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2012の音楽百景を描いたポルノグラフィティを聞いて思ったこと
皆さんが初めて聞いた、邦楽ポップスロックバンド、ポルノグラフィティ(以下ポルノ)は、どんな音楽のイメージでしたか。
2000年代前半の『アポロ』『サウダージ』『愛が呼ぶほうへ』のような、アップテンポな作風で、ラテン、ロック、アコースティックの音楽ジャンルを混ぜたような、ポルノのイメージ。
2000年代後半の『ネオメロドラマティック』『ハネウマライダー』『今宵、月が見えずとも』のような、爽快感あふれるサウンド、豊かなテンポで、ギターロックを中心に音楽ジャンルを魅せた、ポルノのイメージ。
2010年代の『オー!リバル』『THE DAY』『Zombies are standing out』のような、デジタルロック中心で、パワフルな歌声とアップテンポで、幅広いジャンルを魅せる、ポルノのイメージ。
どれかのイメージを持つ、ポルノファンがいると思います。
今回は、『THE DAY』のような、現在のポルノの作風に変わっていったアルバムを紹介します。2012年3月28日に発売された9枚目のアルバム『PANORAMA PORNO』(パノラマポルノ)です。
収録シングル曲は、『君は100%』『EXIT』『ワンモアタイム』『ゆきのいろ』『2012Spark』です。今までのポルノのアルバムで、収録シングル曲が最も多い内容です。さらに、アルバムの収録時間は66分44秒で、ポルノのアルバム史上、最も収録時間が長いものになりました。
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(2012年)
写真左から、岡野昭仁、新藤晴一
このアルバムは、今までのポルノと違って、編曲体制の入れ替わりで、大幅な作風で変わりました。とても上質な楽曲がそろっています。しかし、ポルノファンの間では、過小評価されているような立場でした。とあるランキングサイトで、ポルノのアルバム人気ランキングで、最下位に近い立場でした。
特に、2000年代のポルノのイメージを持っているファンにとって、評価が低いようでした。今のポルノに馴染んでいるファンからは、高評価です。
実は、このアルバムが発売された2012年の背景を知ると、歌詞には深いメッセージ性がこめられていると気づきます。よく読むと、多様性が広まって、過渡期の状況になっている、2020年代にも通じるメッセージに見えると思います。
この記事では、ブリが『PANORAMA PORNO』を100周も聞いて、思ったこと、このアルバムの評価が分かれる理由と分析をまとめました。ある出来事から大きな影響を受けた、2012年の邦楽界も振り返ります。賛否が分かれたアルバムへの再評価をしました。
歌詞の意味は、あくまでもブリの独自解釈なので、一つの例として読んでください。
メンバーは、昭仁、晴一と呼びます。
♪デジタル社会へ変わる2012の邦楽界
2010年代を迎えた邦楽界、日本の社会は転換期でした。
2011年3月11日に起きた、東日本大震災は日本全国に衝撃を与えました。被災地となった東北地方は、地震と原発事故で、人々の生活と仕事に大きな困難を起こしました。東北地方だけではなく、関東地方の人々の生活にも影響しました。通称「311」と呼ばれる、この天災は日本全国のインフラと経済を低下させました。一方で、インターネットを通した安否確認で、SNSの利便性が広まっていました。今の主流になった、LINE、Twitter(X)の利用率が高まっていました。
その後、多くのアーティストたちが、311のチャリティー活動に参加しました。アーティストたちは、東北地方での交流を深めていました。
邦楽界は、アイドルグループAKB48のブームで、5年近く流行が続きました。AKBは握手券を音楽CDに付けた手法により、CDの売上を伸ばしました。2000年代後半から進んでいる、CD不況を吹き飛ばすくらいのミリオンセラーを記録しました。しかし、それは一時的な需要でした。
アイドルグループの人気の一方で、音楽ジャンルがさらに多様化してきました。多様化していく邦楽界は、次第にアーティストの流行がばらけて、一つの流行で盛り上がることが減りました。
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音楽だけではなく、音楽のプロモーション手法にも変化が起きました。音楽ショップ、テレビ、ラジオ、雑誌、音楽チャンネルを中心に行っていた、音楽活動はインターネットの普及で変わってきました。ニコニコ動画を中心にした、ボーカロイド文化の盛り上がりが、インターネット上の音楽活動の見本となりました。
