【ROOKIE!】市川雛菜におけるLPPを整理したい
おはようございます!海です。
今回は【ROOKIE!】市川雛菜を整理していきます。
このカードの2話目にはLPP(Legitimate Peripheral Participation:正統的周辺参加)というタイトルが付けられているんですが、実装当時は「なんのこっちゃようわからん!」という感じでスルーしちゃったんですよね。「雛菜の横顔かわいいねえ~」「シャニマスの描く横顔が好きです」「小糸ちゃんのかばん、ランドセルにしか見えなくてワロタ」とか言いながら。
……だったんですが、この前知人たちとコミュを見ながら「LPPってなんやねん!」という話をした結果、ようやく得心の行く読み方を掴むことが出来たので共有したいと思います。
(話し合ったときに「LPPって別の言葉の略称なんじゃね?」という疑問も出てきましたが、カード名が「ROOKIE!」なので正統的周辺参加で間違いないだろうという結論に至りました)(詳細は後述します)
LPPとは
LPP…Legitimate Peripheral Participation
日本語訳は「正統的周辺参加」で、とあるコミュニティにおいて、新参者が徐々に経験を積んでいき、そのコミュニティの中心人物となるまでの過程を学習と捉える理論体系……だそうです。新参者がコミュニティ外縁部から中心部に近づいていく様を「周辺参加」と表したらしい。
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カード名が【ROOKIE!】(新参者)なので、2話目の「LPP」は正統的周辺参加に結びつけたタイトルで間違いないと思うんですが「だから何?」という感じなので、もう少し掘り下げます。
正統的周辺参加論(以下LPP)が唱えられる以前、それまで「学習」というものは「与えられた教科内容を理解すること」として扱われてきました。(ex.熱化学方程式の理解、歴代徳川将軍の暗唱)
一方でLPPは「コミュニティの新参者は、徐々にコミュニティへの参加度合いを増していく。この新参者が周囲との関わりを持つ中で自覚的なアイデンティティを形成し、コミュニティにおいてなんらかの役割を持った中心人物になっていく過程こそ学習である」とする考え方です。
……?
どことなく雛菜らしさを感じられる考え方な気はしますが、そもそものLPP自体が結構ふんわりした考え方なので、これだけ見ても【ROOKIE!】のコミュ内容と結びつけて考えにくいんですよね……
なのでLPP単体で掘り下げるのはここまでにして、コミュの方を見ていきたいと思います。
【ROOKIE!】市川雛菜のLPP
問題の(?)2話は、
・雛菜が透とお昼ごはんを食べるために2年のフロアへ向かおうとする。
・その途中で小糸を見かけ、お昼ごはんに誘う。小糸がついてくる。
・怖い先輩像に怯える小糸と、何回も2年のフロアに行ったことのある雛菜のやりとり
・「もし本当にいたらお菓子あげて許してもらわなきゃね~」のやりとり
・円香と遭遇し、お昼ごはんに誘う。
・「怖い人に会ったらお菓子渡さなきゃいけないって」「小糸ちゃんが言ってたから」と言いながら円香にお菓子を渡す。
という内容になっています。
LPPを踏まえて2話を読むと、雛菜の幼馴染内における役割(アイデンティティ)は、アレしたいコレしたいとわがままな提案をしたり、積極的に周囲の人間を誘ったりすることだろうと推測できます。WING編でも、雛菜は「わがままな雛菜」を自覚しています。
振り返ってみればRのサポートコミュもそんな感じの話だったな~と。レッスン終わりにスイーツ食べに行くことを提案したり、小糸を透の家に集まるよう誘ったり……まあそれが雛菜だからと言われればそうなんですが。
ただ面白いのは、LPPにおける学習が「新参者が周囲との関わりを持つ中で自覚的なアイデンティティを形成し、コミュニティにおいてなんらかの役割を持った中心人物になっていく過程である」という点です。
つまりこのカードで描かれているのは、雛菜は3人と関わりを持つ中で、徐々にあのような個性を獲得していったということなのではないかと思います。新参者である雛菜が、幼馴染と関わる内にどのような役割を持つに至ったか……みたいなコミュ。
となると1話で雛菜が遅刻してきたことも妙に納得がいく……気がします。雛菜は小学校から幼馴染の輪に入ったので、そういう意味の「新参者」なのかと。
余談1:福丸小糸はノクチルの「新参者」?
