建築家思考の 土地選び
土地選び でお悩みの方に・・・
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新建築 住宅特集 2018年5月号 特集/敷地を読む 『王子の家』
土地選び が終わらないと“家づくり”が始められない、そう思っていませんか?
そんなことはありません。
むしろ、土地選び から設計は始まっているのです。
これは私の事務所が敷地周辺の環境を重要視して建物を設計しているからとも言えます。
私の事務所では1/100と1/50のスケールで敷地周辺の模型を作るところから設計を始めています。
敷地境界線の内側にだけ、もしくは閉じた家の中にだけに棲む、
というのではなく、
敷地周辺の環境も含めて生活空間であり家である、
といった感じでしょうか。
土地探し の際には不動産屋さんにお願いしていることと思います。
ですが、
良いお家を建てるための土地探しでしたら、建築家に入ってもらうべきです。
不動産屋さんは土地のプロフェッショナルですが、
建築設計のプロではないのですから。
今迄に私の事務所にいらしたお施主さんたちのほとんどが、
土地を購入される前に相談にいらっしゃいました。
まだ土地探しの際中の方だったり、
いくつか候補となっている土地があっても決めきれずに迷っていました。
お施主さんの大まかなご要望をお聞きして、
実際に私が土地を見に行って、
役所で法規的なことも調べて、
私の方から大まかな設計の可能性をお伝えして、
それから土地を購入された、
そういったパターンがほとんどです。
土地選び から設計は始まっている
当たり前のことですが、家を建てるのには土地が必要になります。
しかしこの 土地選び が案外に難しい。
後々の建物の設計に大きな影響を与えるからです。
同じ種の樹でも、
それが育つ土地の陽の当たり方、風の吹き方、
周りの木々の密集具合などといった環境的要因によって、
枝の張り方や葉の付け方などが変化するように、
その土地の持つ環境的要因が、
その後そこに建つ建物の構成や性格に大きく影響してくるからです。
建蔽率や容積率、斜線制限等の建築法規も大事ではありますが、
敷地周辺の環境もとても大事なのです。
私の事務所で設計した”王子の家”や、”工房のある家”などでは、
敷地周辺の環境が設計の最重要テーマになっています。
建物と一体にして考える 土地選び
狭小敷地であったり、
変形敷地であったり、
旗竿敷地であったり、
斜面地であったり、
前面道路が狭かったりなど、
様々な土地があります。
建築設計者でもなかなか判断が難しい土地も多くあります。
敷地形状がきれいで南側で道路に面していて陽当りが良いという、
不動産として価値が高い土地が良いと思われている方も多いですが、
そういった土地が”家づくり”にとって良い土地かというと、
必ずしもそうとは言い切れないのが、
土地選びの難しさであり、
建築設計の面白いところでもあります。
北側で道路に面している土地は斜線制限で優利になることがあり、
狭い土地ではむしろ好ましいこともあります。
一般的には敬遠されがちの
不定形の敷地や斜面地などの“変形敷地”と呼ばれる中にも、
他には無いその強い個性ゆえ、
建物を建てる敷地としては、
かえって大変魅力的と思われるものも多くあります。
当事務所にお問い合わせを頂く方々には、
既に土地が決まっている方も、
まだ土地を探されている最中の方もいらっしゃいます。
気になっている土地があるのだけど、
方位的に日当たりが悪そうだとか、
土地に高低差があるので建物の構造に無理が生じるのでは?とか、
そういったお悩みをお持ちの方も多いのだと思いますが、
設計する側から見ると、
余り問題なく解決できると思われることも多くあるように思います。
どんな土地にも利点と欠点があります。
見方を変えれば、隠れた魅力を持っている土地もあるのです。
土地の個性や魅力は生かして、
欠点と思われるところは建物の設計でカバーをする、
そういった土地と建物を一体にした考え方が必要なのだと思います。
”土地選び”から始める、良い”家づくり”
土地や周辺環境はいわば下地(前提条件)のようなもので、
建物の設計において下地に馴染ませる必要がある、
と私は考えています。
馴染ませる過程で土地や周辺環境の個性が、
建物の基本構成に決定的な影響を与えることもあります。
その敷地の個性を見つけて建物内に引き込むことで馴染ませる。
それは敷地や周辺に対する尊重であり、
敷地が持つ個性を積極的に設計に生かすことでもあります。
”王子の家”もそうですが、
現在工事中の”工房のある家”もそうです。
建築は見た目のデザインの良し悪しよりもむしろ、
こういった思考法やプログラムのようなものの方が、
より本質的で重要であると思っています。
住まい手家族の生活観や価値観といった個性、
それと土地やその周辺環境が持つ個性とが重なり合って、
かたちのある”家づくり”にすることが出来た時にはじめて良いお家ができる、
そう私は考えています。
建物の設計は大切です。
それと同じくらいに土地選び も大切です。
建物も土地も一体の設計対象として考える、
そういった思考法が必要なのだと思います。
そのためには、
まず”建築家選び”から始める。
そして建築家と一緒に、
”土地選び”から良い”家づくり” を始める、
それが理想だと思います。
よい土地に出逢えますように・・・・
※HPにこの”建築家思考の 土地選び”のページを追加しました。