建築的文学 ?
E・A・ポーの『アシャー館の崩壊』はちょっと変わった小説である。
文庫本で28ページ程のシンプルなストーリーの短編であるが、
その大部分が、
館の外観やその周囲の樹木や池などの風景、
館の中の壁や天井や扉や窓、
そこに置かれている家具や本、
肉体的・精神的病を患っている館の主人アシャーの肌や眼、唇、鼻、顎、髪など、
それらを形容する言葉が幾つも重ねられた描写で占められている。
しかもそれらは全て同等のものとして扱われており、
館の外観・内観とそこに住む主の外観(容姿)・内観(精神)が、
まるで相互に呼応しているかのようである。
かつてある人から、
”インテリア”という言葉の語源には”精神的内面”という意味があった、
という話を聞いた事があるが、
この短編小説を読んでそのことを思い出す。
ある外的なものから精神的内面が影響を受け、
それがまた外的なものへと影響を及ぼしていくという、
それら相互の循環ということを考えると、
デザインすることの怖さを考えさせられてしまう。