【バックギャモン】マニラバックギャモン会 vs パトリックさん
世界で遊ばれているバックギャモン、フィリピンにもプレイヤーがいます。何度も来日しているLITOさんが有名でしょう。今は日本人のプレイヤーもおり、LITOさんとともにバックギャモン会を不定期開催しているほどです。その1人、中田さんがいつもプレイしているというパトリックさんとの7ポイントマッチを撮影付き(棋譜入れあり)で対戦したものがありますので、その中からいくつかポジションを紹介します。
なお、今回は自分のポジションだけを取り上げます。
検討
ポジション1 白 Saito 0-4 黒 Patrick 7ポイントマッチ 白の52はどうする?
相手のアウターが2か所のアイランド(3枚目のスペアがあるポイントもブロットもアウターにない状態)、そしてこちらも2か所のアイランド、であれば相手に先に動いてもらったほうがいいので、6の強制がないのであれば自陣で耐える6ポイント崩しを指しましょう。以上解説終わり。
……はい、実戦は18ポイント崩して130点のブランダーです。ランで負けているわけでもないし、通ったらうれしい方にしておきたいと思ったんですが、アイランドという形が悪いので耐える、でいいでしょう。いわゆる「大阪条例」の誤用とも言える悪手でした。
・大阪条例:「待ち構える側は自陣を崩してはいけない」という格言。大阪のプレイヤーが提唱したと言われているらしい。
参考図
これだと黒に耐える余地が出てくるので13/6や18/13 18/16がベストになります。
実戦はちゃんとこれをとがめられる54を振られて大ピンチになりますが、その後飛び出すことができてダブルテイク、そしてレースになります。
ポジション2 白 Saito 0-4 黒 Patrick 7ポイントマッチ 白の4倍キューブアクションは?
白からの4倍キューブはいわゆる「キューブデッド」という状態です。キューブデッドとなるダブルを打つ権利がある場合は「どうなったらダブルできるか」を常に考えないといけません。それではここではどうなったら4倍を打てるか考えます。
(1)ダブルする側
・ゲインは「2-4のマッチ勝率」と「4-4のマッチ勝率」の差になります。それぞれ35%と50%なので15%です。
・リスクは「0-6cのマッチ勝率」と「マッチ負け」の差になりますので0-6のマッチ勝率がそのままリスクです。これは9%になります。
→以上から、ダブルに必要な勝率は9/(15+9)≒38%となります。
おや?38%でダブルできてしまう?であればこれは余裕でダブルだねぇ。ちゃんと考えないとダメでした(どうみても38%はあるからね)。
ついでに、ダブルを受ける側も考えます。
(2)ダブルを受ける側
・パスすると4-2となり、マッチ勝率は65%。
・テイクして勝つとマッチ勝ち。マッチ勝率100%。
・テイクして負けると4-4。マッチ勝率50%。
以上から、ゲインはパスしたときとテイクして勝った時の差で35%、リスクはパスしたときの勝率とテイクして負けた時の差で15%、よってテイクできる勝率は15/(35+15)=30%、以上から勝率30%あればテイクできるということになります。
ダブルする側から見れば、38%~70%がダブルテイクのゾーンになります。あとは一手でパスになるマーケットルーザーがどれだけあるかですが、終盤も終盤なこの局面ではそれなりのマーケットルーザーがありそうです。よってダブルしても問題ないと言えます(先が長い展開なら1手2手引っ張ってもマーケットルーズしないので引っ張っても問題ないことが多い)。
ポジション3 白 Saito 0-6c 黒 Patrick 7ポイントマッチ 白の41はどうする?
これをノータイムでダブルタイガーできるようになれば中級卒業です。はい、当然ノータイムでダブルタイガーやっています。
まず1の目では6/5*のヒットをしましょう。ランで勝っているわけでもないし簡単にハイアンカーを取らせたくないのでヒットしたいです。
それがわかれば残りの4でも8/4*とヒットしたくなります。ハイアンカーを取られたくないので。
それに加えて、相手のアウターに駒が増えているのでこれらに仕事をさせないという意味合いもありかなりダブルタイガーが支持されます。
5ポイントと4ポイントに2枚ブロットがある形は、ポイントオンがあれば大体ポイントオンですが、ダブルタイガーがあるときはダブルタイガーも考えるのが良いでしょう。
実戦のダブルタイガーはセカンドの24/20 6/5*を期待値で70点上回る好手です。
ポジション4 白 Saito 3-6 黒 Patrick 7ポイントマッチ 白の32はどうする?
重要なのは「黙って51や44を振られると終わる」ということです。何もせず5プライムを簡単に作られてはいけない、また、ポイントオンでなければ自陣も強いのでリターンもあることから頑張れる、よって20にはかなり行きたい。しかし2は9/7しかない。これで果たしていいのか?
実はこれがベスト。とにかく23をキープする意味がないので出ていくようにしなければいけません。
実は同じ間違いを数手前にやっています。
こんなの23/14とやるしかないやんか…なんで18/9をやった?これはダメですね。多分、飛び出せないと勘違いしたのかもしれません。
ポジション5 白 Saito 3-6 黒 Patrick 7ポイントマッチ 白の64はどうする?
22/12のような何もしていない手は排除しましょう。残るは16メイクか20/10のヒットか。
ここは計算しなくてもランで勝っているし、黒の形も良くない(穴が2か所あるので上がるときに損しやすい)し、もうギャモン勝ちは見込めないし、黙って16ポイントをメイクする手が最善です。実戦は思わずノータイムでヒットしてしまい85点のブランダー。これはやった後で明らかに「悪かった」と思った1手でした。
試合は0-6からまくって7-6で勝利。薄氷の勝利でした。PRは6.1、自分の平均よりもちょっと悪いですね。
パトリックさん
中田さんから話を聞く限りではとても頭が良いので、計算とかは何も問題ないでしょう。あとは「4点取りたいときは4点取れるように頑張る」というのを目指すといいかもしれないですね。4点取るには「ダブルギャモンを取る」か「4倍シングルで勝つ」かですが、ほとんどが前者です。「ある程度勝率があって、ギャモンも20%以上取れそう」というところでは4点取りに行くダブルを打つというのが有力になります。これを見極めるためにはポイントマッチよりも「アンリミテッド・ジャコビールール」をやることをお勧めしたいです。ジャコビールールは「ダブルが動かなければギャモン勝ちが認められない」というもので、まさに4点を目指すルールです。また「最善が1つに定まる」のもいいところで、ポイントマッチはスコア状況によって全然変わってしまうので非常に難しいです。まずはアンリミテッドで感覚をつかむのが良いかと思います。