自陣インナーをポイントオンする
・相手の初手が悪く(51、52)、自分のレスポンスが31
このくらいでないとテイクできません。後手になるとそれくらいには不利です。

初手21考

こちらは拙稿「バックギャモン初手の話(前編)」をご参照ください。

初手21は2通りだけ覚えればよいです。2の目では13/11と落とし、1の目で「24/23」と割っていくスプリットと、「6/5」とスロットする手があります。明確にこの2つに差があることは「初手41スロットを使う」でも書いた通り、スロットすると「勝率とギャモン勝ちは上がるが、ギャモン負けが増える」という特徴があります。したがって大雑把に「アンリミテッドではスロット、ポイントマッチは、負けているならスロット、勝っていればスプリット」と覚えるくらいでいいでしょう。
・スロットは運用が難しくなる場合があり、簡単にしたいならスプリットのほうがいいかもしれません。

初手21とフリードロップ

今回はわかりやすく、2awayとしましょう(5ポイントマッチ3-4)。負けている側が21を振った場合の話です。

(1)スプリットの場合

マッチポイントの白から見て、全21通りの目を検討します。
・陣地強化やランが有利になる66、44、33、22
・自陣強化はできる11
・アウターをヒットできる64(2ポイントへのオンは悪手なので注意)
・ランで前に進める55
・自陣が強くなる31、61、42
ここまでがテイク可能です。同じ自陣を作るでも53ではパスになります。61や42ではかなりきわどいラインなので、テイクするためには最低限ゾロ目かアウターヒットは欲しいところです。31はいい目なので21からのレスポンスであればテイクできるでしょう。

(2)スロットの場合

同じようにいい目を見ていきます。
・55以外のゾロ目はすべてOK。11を振った場合はヒットせず、5ポイントと7ポイントを作る定跡通りで良い(ヒットはブランダー)。
・11以外の4でのヒットもすべてOK。
ここまではテイクできます。55はランで勝っているだけで先に5ポイントを作られてしまいそうなので不利になります。

それでは解析を見てみます。

スプリットが最善で、スロットはエラーとのこと。ところが勝率を見てみると、スプリットは50.0%でスロットは50.5%とスロットのほうが高い。これはどういうことなのか?

状況を整理しましょう。
スプリットをした場合、テイクされる目は9通り~13通り、残りはパスです。たいしてスロットした場合、テイクできる目は17通り(5以外のゾロ目と44以外の4、31。31はメイクではなくヒットです)。実はスプリットしたほうがテイクされにくいということになります。テイクされにくいということはパスしてもらいやすい、それはフリードロップの権利を消化してもらえるということにもなるので結構強くなります。もちろんこのスコアでも消化してもらって良く、よっぽどTooGoodではない限りはダブルパスを取ってしまいましょう。
ところで、「これをダブルすると確実にパスされるからもう少し引っ張るか」という考えもあります。が、それは「ギャモントライと同じ」ということになるのでこの序盤で考えるほどではありません。したがって黙ってダブルパスを取るで問題ないでしょう(よっぽど差のある目でTooGoodみたいになったら振ってみる、はOK)。

ではなぜスロットのほうが勝率が高くなるのか?これは「ギャモン勝ちの増加とギャモン負けの増加」が影響しています。4でヒットされなければ大体5ポイントを作ることはできそうなので相当いい形を作って戦えます。これはギャモン勝ちの増加にも通じます。逆に4でヒットされるとすべて不利になります。この期待値をすべて計算するとややスロットが良くなる、ということです。スロットは性質上期待値の上下差が大きくなります。通常はこの考えで問題ないのですが、今回はフリードロップの権利があるため、これを使わせるためにはスプリットをするほうが良い、ということになります。どれだけ期待値が高いか、ではなく、50%を超えている可能性がどれだけあるか、が重要ということになります。

以上から、フリードロップの権利がある相手に対して初手21を振った場合はスプリットのほうが優れている、ということになるわけです。

さて、では41ではどうでしょう?

同じ理由でスプリットですね。

参考までに、フリードロップがないポストクロフォード(奇数away)の場合は単純に期待値が高い手のほうが良く、21、41ともにスロットが最善となります。

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