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9mmが結成された2004年の邦楽ロック界を振り返る

皆さんは、自分の推しバンドが結成された年を覚えていますか。その頃は、自分がまだ生まれていなかったり、少年時代の頃だったり、すでに大人になった頃だったり、いろんな思い出があると思います。

ブリの推しバンドたちの結成年を振り返ると、1980年代後半から2010年代前半あたりで、結成されました。中には解散したバンドもいますが、現在は10~30年前後の活動歴を重ねているバンドが多いです。特に2000年代前半は、ブリにとって、音楽が好きになった時でした。今でいう、音楽への「推し愛」が本格的に目覚めた、少女時代でした。
ブリの推し愛が咲いた頃、2000年代前半に結成された推しバンドがいました。そのバンドたちは現在、15~20年の活動歴で、中堅バンドとなりました。メンバーは30代半ばから40代半ばまでの年齢です。

ブリが今回挙げるのは、2024年3月17日に結成20周年を迎えた、邦楽ロックバンド9mm Parabellum Bullet(キューミリ・パラベラム・バレット、以下9mm)の話です。
彼らは2004年に結成されてから、現時点でバンドの活動休止は起きておらず、現在も同じメンバーで活動を続けています。数々の名曲、ライブ活動を重ねて、邦楽ロック界で中堅バンドとして、活躍しています。彼らは2000年代、2010年代、2020年代と、3つの世代を渡るバンドになりました。

9mm Parabellum Bullet、2024年のアーティスト写真。
写真左から、かみじょうちひろ、滝善充、
菅原卓郎、中村和彦

9mmが結成された2004年は、現在の邦楽ロック界とは違う景色でした。ボーカリストの卓郎、ギタリストの滝、ベーシストの和彦、ドラマーのちひろは、ロックへの憧れから結成されました。
この記事では、9mmが結成された、2004年当時の邦楽ロック界を振り返りました。そして、彼らと同じ年に結成された、他バンドを紹介します。



☆王道ギターロックと他ジャンルの融合

1990年代のCD全盛期は終わり、2000年代を迎えたばかりでした。今のように、音楽のインターネット配信は発展途上でした。2000年代は、邦楽ロック界の作風が広がっていました。1990年代に活躍した伝説のバンドたちは去り、新しいバンドたちが生まれてきました。王道ギターロックで奏でる作風、ヒップホップや打ち込みを取り入れた作風など、王道の邦楽ロックバンド、他ジャンルを混ぜたバンドが、次々と生まれていました。

2004年当時、幅広い邦楽ファンから人気を得たのは、ORANGE RANGE(以下レンジ)なるロックバンドでした。ロックだけじゃなく、ヒップホップを中心にした幅広い作風でヒット曲を飛ばして、邦楽ロックファン以外のリスナーに知れ渡りました。レンジは少年少女の間でブームになりました。ロックにとらわれず、幅広いジャンルを取り入れた作風は、「オルタナティブロック」と呼ばれています。このような作風は、後のバンドたちに共通しています。
レンジはブリ少女の音楽観に大きな影響を与えた、推しバンドです。
(ORANGE RANGEのブームについて、振り返った記事はこちらへ)

王道ギターロックのバンドたちも人気でした。BUMP OF CHICKEN(バンプ)、RADWIMPS(ラッド)、ELLEGARDEN(エルレ)、ASIAN KUNG-FU GENERATION(アジカン)など、聞きやすいメロディー、歌詞を語る作風は、少年少女の邦楽ロックファンから支持されました。彼らの名曲は、今も語り草になっています。

2004年の邦楽ロック界の様子図

2000年代前半は、邦楽ロックの作風が広がるなか、ギターが奏でるメロディーが主流でした。
そんななか、まだ無名だった若いバンドたちも育っていました。UVERworld(UVER)、Aqua Timez(アクア)、凛として時雨、back number(バクナン)、People In The Box(PITB)、9mm Parabellum Bulletなど、後に活躍するバンドたちが活動を始めたばかりでした。9mmはその1組でした。


