温故知新
スチャダラパーのファーストアルバムを久々に聴いた。
運転中だったので、すっと耳に馴染んだそれは、
…それはそれはもう、響いた。
ウィットとユーモアに富んでいて、
アイロニックで、
自分たちの色をバキバキに効かせながら
先人たちへのリスペクトがひしひしと伝わってきて、
かっこよかった。
二十歳そこいらのやんちゃな人たちが、真剣に遊んでいて、パワーがあった。
すっかりおじさんになった最近の彼らも、最高にイカしていてかっこいいんだ。
聴いていて、こんなことを思っていた時期のことを思い出していた。
やりたいことは全部、どっかの誰かが既に先にやっている
自分がやることなんて、この世界にひとつもないんじゃないか?
人生の時間の切り売りをして、割り当てられた仕事し、それなりに相応の収入を得て、
腹がへったら物を食い、眠くなったら床に就く
ああそんなもんなのかな、この世界に存在することって。
ー幼少の頃から度々突きつけられる質問、
「将来の夢は?」
優等生だった私は、実家の自営の店を継ぐことが最良だと思っていた。
または、社会のまっすぐなレールに乗ることが良いと思っていた。
良い成績を収め、スポーツもこなし、友人やご近所さん、親戚ともうまくやり、進学し、就職し、家庭を持ち、次世代へつなぐ。
しかし、自分の足で歩くようになり、進みたいのに進めない。
進んでいる感じがしない。
気に入って買ったブーツが、すごく重く感じる。
「社会のためになることをしよう」
「みんななかよく」
「成長」
手垢に塗れた、暑苦しい言葉
冷めた天邪鬼ながきんどうだった私は、諸々を人並みにこなしつつ、物事をいつも斜めから見ていた。
さわりだけやれば、あとはなんとかなってきた性格が、良くも悪くもここまで自分を運んできた。
でも
ー社会なんて結局 大きい声がまかり通り、
耳障りの良い言葉で整理され、
それっぽいものがちやほやされる。
経済だって動いちゃう時がある。
時には人の命まで。
いつだって、陽の当たらないところに、小さい花が咲いているのに。
何かの拍子に世界のからくりに気づいたら、
すごく悲しくて、怒って、やるせなくて、
絶望の縁に足を突っ込んでいる気分になって、
でも毎日 朝が来て、夜になって
人に会い、食事をし、経済をまわし
おお、何やってるんだろうか
と ぽつんと考えが浮かんだら、
澄んだ 冬の暗い空に飲み込まれそうで、
でも 星が綺麗だなぁ、と気づいたりして
いつだって見倣うものは自然だよなぁ、と思い起こし。
それなりに歳を重ねたら、こんなことの繰り返しだ。
万物の根源は数字だって言ったのはピタゴラスだっけ?あるいは水?火か?
そうだねぇ
大昔から人間はそんなことを考えていたのか。
来る日も来る日も営みを絶やさず。いずれ物体として姿をなくすとしても。
例に漏れず、現代に生きる自分も、生物として物を摂取し、生命活動を続けなければいけないとしたら。
小学校の帰り道、ブランコに乗りながら、世界の始まりとか終わりとか 宇宙のこととか
そんなことを一緒に考えていた Aちゃん
何やってるんだろうなぁ。
前に見かけた、某お茶のペットボトルのパッケージに発表されていた 9歳の俳句
「消しごむで 世界の闇を 消せるかな」
そっと 抱きしめてあげたい気持ちになった
あったかいお布団で 眠れているといいなぁ。
冒頭の、輪郭を残しつつも今はしっかりと自分の中に消化して取り込んだ考え
「やりたいことは全部、どっかの誰かが既に先にやっている
自分がやることなんて、この世界にひとつもないんじゃないか?」
というところに戻ると
それはそう もちろんそう
と思いながらも、
自分の手の届く範囲で、目に見える距離感で、確実に、
何かを届けることが ちょうど良いんだろうなぁ
と 切に思う。
だから目の前の人に、珈琲を淹れる。
いってらっしゃい、とお見送りする。
良いタイミングで、アキ・カウリスマキ 枯れ葉 を見た。
なんだろう、世界への憂いと優しさにじんわり満ちていて、
やるせなさ、どうしようもなさ。
自然や人間や文化へのリスペクト。
同じ時代に生きていて、作品を享受できる幸せよ。
みんな静かに怒ってる。でも愛すべき毎日を送っている。
くだらないことでいがみあったりしている暇なんてない。
喫茶店の可能性について。わたしがやる喫茶店の意味について。
先人たちの残した賜物、古い物を取り込んで背中を押され、アップデートして、自分の色をトッピングして。自分の手で形にして、届ける。
今はそれしかできないけれど。
そこには必ず愛を伴わせて。愛というと大袈裟だな。
言葉ってむずかしくてたいへんだな。
今日も 空洞の心に 熱い珈琲を流し入れ
隙間風で震えないように ちゃんと服を着る。
街は年末らしい空気が流れていて、とてもよく晴れている。
P.S.
この間、いつものようにspotifiで一枚のアルバムを聴き終わった後、手が塞がっていたのでそのままおまかせして垂れ流しにしていたら、
スチャダラ
RCサクセション
奥田民生
シナロケ
YMO
電気グルーヴ
サディスティックミカバンド
SUPER BUTTER DOG
Cornelius
オザケン
ゆら帝
クラムボン
フリッパーズギター
ピチカートファイヴ
サニーデイ
…などというプレイリストで楽しませてくれ、とても良かった。(良すぎて遡って記録した)
写真は、杉並某所で見かけた、とても良い壁。Baby It's blue と書いてあります。
なにかピンと来た方、ご連絡ください。珈琲でも飲みに行きましょう。お友達になりましょう。