SNSでのプロモーション、音楽のダウンロード配信、インターネット上での音楽活動など、音楽のデジタル化が少しずつ進んでいきました。でも、まだ市場は音楽CDに依存した状況でした。邦楽界は著作権の事情があって、デジタル化の移行に遅れていました。
2010年代前半は、音楽のデジタル化移行が過渡期でした。
音楽のデジタル化は、後の音楽サブスク配信へ通じていきます。
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ちなみにこの頃、後に活躍する、米津玄師、Official髭男ism(ヒゲダン)、緑黄色社会(リョクシャカ)、羊文学などの若いアーティストたちが活動を始めました。彼らは少年時代にポルノを聞いていました。
天災のチャリティー活動、デジタル化移行が進む邦楽界で、ポルノは新しいものを作り出そうとしていました。
☆これからの音楽百景
ポルノは、デビュー13年目のキャリアを重ねた、中堅アーティストとなりました。2010年には、バンド史上最多の公演数となったライブサーキットを開催しました。2011年はチャリティー活動とともに、つま恋、東北、千葉の幕張でスペシャルライブ「ロマンスポルノ」を立て続けに開催して、順調にライブ活動を行いました。
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つま恋ロマンスポルノのグッズ収益と
義援金で購入された。
彼らがデビューした1999年から、邦楽界も、ポルノ自身も変わってきました。アーティストの世代交代、歌姫ブーム、CD不況、多様化する音楽ジャンル、デジタル配信の構想、ボーカロイド文化など、2000年代の邦楽界は世代交代とデジタル化社会の始まりでした。
ポルノは3人組バンドとしてデビューして、編曲家の本間昭光のプロデュースのもとで、ロックから、多彩なジャンルを展開するバンドになりました。次第にメンバーの心境が変わって、今の2人組のバンドになりました。2人組のバンドとして生まれ変わったポルノは、初期とは違うジャンルの代表曲を出していきました。2000年代の邦楽界を代表する、アーティストの1組として、知られていきました。
2010年代に入ったポルノの活動は、本間のプロデュースから、メンバー自身と若い編曲家との制作体制へ移行することになりました。それは、本間の作風でヒットした、2000年代のポルノから、全く違う作風へ変わる時でした。昭仁と晴一は、「自分たちで作詞作曲できるようになりたい」と強く考えていました。本間との話し合いで、新しい制作体制への移行をすすめられました。それは本間からの卒業、ポルノが新しい段階へ変わる時でした。
シングル曲『EXIT』は、本間と制作した最後のシングル曲となりました。
2011年に出されたシングル曲『ワンモアタイム』『ゆきのいろ』で、新しい作風をアピールしました。
「昔のほう(アルバム『ロマンチスト・エゴイスト』、『foo?』)が良いと言われても、バンドは変わっていかなきゃいけない。変わってもクオリティのある作品を出すことがプロフェッショナルのミュージシャン」
インタビューより(2012年4月号)
2011年4月頃、新しいアルバムへの制作を開始しました。楽曲が出来上がっていくなか、アルバムのコンセプトが浮かびそうで浮かばない様子でした。ただ浮かんだのは、「音楽百景」を作るコンセプトでした。「全景」を意味する、「panorama(パノラマ)」というアルバム名を付けました。あと、「新しいポルノを聞いてほしい」という想いで、アルバム名にバンドの略称が付けられました。昭仁はこのアルバムの制作について、期待と不安がある心境で取り組みました。
「1作目のオリジナルアルバム『ロマンチスト・エゴイスト』(2000年)を作った頃のような、不安と期待が渦巻く初心のような気持ちで臨めた」
インタビューより(2012年4月号)
『PANORAMA PORNO』は前作のアルバム『∠TRIGGER』(トリガー)から2年ぶりの間隔で、発売されました。今作は、長く空いた発売間隔のため、今までにないプロモーションで展開されました。
インターネット上でのプロモーションに積極的に取り組みました。ポルノ公式のYouTubeチャンネルの開設、SNSを通したファンミーティング、動画からクイズ形式でアルバムのストーリーを表現した企画、オリジナルノベルの動画、ニコニコ生放送での特別番組の配信を行いました。アーティストのテレビやラジオ出演、音楽ショップ、音楽雑誌、テレビCMなど、従来のプロモーションと合わせて、インターネット上のプロモーションを広げました。
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(2012年1月10日開設)
△最も長い収録時間と賛否