☆速い暗いロックの弾丸

9mmは、故郷である東北から、神奈川県の横浜市にある大学に入りました。メンバーは音楽サークルでの出会いがきっかけで、バンドが結成されました。メンバーは1990年代の伝説のバンドから影響を受けて、ロックバンドをやりたい憧れを持ちました。
「9mm Parabellum Bullet」なるバンド名は、由来がころころ変わります。最も有力な由来は、伝説のバンドのように、3単語の長い名前を意識しました。ミリタリー好きなちひろは、「9mmパラベラム弾」を意味する名前が良いと、気に入りました。これはあくまでも、ちひろの冗談の一つです。卓郎は、壁に貼られた「9mm Parabellum Bullet」という単語が印象に残って、この名前にしようと考えました。メンバーは「9mm」と呼んでほしいとアピールしました。
バンド結成当時は、メンバーの足並みがなかなかそろわず、ライブの観客は誰もいませんでした。ようやく彼らは、デモ曲を制作するようになり、そこから少しずつ観客が増えていきました。そのデモ曲は、9mmのライブの定番曲である、『Talking Machine』(トーキング・マシーン)です。
横浜から東京に飛び出した9mmはある日、渋谷のライブハウスで、インディーズレーベルの「残響レコード」に誘われました。残響レコードの社長である、河野章宏(こうのあきひろ)は、9mmをプロデュースしました。河野もバンド活動をしており、「te'」(テ)なるポストロックバンドのギタリストです。

残響レコード、レーベルのロゴマーク

残響レコードは、People In The Box、cinema staff、ハイスイノナサなど、ポストロック系のバンドたちが集まって、盛り上がっていました。2000年代後半、邦楽ロックファンの間で、ポストロック作風の暗い歌詞の楽曲は、「残響系」なるジャンルとして呼ばれていました。

河野は9mmのライブ演奏を見て、こんな第一印象を持ちました。その後、彼らが残響レコードから発売した、最初のミニアルバム『Gjallarhorn』(ギャラルホルン)を聞いて、周りの反応からこう語りました。
ブリは映像資料からこの話を聞いて、9mmの暴れっぷりはこの頃から相変わらずでした。彼らが2000年代後半の邦楽ロックに与えた影響は、本当に広がりました。

(9mmのライブ演奏を初めて見て)
「一言でいうと、馬鹿野郎だった。ギターの滝が骨折して、イスに座っていた。そんな状態からライブが始まり、滝はイスを蹴飛ばし、暴れ始めた。大丈夫かと思った。」

(9mmの初めてのミニアルバムについて)
「いろんな人から、このバンドは日本の音楽を変えるかもしれないと、言われた。僕らはそんなことを全然思っていない。」

河野章宏、
SPACE SHOWER TV
『レーベルの歴史 残響レコード』より(2009年)


9mmメンバーは、河野の誘いについて、こう感じました。半信半疑ながらも、レーベルに所属しました。彼らのメジャーデビューの一歩はここから始まりました。9mmは残響レコードのバンドとして、2004年から2013年まで所属していました。

卓郎
「ちょっとうさんくさいと思った。彼(河野)の話を聞いて、すごく情熱的だと思って、信じてみようと思った。」

ちひろ
「おもしろいことをやりたかったら、うちに来いと言われて、この人(河野)はちょっと変だなと思った。」

9mm Parabellum Bullet、
SPACE SHOWER TV
『レーベルの歴史 残響レコード』より(2009年)


9mmの作風について、ドラマーのちひろはある3つの要素にこだわりました。「速い」「暗い」「日本語」、それらが9mmの個性として、こだわっています。彼らの音楽は、終始速いビートで、短調のキーで、歌詞はほとんど日本語で成って、人間の孤独や闇を描いたテーマが多いです。歌謡曲のような、あまり音域を変えない歌い方で、聞きやすいメロディーがあります。この音楽性は、今も続いています。

9mm Parabellum Bullet『Gjallarhorn』(2005年)
デモ曲『Talking Machine』を収録した、
初めてのミニアルバム


☆9mmと同じ結成年のバンドたち

9mmと同じ2004年に結成されたバンドたちについて、簡単に紹介します。もしかしたら、9mmファンはどれか聞いたことがありますか。初めて知る方は、ぜひ聞いてみてください。

・te'(テ)

