【バックギャモン】ダブルタイガーを考える

ダブルタイガーとは何か

ダブルタイガーとは、自陣に2枚のブロットを置いてダブルヒットすることを指します。「ダブルヒットは虎」という格言がありますが、単なるダブルヒットではなく自陣に2枚ブロットを置くのでかなりなリスクを伴います。
それでもダブルタイガーをするべき局面というものが存在しているので、今回は「ダブルタイガー」について簡単な考え方を書いてみようと思います。
※必ずしもわかりきっているわけではないので、誤りがありましたらご容赦ください

基本1 確率編

ダブルタイガーをした後の局面は、例えば下の図のようになっているはずです。

インナーに2枚撒いてバーに2枚打ち上げている、これがダブルタイガーの形です(打ち上げている枚数は3枚以上の場合もあり)。これがヒットされるのは20通りです(X1、X5のすべて)。場合によってはゾロ目の具合で1通りくらい増えることはありますが、大体20通りと見ていいでしょう。これは約55%になるので、半分以上の確率で1枚は戻されるということになります。
これはつまり「55%でリターンされるリスクを負ってでもやる価値がある場合はダブルタイガーをやる」とも言えます。そのリスクを負えるだけの価値がある、ということです。

基本2 ヒット

当然ヒットについての基本も抑えておかないといけません。
ヒットの効果は主に以下の通りです。
(1)相手の駒を戻す
これはわかりやすいですね。相手を戻してゴールを遅らせる効果があります。
(2)相手の足を止める・出目に制約を与える
ヒットすると必ず片目でエンターしないといけないので相手の動きに制約を与えることができます。たとえ1通りでもダンスをすれば足を完全に止めることも可能です。

実際に見てみる

図1 白の41はどうする?

「初手1でスプリットした場合の2手目41」は、6/2* 2/1*のダブルヒットが基本です。4で13/9としても1ポイントと2ポイントの2か所から狙われれば12通りも当たってしまうので、であればダブルヒットしてもあまり変わらないということです。

図2

1では絶対にヒットします。が、4で5/1*のダブルヒットはしません。1の目でヒットして5ポイントに1枚置いた形はいわゆるスロットと同じ形になっており、白としては「攻められる可能性はあるが、形自体は良い」と言えます。作りたいところに置く形のヒットをした場合、それを外してダブルヒットするかどうかは考えたほうがよく、特に序盤の場合は置いたままにしておいた方がいいことの方が多いでしょう。残った4は13/9としてカバー目を増やすのが良いでしょう。
この2つの形の大きな違いは「1枚目をヒットした後の形」です。5ポイントに1枚置いているか、2ポイントに1枚置いているかの違いです。残りの片目で1ポイントをヒットできますが、5ポイントに置いている形は次に作りたいところに置いている形で動かしたくない、2ポイントに置いている形は特にその場所を作りたいわけではないので1の目でヒットの仕事をする、と考えることができます。

・次に作りたいところをヒットして残しておく手は強い。
・次に作りたくないところをヒットする手は弱い。

図3

初手54スプリット後の2手目51です。1で6/5*のヒットは確定ですが、残りの5で6/1*のダブルタイガーをやるのでしょうか?答えはNO。序盤も序盤という状態であれば単純に他にいい手があるパターンが多く、今回は13/8としておく手に何も問題がないので単に13/8としておくのがベストとなります。
ダブルタイガーは大きなリスクを伴う手です。つまりリスクに伴うメリットがなければいけません。ではそのメリットとはどういうものでしょうか。

図4

名人戦グランドファイナル 白 水谷光輝 11-10 黒 池谷直紀 25ポイントマッチ

これは実戦図です。結論から言えば、8/5* 7/1*のダブルタイガーが他を90点以上上回る大差でベストとなります。ヒット要否についてですが、
・自陣のほうが強いことはヒットすることを支持する。
・特に5ポイントに駒があるためこれは絶対にヒットしたい。
以上から、8/5*のヒットは確定です。
こうなると、今度は「5ポイントにスロットした形」が残ることになるのですが、これを埋めると「3456(もしかしたら7も)」が埋まる最強の形が完成することから絶対に5ポイントを作りたいところですが、例えば6を22/16のような手をするとX5の11通りに加え、14、23、24の6通りが増え17通りでヒットされます。これを減らすためにはどうするか?答えは1ポイントもヒットする、です。こうすることで5ポイントをヒットされる目がX5の11通りだけになります。もちろんX5を振られるとスロットする形の5ポイントを払われるのですがそれはダブルタイガーしていなくても同じことです。1の目で1ポイントをヒットされることもありますが、これを払われても自陣の強さには影響しません。
当然ですが、足が止まると5ポイントを埋めやすくなります。2だけエンターする場合も同様と見ていいでしょう。今回は「足止めをしたい」ということも込でヒットがかなり支持される状況となります。

あとはリスクの話ですが、今回は相手は何もできていないので何もリスクを考えなくて大丈夫です。
・ヒットされるリスクは戻されるリスクだけ。5ポイントを作って劇的に自陣を強化できるならそのくらいのリスクは負える。

これまでの内容を整理します。
・5ポイントへのヒットは絶対である。
→これを埋めると3456ポイントが埋められるのでヒットされたくない。
→そのために1ポイントもヒットして5ポイントをヒットされる目を減らす。
・相手陣地は何もできていないのでノーリスク。
・攻め駒も12枚あるので1枚くらいリターンされてもなかなか切れない。

以上から、ダブルタイガーがベストとなります。

これを見て気づいた人もいるかと思いますが、ダブルタイガーは多くの場合「一番(もしくは二番目に)作りたい場所」が含まれます。その一番作りたい場所をヒットした駒をヒットされにくくする、これがダブルタイガーの重要なポイントではないかと考えます。
当然ですが、相手の陣地の形はとても重要です。

図5

例えばこのような形だと相手の陣地が強くてダブルタイガーをするほどではないように見えます。ヒットする場所も4ポイントで少し微妙です。おとなしく10/1*とシングルヒットにしておく手がベストとなります。
また、ヒットには「足止め」の効果もありますが、今回はどうしても足止めをしたいわけではないこともダブルタイガーを支持しない理由になりそうです。

図6

序盤も序盤、2手目でダブルタイガーをする形も示します。初手43で24/20 24/21とした場合の2手目21、32、41はダブルタイガーです。どちらか片方だけ払ってももう片方が生きている場合そこを足場としてハイアンカーを取られると相手の形が良くなるからです。これは「相手にいいアンカーを取らせないため」のダブルタイガーと言えます。相手に簡単にハイアンカーを取らせないというのも序盤ではとても重要になります。
ただし43ではダブルタイガーはしません。3で8/5*のヒットはしますが、4は24/20で良いでしょう。43でダブルタイガーをすると8ポイントを完全に失ってしまいます。
※なお、初手43で24/20 24/21は「ない手」です。

図7

当然ですがこれまで示してきた「スロットする形でヒットした駒をヒットされにくくするため」というダブルタイガーの他に、図7のように「ブリッツを仕掛けていてアンカーを取られたくないがために突っ込む」というダブルタイガーもあります。基本的にブリッツが成功しているときは相手陣地はできていないことが多いのでダブルタイガーも成功しやすいと言えるでしょう。

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