このアルバムは、ポルノ史上最も長い収録時間となりました。一気に聞くと大変かもしれません。急いで全体を聞きたい時は、サブスク配信でのダイジェスト再生で聞いてみてください。
新しい作風と制作体制から出された自信作になりましたが、ポルノファンの間では賛否がありました。アルバムに対して、高評価するポルノファンは以下の感想でした。
「今までにないポルノでおもしろくなった」
「アーティストの技術が上がって、楽曲のエネルギーが強くなった」
「いろんな景色を見せる、聞きごたえがあるアルバムだった」
「歌詞のメッセージ性が深い」
このアルバムに対して、低評価の感想を持つポルノファンは、2000年代の作風に慣れていて、変わらないでいてほしいと願うような、心境が見えました。
「ポルノらしさが減った気がした」
「まとまりがない」
「ギターやボーカルを大事しない、アレンジだった」
「とにかくボリュームが多くて、聞き疲れた」
以上の感想を読んでいて、ブリはどちらの評価に対しても、共感を持ちました。
ブリは初めて聞いた時は、編曲に対する不満がありました。素晴らしい歌声と楽器の響きを活かしたものにして欲しかったと思いました。編曲家によって、良し悪し分かれた気がしました。あと、2010年代の邦楽の特徴である、音の情報量が多い、加工した歌声や楽器、ダンスミュージック風のロックに変わったから、「ポルノらしくない」特徴だと思われたでしょう。編曲家が違うゆえに「まとまりがない」アルバムと見られて、低評価を付けられたと思いました。でも、今思うとブリは2000年代のポルノにこだわるゆえに、戸惑ったと思いました。
今は高評価の感想に強く共感しています。なぜなら、『THE DAY』のような今のポルノになじんだので、良いアルバムに感じるようになりました。聞いていると、いろんな表情が見えるポルノを聞きたかったと、思いました。歌詞を読んでいると、2000年代のポルノと比べて、さらに深い視点で描かれた歌詞だと気づきました。
このアルバムは、2000年代のポルノになじんだファンと、2010年代のポルノから知ったファンと、感想が分かれると思います。楽曲のアレンジ、成熟した歌詞と歌声になっても、人間の普遍性を描いています。
◆2012の街で生きる
アルバム全体の作風を聞いていると、さまざまな音楽ジャンルを混ぜた楽曲になっています。それが何のジャンルなのかしっくりこない、と思われますが、ポルノらしいキャッチーなメロディーがあります。
収録シングル曲『2012Spark』(にーぜろいちにースパーク)は、2012年の街で生きる主人公を描いた、爽快感あふれるデジタルロック曲です。主人公は、愛情と優しさを大切にする、人生経験を重ねた人間です。しかし、主人公が生きる2012年の街は、スマートフォンの普及、デジタル社会の移行で人々の思いやりが薄れていました。主人公の愛情がこの街では弱さを見せることと思われ、危機感を持ちました。主人公は発達したその時代に落胆しそうでした。街で生きるために主人公は、自分の考えと優しさを大事にしながら、強く生きていくと決意するのでした。始まりと終わりに、昭仁の「スパーク」の声を加工したサンプリングが入ります。
2012年の街で生きる主人公の様子が、「時代劇」として例えられて、街で生きる緊張感が熱い殺陣として表されています。
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ミュージックビデオ
(2012年)
シングル曲『ワンモアタイム』は、ダンスミュージック風ロック曲です。ポルノが若い編曲家との制作環境に変わってから、初めてのシングル曲です。311に直面した人々の葛藤と現実の無力感に対して、希望を届けていきたいポルノのメッセージが響く楽曲です。音楽を通して、できることを届けたいポルノの想いがこめられました。
ちなみに編曲を担当した、田中ユウスケはAKB48、いきものがかり、あいみょんの楽曲の編曲を手がけました。あいみょんの楽曲プロデュースを担当しています。
シングル曲『ゆきのいろ』は、ピアノのイントロから始まり、ミニマムな打ちこみとオーケストラが入って、昭仁の伸びやかな歌声で展開される、バラード曲です。
傷を抱えて生きてきた主人公は、大切なパートナーと出会ってから、人生が変わっていきました。パートナーと出会ってから、主人公は自分が歩んできた人生を省みて、自分の情けなさに悩みました。でも、パートナーの存在によって、これからの人生に希望を持って、主人公は前向きに生きようと思いました。主人公の歩んだ人生が「絵」として描かれて、パートナーの存在は「雪」のように、主人公の光として表されています。