変わった名前をした、ポストロックバンドです。スペイン語、フランス語で「お茶」の意味である、バンド名です。残響レコードの社長である、河野が結成しました。メンバーの入れ替わりが多くて、それゆえに楽曲の作風が違います。全ての楽曲に歌声は一切ない、インスト楽曲になっています。彼らの曲名は日本語で30文字(句読点、記号含む)で成り立つ、特徴があります。「残響系」を象徴する、ポストロックバンドの一つです。

te'


・UNISON SQUARE GARDEN(ユニゾン・スクエア・ガーデン)

略称「ユニゾン」として、3ピースで成るロックバンドです。3単語のバンド名を付けたくて、語呂合わせの良いこの名前になりました。メンバーは、ボーカリストの斎藤、ベーシストの田淵、ドラマーの鈴木です。爽やかなリズム感が良い歌声、言葉遊びがあふれる日本語と英語の歌詞、迫力あるギターとベースとドラムの演奏が交わる、明るいポップスロック作風になっています。
9mmはユニゾンと交流したことがあります。お互いの楽曲をトリビュートアルバムでカバーしました。

UNISON SQUARE GARDEN


・back number(バックナンバー)

略称「バクナン」として知られている、群馬県出身の3ピースのポップスロックバンドです。メンバーが、バンドマンに恋人を取られた出来事から、恋人に振られた自分は「型遅れ」だと思った意味をこめた、バンド名です。メンバーはボーカリストの清水、ベーシストの小島、ドラマーの栗原です。
情緒的でゆったりしたメロディー、日常生活や恋愛を現実的に描いた歌詞、ギターポップスロック作風の楽曲になっています。

back number


・BLUE ENCOUNT(ブルー・エンカウント)

略称「ブルエン」として、熊本県で結成されたオルタナティブロックバンドです。「色のついたバンドは売れる」というジンクス、『ブルー・エンカウンター』という香港映画の題名が気に入って、付けられたバンド名です。メンバーはボーカリストの田邊(たなべ)、ギタリストの江口、ベーシストの辻村、ドラマーの高村です。
さまざまなジャンルが交わるロック作風で、感情的なメッセージ性をこめた歌詞が特徴です。技術が高い楽器隊の演奏、熱いライブトークで注目されるバンドです。
9mmはブルエンと交流したことがあり、9mmのトリビュートアルバムに参加しました。

BLUE ENCOUNT


・打首獄門同好会(うちくびごくもんどうこうかい)

略称「打首」なる、和風なバンド名で、3ピースのラウドロックバンドです。メンバーの父親が見ていた時代劇『遠山の金さん』を元に、和風なバンド名にしました。メンバーはボーカリストの大澤、ベーシストのjunko(ジュンコ)、ドラマーの河本です。インディーズレーベルで活動しています。
日常生活でよく感じることをテーマに、脱力感あふれる歌詞と歌声を激しいラウドロックに乗せた、楽曲の作風です。題名は、数々のネタのパロディーになっていて、非常にシュールです。

打首獄門同好会


・NICO Touches the Walls(ニコ・タッチズ・ザ・ウォールズ)

略称「ニコ」と呼ばれる、ポップスロックバンドです。「壁に触れた時に、新しい世界を作り出すイメージにつながる」という意味をこめた、バンド名です。「ニコ」とは外国人の女性の名前で、バンド名に付けました。メンバーはボーカリストの光村、ギタリストの古村、ベーシストの坂倉、ドラマーの対馬です。
複雑な感情を描いた歌詞、爽やかな明るさと暗さが混じったメロディー、幅広いジャンルの作風があるバンドです。2019年に解散しましたが、名曲は今も語り草になっています。

NICO Touches the Walls


☆まとめ

以上、9mmが結成された2004年当時の邦楽ロック界、9mmと同じ年に結成されたバンドをまとめました。皆さんに挙げたバンドたちをおすすめします。
振り返ると、ギターロックがまだ主流だった邦楽ロックは、ブリの少女時代の思い出として、残っています。今日の邦楽ロックのように、様々なジャンルを取り入れた作風のバンドが広がり始めた時期でした。9mmが活動を始めた出来事について、ブリから見て、順調ではない状況からうまく活動できるようになって、彼らはロックへの情熱を捨てなかったと、気づきました。
9mmの結成地である、横浜は9mmにとって、重要な場所です。9mmファンにとって、聖地のような場所です。9mmが結成20周年を迎えた、2024年をお祝いできて幸せです。

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