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Nas / It Was Written

こんばんは!

今回は1996年発売のNas / It Was Writtenについてレコードの面から解析していきます!

It Was Written

時は1996年、The Source Magazineの名物コーナーで満点評価となるマイク5本🎤🎤🎤🎤🎤を受け、Illmaticが神格化されるほどに持て囃(はや)し続けられていた最中(さなか)、待望の新作"If I Ruled the Worldが発売されました。

発売元であるColumbia RecordsはIllmaticからのシングル群を長期でプレスし続け、1994年以降も数年に渡り日本でも購入することが出来ました。Nasのレコードが常に新品で買える状況が続いたため、その頃にレコードを買っていた人達は1996年時点でIllmaticが2年前のアルバムという認識は薄く、現行の楽曲と同じように聴いていた(聴き続けていた)し、新品のシングルスをレコード店で頻繁に見かけたことから頭の中はIllmaticのイメージがこびりついたままでした。
ゆえにNasの気持ちの変化とは裏腹に、日本のリスナーはIllmaticの延長線上の作品を期待し、It Was Writtenについては"期待外れアルバム"の烙印を押すのでした。

かくゆう僕もIf I Ruled the Worldが発売されてすぐにシングル盤を購入して期待に胸膨らませて針を落としてみると、人気のLaulyn Hillをヴォーカルに採用したセルアウト臭漂う内容に聴こえて非常に落胆した思い出があります。この頃にクラブやバーでDJしていた僕は、実際にこの曲をクラブプレイしたことが一度も無く、発売当時は受け入れ難(がた)い曲でした。(今では好きな曲です)

しかしこれは当時の無知な僕の偏(かたよ)った認識により生み出された誤解でした。

If I Ruled the World

実際にはIllmatic収録のOne LoveでWhodini / One Loveを引用したように、この曲でもWhodini / Friendsのトラックを再構築し、Kurtis Blow / If I Ruled the Worldのフック(サビ)をそのまま流用した、先人に対する敬意を表したNasの敬虔なHip Hop信者としてのスタンスが再認識出来る良曲だったのです。

プロモーションビデオ(PV)の冒頭部分には同じくIt Was Written収録曲となるThe Massageが加えられています。当時はThe Messageがお気に入りだったので、こっち(The Message)をUS正規盤で出せや!カスがぁー!と怒り散らしていましたが、何はともあれこのThe MessageからIf I Ruled the Worldに突入するストリートとメジャーの構図が素晴らしいPVは好きでしたね。

The MessageはUS正規盤では発売はされず、USはプロモーションプレッシングのみとなりました。後年にはジャケ付きUKプレッシングが発売されましたが、オリジナルプレッシングとしてはThe FreestyleのB面になります。

The Message

プロモーションプレッシングのThe Messageはアルバムヴァージョンと微妙に違い、イントロにアル・パチーノの声が乗ります。尺も違います。

ちなみにこのThe Messageが収録されたThe Foulness (Freestyle 2)は、It Was Writtenのアルバムプロモーション用に作られたレコードで、The Massageと2種類のFreestyleが収録されています。
プートレグ盤も非常に多いこのFoulnessですが、正規プロモーションプレッシングの見分け方はランアウトの"STERLING"のエッチングと、コースターの段差。左下のように2つのリング状の段差があればオリジナルプレッシング。右下のように1つの段差しか無ければプートレグですね。

The Foulness

ところでこの盤、品番が"NAS FRE 2"となっていますが、NasのFreestyleの2つ目の盤ということになります。では1つ目のFreestyle盤はどれ?と思いますよね。

NAS FRE 1扱いとなるのがこの盤、コースター面が真っ白なNasのFreestyle集。こちらも確かプートレグが出回っていたとは思いますが、①品番のエッチングが"NAS FREESTYLE"で、②SRCの刻印があり、③STERINGの刻印があるものがオリジナルプロモーションプレッシング。
ちなみに内容は2つのFreestyleを片面づつに収録していますが、The Message収録盤のFreestyle 1とFoulness (Freestyle 2)と全く同じです。つまりこの真っ白なコースター盤の出直し盤が、The FoulnessとThe Massageが収録された先の盤だということですね。

Nas / Freestyle


続いてはStreet Dreamsです!

Street Dreams

手前がUS正規盤、後ろが2種類のEU盤。全て収録曲が違います。
裏面にはMarley Marlの名曲、The Symphony使いのRemixを収録。


Street Dreamsには無数のRemixがあり、どれが好きかは好みが分かれるところ。

Street Dreams Remixes

EU盤には収録されましたが、USプレッシングではプロモーション盤止まりとなったR. Kellyによるスムースなリミックスは当時のラジオショウでも受けていました。
そのStreet Dreams (R. Kelly Remix)のトラックと全く同じものを使用したSinful Livingという未発表曲もあります。この曲がボツになり、Street Dreamsのリミックスに再利用されたのでしょうね。

K-DefによるバードボイルドなリミックスがK-Defの自主プレッシングにて発売。僕の周りではこのリミックスが一番人気でした。
Pete Rockによるリミックスは、彼がDJを努めるMarley Marlとのラジオショウ "Future Flava" の放送中にかかったものをレコード化した極悪クソプートレグプレッシング。この当時、Pete Rockはラジオショウのみで自身の未発表リミックス作品を公開していたので、それを無理やりレコード化したという訳です。しかしこのリミックスがすこぶるカッコ良いので、クソプートレグだろうが、音がゴミのように悪かろうが、素敵と思えてしまいます!