パーカッションとギターロックで、将来に向けた応援曲にした『君は100%』。将来に迷い、部屋に閉じこもった主人公に向けて、未来の明るさ、大海の広さ、失敗や迷いは誰でもあると、励ますメッセージを贈ります。理想の幸せについて問いかけた代表曲、『幸せについて本気出して考えてみた』を思わせる応援曲です。
本間との編曲で、最後のシングル曲となった『EXIT』は、切ない弦楽器とギターによる、バラード曲です。主人公の心境を地下鉄の空間に見立てて、やるせない感情がつまった様子を地下鉄の人々として出しています。主人公は大切な人にふさわしい存在でいたかったはずなのに、すれ違いによって、相手と別れました。修復できない人間関係、別れたショックによる複雑の感情が、地下鉄の空間で表現されています。
■人生のメジャー
このアルバムは、自分自身の考えを持つ重要性、困難や不安を恐れない感情、不変の人間性を強く描いた歌詞が多いです。一見、意味が難解ですが、確かなメッセージ性があります。恋愛や幻想的な話が多かった、2000年代のポルノより、「人生」にまつわる話が多いです。
『メジャー』は、考えや目標が違う人間の多様性を描いた、弦楽器とキーボードとギターが混じった、ポップス曲です。主人公は他人に対して、自分の考えや外見がどう見られるか、不安を抱えていました。自分の目標について、周りの圧で過小評価していました。でも、他人とは比べずに、自分の良さを受け入れ、本当に自分ができるところまで目指し、自己肯定感を上げることが大切だと伝えています。
人々が、それぞれの正義や考えを主張して、混沌とした世界を描いたデジタルロック曲『FLAG』。主張を「旗」で表して、人々が過去の常識に対して、多様性を求める主張や正義を叫んで、教科書で学んだことが通用しなくなった世界です。そんな世界でも、偉人が残した主張は形を変えて、現代でも通じて、リスナーの考えに問いかけます。SNSの拡大で、一般人も強く主張できて、多様性にまつわる問いかけ、影響力が現れ始めた世界を表しているようです。
昭仁の張り切った感情を表した、デジタルパンク曲『電光石火』。若い時の勢いはなくても、恋の力によって、困難も限界も不安も越えて、どこまでも行きたい主人公の熱意を歌ったものです。
ステージライトを示した『星球』(ほしきゅう)。LEDに変わっても、電球の明かりは、人々に温もりを与えるものだと、踊る人々の楽しさを描いています。楽しく、踊れるミニマム風の打ちこみになっています。
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楽しい時間が過ぎた後の切なさを歌った、オーケストラ風スローバラード曲『素敵すぎてしまった』。ラバッパー(ポルノファン)に対して、ポルノのライブサーキットが終わった後の余韻に寄り添うような、歌詞です。ライブコンサートが終わるたび、どこかさびしい気持ちになります。
ギリシャ神話を題材に、マイナーコードのピアノから始まるデジタルロック曲『カシオペアの後悔』。女神カシオペアが自身の美しさを威張り散らして、海の神ポセイドンから罰を受けた話をもとに、人間の偉そうな性格を風刺した歌詞です。「自慢しすぎると後悔する」という神話の教訓が、現代の人間にも通じると描いています。
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酒場で乾杯を楽しむ人々の様子を描いた、カントリー風ポップス曲『はなむけ』。弾けたい気持ちで遊び心を表現した、晴一の歌詞がおもしろいです。途中で「かんぱーい」と祝うコーラスが入ります。
愛する人にぞっこんで、主人公の想いをつづったピアノポップス曲『メリーゴーランド』。壊れたメリーゴーランドは、夢や希望をなくした様子を表しています。暗い将来で、主人公の願う夢や希望を魅せることができず、ただ時間が忙しく過ぎていました。でも、主人公は愛する人の笑顔と将来を願って、幸せを築きたいと思っています。
アルバム最後になる、ピアノオーケストラのバラード曲『光のストーリー』。空港で、主人公とパートナーの久しぶりの再会を壮大に描いたストーリーです。昭仁の温かく、力強い歌声が、再会の喜びと愛情が弾けるくらい表現されて、息を飲む楽曲です。これは名曲です。
◆久しぶりのインスト曲
2003年のアルバム『WORLDILLIA』以来、晴一のギターソロのインスト曲が収録されました。題して『Truly』(トゥルリー)です。
どうして英語で「実に」を意味する曲名にした理由について、晴一は「とぅるりー」と聞こえたからと答えました。英語の意味とは全く関係ありません。前回のインスト曲同様、曲名に何も意味がありませんでした。
★ポルノは元々変わり続けていた
