【バックギャモン】ふらっと スペシャルマッチ 向井慧vs望月正行
お笑い芸人コンビ、パンサーの向井慧さんが「バックギャモンにはまっている」とラジオで発言してから実現した向井さんと日本、いや、世界バックギャモン界のスーパーヒーロー望月正行プロとのスペシャルマッチが本日TBSラジオYouTubeチャンネルで配信されました。1週間(7/2まで)アーカイブされるようですので視聴してみてください。
私は後追いでしたが視聴することができました。今回はその中から私が(興味として)気になった局面を中心に4つのポジションを紹介します。
今回のルールは「向井さんが望月さん相手に、1ポイントマッチ(DMP)3本勝負を1本でも勝てば勝利」というものです。ハンデ戦と言えばハンデ戦となります。私は向井さんの勝率は30%程度と思っていたので、3本勝負であれば65%くらい勝ちそうだと思っていましたが、結論から言えばそれよりもはるかに上に見えました。普通に(ちょっと覚えることを覚えれば)できる側の人でした。いやぁ、強いなぁ。
ポジション検討
ポジション1 1試合目 白64はどうする?
黒が初手64を振っての2手目で白も64を振りました。
まず「初手64」についてです。これは3通りあり、実戦の24/14、また、相手を動かす「アクションプレイ」と呼ばれる24/18 13/9、そして2ポイントを作る8/2 6/2の3通りがあります。すべて特徴が異なる手で、今回のルール、DMPでは望月さんの選択した24/14が最善になります。2さえ振られなければ先手で逃げたリードを生かしてのランニングゲームで有利にできるからです。白は2を振れれば良かったのですが振れずに64です。基本的に2手目も初手の定跡を使うことができます。2でヒットできなかったので初手定跡のいずれかを使うことになりそうです。まず24/14の飛び出しは排除しましょう。相手が有利なランニングゲームに自分から飛び込んでいくこと、2と3の20通りでヒットされることからあまり得していません。そこでアクションプレイか2ポイントメイクですが、基本は2ポイントメイクを考えればOKです。相手が有利な展開にしないほうがいいのでランニングと別のプランにすること、また相手の最後のバックマンに(わずかながら)圧力をかけられることから2ポイントメイクが優勢になります。ところが2ポイントメイクはギャモン勝ちを狙うプランでありDMPの方針には合いません。したがって24/18 13/9のアクションプレイがわずかながら最善となります。が、どちらでも問題はないでしょう。実戦は2ポイントメイクを指し、これが起点になってブリッツが成功、きれいにクローズアウトを達成します
ポジション2 1試合目 白の51はどうする?
綺麗にクローズアウトしてからのウイニングロードです。ここは細心の注意を払いたいところです。まず6/1は排除しましょう。基本的に後ろに駒がいたほうが自由が利くのでいい形をキープしやすいです。では10から入れるか9から入れるか、です。ここで考えることは「大きなゾロ目を振った時に悪い形にならないこと」です。自陣側にのみ駒がある場合、「後ろの4枚が消えたときに悪い形にならないこと」を考えていけばOKです。まずは10/5 9/8と基本通り後ろから大きな目を動いていく、をやってみます。
ここで66や55を振ると…
これは極悪ですね…基本的に後ろから「3枚2枚2枚」の形は極悪とされます。したがって1通りでもこのような形にならないようにした方が良いでしょう。
ではどうするか?10/5をやるとして、残りの1を5/4をやってみましょう。
66を振って後ろ4枚を消すと後ろから2枚3枚。この形は(次の目にもよるが)悪い形とは言えません。55でも悪い形にはなりませんし、十分といえます。このように大きなゾロ目や65を振って悪い形にならない形を目指していきましょう。ここでは9/4 6/5もよく、これをやっていれば安全にギャモンを取れるでしょう。
格言?「クローズアウトしても勝ちではない」
ポジション3 2試合目 白の65はどうする?
65以外の6は悪い目ではないのによりにもよって相方は5。こういうの本当に困るんですよね。候補手がいくつかありますのでそれぞれ紹介します。
(1)13/8 13/7
ブロットを1枚だけにしていますがショット数が多すぎ。相手の悪い目もあまりないので得をしている感じはしません。これをやれる要素があるとすれば18ポイントのアンカーを持っていることは13ポイントの駒を勝ちを下げるのでやれる理由がないわけではないのですが、やはりいいことは少なそうなので他にいい手がないかを考えてみることにしましょう。
(2)13/2
実はヒットされる目が1しかないので1のデュプリケーション(いい目を被らせて相手のいい目を減らすテクニック)が利いているのですが、実は54、63、44、66でもヒットされるので17通りも当たります。もうちょっと何かないか考えてみましょう。
(3)10/4* 6/1*
では5で6/1*とヒットする手はどうでしょうか。そうすると6の目はどうするの?となってしまいそうです。どれも中途半端に見えるのですが、実は10/4*のヒットがあります。ダブルヒットはAny1とAny4、あと2ゾロの21通り当たりますが、ヒットされない6の目はすべて得をします。そうでなくてもヒットされない目はゾロ目以外は全部得をしそうです。そういうこともあり10/4* 6/1*のダブルヒットがベストになります。このように「2枚のインナーをさらしてヒットする手」を「ダブルタイガー」と呼びます。かなり「肉を切らせて骨を断つ」という戦いになるので勇気がいりますが、効果的にやることができれば上級者の仲間入りです。
なおこれ以外の手でヒットするのはあまり得をしていません。そもそもヒットされるのがきついので、こうなったら「通ったら得」という手はどうか、というのを考えてみるとこういう手も見えるようになります。
ポジション4 3試合目 白の53はどうする?
途中はフルプライムを作っていて優勢だったのですが、1回ヒットされてからいろいろと崩すことになり図の形です。ここで振った53は、ベテランギャモナーであればノータイムで9/1*とヒットすることでしょう。ヒットしないで1を振られると「31バックゲーム」という形になり、黒に相当な勝率が生まれます。実戦は14/9 12/9。経験が浅いのでこういう形に慣れていないというのはありますね。その後注文通り1を振った黒がねじり合いの末に勝利です。
バックゲームを簡単に許さない方法は2つあります。1つは純粋なプライムを作ること、もう1つは足場になり得るブロットをヒットして払うことです。今回はこの後者の考え方が使えます。
では出目を変えて、52ではどうでしょうか。実はこれでも8/1*のヒットをするべきです。7メイクでセミプライムを作れるのですが6を振られるとなんでもありません。2ポイントをメイクしていることが大きく影響しています。
フルプライムを作れるし、1ポイントをヒットもできる。こういう時はどちらをやってもOKです。
今回はDMPだが
実はふらっとの企画「協会マッチング」でJBSが紹介されたその日の夜、代官山の例会に番組関係者がいらっしゃいました。そこで「ダブリングキューブ」の話をしていました。向井さんはその時ダブリングキューブを使った試合をしたことはないとのこと。これを使うようになるとより戦略の幅が広がるので面白さ倍増どころか10倍、100倍にもなります。もちろんその分考えることが多くなるため難しくもなりますが、頭脳フル回転で楽しめることでしょう。そうするといよいよ世界も目指せるようになります。向井さんだけではなく、今回の試合を視聴された皆様も、とても面白いゲームなので一度触れてみてはいかがでしょうか。