Street Dreamsの裏面収録曲となるAffirmative Actionのレコードも見ていきましょう!

Affirmative Action

The Firmのメンバー集結となったAffirmative Actionのジャケット付きEUプレッシングには、フランスのHip HopグループSupreme NTMを招いたリミックスを収録。
ちなみにStreet DreamsのプロモーションプレッシングにはStreet DreamsとAffirmative Action双方のA Cappellaを収録しており、リミックス作りたい人はこちらを探してみてください。




冒頭で書いた通り、1996年当時にあまり良い印象ではなかったため、アルバムを発売したすぐに購入するも聴く気になれず。そのアルバムをシールド保管のまま今に至ります。

シールド!

未開封のため、内容は全く知らなかったのですが、数年前にもう1枚購入し聴いてみることに。
当時のような色メガネもなく、素直に聴いてみるとなかなか良いアルバムじゃないですか!と思いました。
唯一ダセェなと思った楽曲がDr. Dre作で笑ってしまいましたが、美麗で力強いDJ Premier作のI Gave You PowerやMobb DeepそのものでバッチリのHavoc作の2曲、盟友L.E.S.の制作曲などが収録され充実した内容でした。
特に好きなのは当時Street Mix Tapeでも使われていたShootouts。途中で上ネタが変わるところはシビれますね。


I Gave You Power

関東の凄腕掘師、大塚さんから上記のブートレグ盤の情報提供があり、速攻買いました!
Revolutionary Warfare (DJ Premier Remix)は、9th WonderによるRemixの悪質な改ざんクレジット掲載だし、N.Y. State of Mind Part IIも収録されたUSオリジナル盤のアルバムは2LPだから必要ないしで、クソ盤認定して買わなかったんですよ。
ところが!
このブートレグ盤には2nd Album収録のDJ Premier仕事が光る、Gave You Powerが収録されているんですよ!曲名でピンと来ず、全く無視していましたが、まさかDJ Premier制作曲だったとは。慌てて買いました。
長いことIt Was Writtenを聴かなかったバチですね!



1996年当時のアルバム発売時のプロモーション用に作られたAdvance Tapeにはアルバム未収録となるSillent Murderのクレジットが。

Silent Murder

後にNasのレーベルであるIll Will Recordsを装(よそお)ったプートレグでシングル化されています。まさかのLarge Professorだったんですね。


同じ販促品で、こちらは...

It Was Written販促ノートとGet Hype!

Get Hype!の表紙に採用されたことでもおなじみの、It Was Written発売前の販促用ノートですね。アルバムタイトルにかけて、ノートなんでしょうね。


ところでNas / It Was Writtenの戦犯に仕立て上げられたのはIf I Ruled the Worldのプロダクションを制作したTrackmastersのPokeとTone。
完全にコマーシャル狙(ねら)いであったPoke作のThe Notorious B.I.G. / Juicyは良くて、何故かPokeとTone共作のIf I Ruled the Worldは悪者扱いという。
しかもIt Was Writtenの大半の楽曲のミックス(音のバランス調整作業)がTrackmastersによるもので、L.E.S.のプロダクションをハリのある低音で整えたTrackmastersのミックス仕事は評価されるべきだと思います。
何故こんなにTrackmasterに肩入れするかというと、僕はTrackmastersのToneこと、Red Hot Lover ToneがMCとして大好きなんです!プロダクションチームのTrackmastersには何の興味もありませんが、Toneだけは大好きなんです!

#1 Player

1995年発売なので、ちょうどIllmaticとIt Was Writtenの間に発売されたToneのアルバムは人気の無い名作なんです!
何かの間違いでアルバムが4枚あるくらい好きなんですよ、このアルバム。シングルカットされた楽曲も全部好きですが、アルバムのみに収録された楽曲でもクソほどカッコ良い曲があるんです!
Discogsにも掲載されていませんが、ノンクレジットでDiamond Dが制作したBust tha Maneuvaが最強です。


Red Hot Lover Toneのシングルス

シングルスも全て強力、永遠の名曲#1 Playerに、Toneの歌い出しがたまらない地獄のPosse Cutである4 My Peepsと、一生聴いていられる曲ばかり!


思い起こせば、NasとToneが同じ作品に名を連ねたのは1992年の名曲、MC Serch / Back to the Grillですね!

Back to the Grill

この時はまだToneが2つのRed Hot Lover Lover Toneに、若かりし頃のNas、Chubb RockとMC Serchによるポッセカットの名作ですね!



こちらは名工房Cncrete Jungle StudioによるNasの精巧すぎるフィギュア!

Nas Figure

レコードのジャケットと比べてもこの大きさ!

It Was Writtenのヘッドパーツ装着

各アルバムのジャケットに合わせたNasのヘッドパーツが6つ付属しており、取り替え可能な逸品!

あのアルバムの顔面パーツもあります...

I Am...



こちらは1994年と1997年の来日時のフライヤー。初来日はBiz Markieと一緒に。

来日フライヤー

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