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神話と現実が交錯する

私は霧台(むたい)に来ていた。

そこにはなんとも形容しがたい凛とした空気が漂っていた。
降り立った瞬間の何かに全身を包まれるような不思議な感覚。
気のせいだろうか。ここは標高が高く空気が澄んでいるからだろうか。
まるで時が止まったようにも感じる。

台湾という場所は北部は亜熱帯、南部は熱帯という気候を持つ。霧台がある最南部の屏東縣は台湾の中でも気温が高い場所である。
霧台は屏東の市街地からバスで一時間半ほど走った平均海抜1000mの山岳地帯。住んでいる原住民は主に魯凱(ルカイ)族。
霧台郷に入るには今でも入山許可が必要で、秘境と呼ぶにふさわしい場所だ。身分証の番号を記入し、サインさえすれば誰でも訪れることはできるものの、霧台郷へ向かうバスは一日三便のみで、しかも15名も乗れば満員になってしまうマイクロバスだ。大型バスが走行できない山道を通らないと部落内に入れないため、観光客であふれるということも無い。

ああ、ここは静かなのだ、としばらくしてから気が付いた。

台湾の市街地の交通量はとても多い。クラクションの音はしょっちゅうだし、お店も人も多いため常に大量の音にさらされている。
台湾に限らず普段の自分の生活も同じようなものだ。街中にいれば常にたくさんの音にさらされている。

それにひきかえここはなんて静かなんだろう。

雲はほとんどなく真っ青な空が広がっている。
周囲はぐるりと連なる緑の山々に囲まれている。
日差しは強いが風が心地よい。
ここは本当に台湾なのか。なんだか異次元にいる気する。

部落のいたるところに百歩蛇や百合の模様がある。
そうか、ここは半分神話で半分現実の場所なのだ。
両者が交じり合い独特な空気が流れる場所。
それが霧台という場所なのだ。

原住民に守られた神聖な土地を後にして、私は三地門に向かった。

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