振り返ると、ロックバンドとして結成されたポルノは、ギターロック中心の作風でした。しかし、ギターロック中心だと、昭仁も晴一も、いつまでも幅広い楽曲と技術にたどり着けません。本間の編曲は、邦楽ファンが聞きやすいものに変えました。本間はギターロックでは売れないと気づいたと思います。ギターロックだけでは他ロックバンドと似たりよったりになるからです。そして、2000年代の代表曲が生まれました。
ポルノは、『アポロ』でデビューした時から、ギターロックからデジタルロック中心に変わりました。そこから、ラテン、テクノ、オーケストラと、ロックにいろんなジャンルを混ぜました。昭仁と晴一は、本間のもとで幅広いジャンルの楽曲を作れるようになりました。そして、決定的な転換点だったのは、3人組のポルノが、2人組になった時です。昭仁と晴一はポルノで表現できる可能性があると思って、活動を続けました。さまざまな音楽ジャンルを取り入れて、活動を続けました。
変わっていく最大の理由が、昭仁と晴一が「自分たちで音楽を作り出したい」「可能性を探求したい」と、向上心を持っていたことです。本間のもとで制作していたポルノは、自分たちで制作する技術に悩んでいました。若い編曲家との交流を通して、制作で刺激を受けたいと思いました。それが今のポルノになっていきました。
つまりポルノは、デビュー時から変わり続けていきました。
あと、ブリが先人のデュオたちを調べていると、ポルノのように一つのジャンルだけではなく、幅広いジャンルを表現して、変わっていったことがありました。各メンバーは「挑戦したい」と向上心を持っていました。変わり続けることで、幅広いジャンルを表現できるアーティストになったと気づきました。幅広いジャンルを作り出せるように変わるのは、良いアーティストが通る道なのです。
×実は残されなかった企画たち
アルバムのプロモーションで出した、オリジナルノベルの企画は残念ながら、残っていません。動画は期間限定で載っていて、公式チャンネルにはありません。あと、アルバム企画のページはGoogle+のサービス終了で見られなくなりました。恋しいですが、そんなものがあったと書いておきます。
>歌詞カードはパノラマ式
『PANORAMA PORNO』の歌詞カードは、2006年のアルバム『m-CABI』以来のパノラマ式歌詞カードになっています。10面にわたる、紙がつながった仕様になっています。実物の歌詞カードを広げて読みたい方は、たたむ時に折り目が分からなくならないように、慎重に扱ってください。
~まとめると新しい作風と長編で分かれるが名盤
以上、ポルノのアルバム『PANORAMA PORNO』を聞いて、思ったこと、2012年の邦楽界を振り返る内容をまとめました。
現時点のポルノのアルバムで、史上最長の収録時間となった今作は、非常に聞きごたえがあります。長編もので、新しい編曲体制によって、今までのポルノから変わった作風になりました。しかし、2000年代のポルノファンから戸惑いの印象がありました。受け入れられるまで大変だった作品だと気づきました。
簡単にまとめると、「今のポルノへ通じる過渡期のアルバムで、大ボリュームの名盤」です。今のポルノが好きな方にすすめます。
歌詞を読むと、恋愛より「人生」を中心にした歌詞が多いです。あと、311からの体験で感じた、人々とのつながり、音楽にできることを表した楽曲があります。そして、最も強く感じたのは「多様性が強まるデジタル社会」に対する、メッセージが見えます。
2010年代は、スマートフォンとSNSの登場により、世界が変わりました。アーティスト本人が発信できて、ファンとの距離が縮みました。しかし、個人が発信できる環境から、アーティストへの誹謗中傷の問題が絶えません。ファンはたくさんの人々からの主張と比較で、疲れるようになりました。常にインターネットは、純粋な感情が仇になる世界になりました。人間の思いやりを大切にする人に対して、「のん気」と突っこむ冷たい人がいます。ポルノが2000年代前半に、『空想科学少年』で描いた、「純情をぶつけた見返り」のシーンが現実になりました。
過去のアーティストが残した楽曲に対して、「古くさい」と思われていきました。活動を重ねたポルノも、過去のアーティストの音楽だと見られていきました。でも、彼らの楽曲は毎回、発達するデジタル社会に対して、問いかけてきました。後に、今に通じるメッセージだと再評価されました。『2012Spark』は、まさに加速するデジタル社会と多様性に追われる人間の葛藤が見えます。
時代に嘆いても、時の変化は止められません。音楽は時代に合わせて、変化していきました。ポルノは変わり続けていくバンドだと表したのです。変わっていく音楽でも、不変の人間性を伝えています。
それがこの時代だとか言われたら
なんとなく頷いてしまいそうにもなる
では誰のための時代か?
問うたなら そんなもん俺達の為なんだと
得意げな顔をして言い切ろう
立ち回り入り 乱れ食らいつくLITTLE SPARK