「ジェンダーレス」に対するZ世代の意識を調査! 男女差はある?
最近よく耳にする「ジェンダーレス」。思い返せば2015年頃に「ジェンダーレス男子」という言葉が出てきたのが先駆けでした。ジェンダーレス男子とは、色が白くてからだの線が細い中性的な男性を指し、こんどうようぢさんやとまんさん、ゆうたろうさんらが代表とされていました。しかし昨今は、男女フラットにジェンダーを区別しない、という本来の意味で「ジェンダーレス」が意識され、定着してきています。
そこで今回は、Z世代の「ジェンダーレス」に対する意識を探っていきます!
男らしく、女らしくに違和感を抱くZ世代
全体的に男性よりも女性の方が、性別に関する固定概念に対して違和感を抱く人が多いようです。しかし全体で「違和感を感じる」割合が最も多かったのは、20~24歳男性で80.2%でした。逆に25~29歳は最も少ない59.6%となっています。女性でも最も少ないのは25~29歳で66.1%です。
ここからは考察となりますが、20代後半は多くの人が社会に出て働き、結婚をして家庭を持つ人が多くなる年代です。それに伴い、家庭や職場での男性・女性という視点で責任を意識することが増えるため、「男らしくあらねば」という責任感の表れとして「当たり前だと思う」と考えているのではないでしょうか。そう考えると「当たり前だと思う」は、決してネガティブとは限りません。
男性の15~19歳でも「違和感を感じる」割合が少ないのは、学校という社会の中で性差を意識することが多いからでは、と推察します。
「ジェンダーレス」という言葉の理解についても、男性よりも女性の方が進んでいるようです。特に20代女性では約8割が「聞いたことがあり、意味を理解している」と回答しています。30〜34歳女性では理解をしている人ががくっと減るため、年代による意識の差があるようです。
男性では15〜19歳で「聞いたことがあり、意味を理解している」が63.4%と最多です。先の質問と掛け合わせると、「ジェンダーレス」という言葉は知って理解していても、意識としては「男性は男性らしく」、というようにそれぞれ別物として捉えている方々が一定数いると考えられます。対して、先ほど「男性は男性らしく」の意識が強かった25〜29歳はこちらでも理解度が他に比べて低く、性差への意識がそもそもあまり高くないようです。
「ジェンダーレス」なファッションやコスメは選ばれる?
少なくない方々が、レディース・メンズの垣根を越えて洋服を購入し、ファッションを楽しんでいるようです。男女ともに20〜24歳でそれぞれ最多で、男性では42.0%、女性では74.7%が経験があると回答しています。逆にこちらも先の質問に引き続き、25〜29歳でもっとも経験が少ないという結果となりました。
具体的にどんなアイテムを選んでいるのかというと...。
男性からすると、小柄な人がサイズ感から選ぶこと以外にも、レディースの方が柄や色のバリエーションが多く、価格も抑えめのものが多いというメリットがあります。逆に女性がメンズを選ぶのは、敢えてメンズを選んでオーバーサイズで着ることにより、細見えするというメリットがあるからです。
化粧品(スキンケア/メイク)について、ジェンダーレスコスメを選ぶ人はまだ多くないようで、日常的にメイクをすることが多い女性でも15〜21%という結果となりました。メンズコスメの使用経験がある女性はそれよりも少ないようです。
一方で男性で女性向けコスメを使ったことがある人はジェンダーレスコスメよりも多く、20〜24歳で33.3%、25〜29歳で26.9%と他の世代よりも高い割合となっています。そもそも「ジェンダーレスコスメ」とカテゴライズされるアイテムが市場に少ないことも多少なりとも影響しているかもしれませんが、選択肢として定着するのはまだこれからのようです。
「ジェンダーレス」のブランドと聞いて思い浮かべる印象は?
「ジェンダーレス」とカテゴライズされるブランドに対してどんな印象を持つのかを聞いてみると、男女ともに15〜19歳と20〜24歳で「好感を持つ」という方が多く、実際に買いたくなるという人も3割前後います。しかし25〜29歳で「好感を持つ」という人ががくっと減ります。このことから、Z世代の方がジェンダーレスのブランドに対して好感を持つ人が多いといえます。
「あまり好感が持てない」という人にその理由を聞くと、以下のとおりでした。
「あまり好感が持てない」=ネガティブではなく、自分自身には必要がないと感じていたり、概念そのものについて違和感を抱いていたりすることによるようです。
「ジェンダーレス」のブランドと聞いて浮かぶブランドを聞くと、このような結果になりました!
無印良品では、衣料品は婦人・紳士で分けられていますが、コスメや日用品において男女問わず使えるシンプルなデザインであることから想起されています。UNIQLOもレディース・メンズのカテゴリー分けはありますが、サイズの幅が広くデザインもシンプルなものが多いため、性別問わず着られるという点からSNSなどで男性によるレディースアイテムの紹介や、女性も着れるメンズアイテムの紹介などがされています。ユーザー発信型でジェンダーレスと捉えられている形です。その他、ユーザーの性別を選ばないSHIROやAesopなどのコスメブランドが多く挙げられました。
まとめ
ジェンダーレスについて、ポイントは以下の通りです。
知っているジェンダーレスのブランドを聞いた結果からもわかるとおり、生活者はジェンダーレスというカテゴリーを望んでいるというよりは、ジェンダーレスで楽しめる選択肢(≒商品)を望んでいます。今回のファッションや化粧品に関する調査結果のように、生活者自身がジェンダーの垣根を越えて商品を選ぶようになっているため、単に「ジェンダーレスブランドです」というカテゴライズをするだけでは、無数の選択肢の中に埋もれたままで生活者になかなか届きません。ターゲットを絞らないということは特定のターゲットに向けたメッセージを打ち出せないこともであり、そこで求められるのはブランド自体の確固たる世界観やステイトメント、もしくは競争優位性の高いプロダクトです。
「ジェンダーレス」は多様性を認める動きが強まる世の中でキーワードとなっていますが、この領域に挑むにはブランド自体の世界観やプロダクトのパワーなど、より本質的な部分がカギになります。このことを念頭に置いて、時代のニーズに応えていきましょう。