LPPは「自分が何者になっていくのか、どういう役割を持つ中心人物になっていくのかを学習者がイメージできること」を良い学習としています。
小糸は天塵時点だと「3人に追いつけていない私」を変えるため、3人と一緒にいられる自分でありつづけるためにアイドルをやっています。(WING編ではまた別の理由を見つけましたが)
つまり現状「4人の中における役割を自覚できていない」「3人の輪に入れていない」という感覚を覚えています。【ROOKIE!】のイラストでも小糸だけ3人から離れたところにいて、かつ日陰に入ってるし……
と思ってオタクdiscordで「小糸ちゃんだけ幼馴染の中で役割を自覚してないと思うんですけど、どう?」って疑問をぶつけてきたときのやり取りがこちら↓です。結論を先に言うと「小糸がLPP文脈における新参者かどうかは分からん」という感じです。
余談2:幼馴染の変容
LPPでは「コミュニティは、単に新参者が参入してくるだけでなく、古参がいずれ新参者の台頭により交代を余儀なくされたり、どこか別のコミュニティの新参者となることで変化していく。そういうコミュニティの再生産、変容、変化の中に学習がある。古参の位置に安住している人間は、自らが新参者になる可能性を自ら断っている」としています。
まとめ
LPPを踏まえたうえで、一般的な語彙を使ってこのカードを表すなら幼馴染4人の馴れ初めと雛菜のアイデンティティ獲得過程を現代で再現したコミュとかそんな感じなんでしょうか。そう考えると(Rを除けば)初めて実装されたノクチルのサポートカードという点もなんだか……なんだか……
LPP、変化することを是とする考えである点とか、コミュニティにおけるアイデンティティ獲得に焦点を当てている点とか、ノクチルと絡めて考えると色々面白いです。
おしまい!!!!!!!!!!!!!!!ありがとうございました。
追記
公開後クリティカルなご指摘を頂いたり、書き忘れたことを書きたくなったりしちゃったので追記します!
まず、そもそもこのカードで描かれている周辺参加は「2年という先輩学年に馴染む、新参者の市川雛菜」とも読めるのでは?というご指摘なんですが……
この読み方、ありえるな……ってなっちゃって(照)。
ラストシーンで2年の先生に怒られる雛菜も、要は「未知のコミュニティに躊躇いなく入っていって、中心人物に至るまでがはやい」ってことを表してるように見えますし。イラストの小糸だけ3人から離れて日陰に入ってる構図もかなり説得力が出てきます。
この読み方を踏まえてLPP的にまとめると、そういう「他のコミュニティに躊躇なく参加して、常に新参者であり続けようとする姿勢を持つ雛菜、そのコミュニティの中心人物になるまでの学習速度が速い雛菜はすごい!」という感じでしょうか。
あとこれは書き忘れたことなんですけど、コミュニティには、外縁部にいる新参者の手を取り、内部へ誘う役割の構成員も重要で、そういう構成員が居る限り、コミュニティに未参加の「未来の新参者」もその構成員も、コミュニティにとっては大事な役割を持っている……らしいです。
雛菜だけでなく小糸に気を使う円香もその構成員の(新参者の手を引くという)役割だったり、そもそもノクチルがシャニマス新規ユーザー層への取っ掛かりの(新参者の手を引くという)役割だったりするのかなということをぼやぼや考えていました。
以上です!なんかあったらまた追記します。「ここはこうじゃね?」というお考えなどありましたら是非是非いただけると嬉しく思います……!
参考文献
ジーン・レイヴ, エティエンヌ・ウェンガー, 佐伯 胖訳(1993)『状況に埋め込まれた学習—正統的周辺参加─』産業図書.