【台本】もしも、世界最古の引きこもり天照大御神が、コンビニ店員をしたら。
あなたは、天岩戸の物語を知っているだろうか?
そう。天照大御神(アマテラスオオミカミ)が天岩戸に隠れてしまったというやつ。そして、出てきてもらうために、どんちゃん騒ぎしてたら、
なにごとかしら?と興味を持って岩戸を開けたというあれです。
その天照大御神(アマテラスオオミカミ)が、もしも「コンビニ店員」をしたらどうなるのか。そんなお話です。
【登場人物】
天照大御神(アマテラスオオミカミ):神さまなのに、コンビニで働いている。人間の客の態度の悪さにムカついている。
今回作品内では、アマテラス、アマテラスちゃんと呼んだりすることもある。
イザナギとイザナミの子。アマテラス・ツクヨミとスサノオは、三貴神と呼ばれている。
天照大御神最高神であるため、あらゆる福徳・招福のご利益があるとされており、
主に国土安泰・子孫繁栄・五穀豊穣・開運などがあげられます。
人間の客:とにかく態度が悪い。カチンとくる感じの男性客
店長: 人間。めっちゃいい人。
イザナミ:ご存じ国生みの神。女性神。
アマテラス・ツクヨミ・スサノオの母。
イザナギ:ご存じ国生みの神。イザナミの旦那。男性神。
アマテラス・ツクヨミ・スサノオの父。
スサノオ:男性神。イザナギとイザナミの子。
アマテラス・ツクヨミとスサノオは、三貴神と呼ばれている。
豊穣神、防災除疫の神、歌人の神、冥府の神、荒ぶる神の祖
ツクヨミ:農耕神・海の神・占いの神。ツキヨミと書かれることも。
後世では一般に男神と考えられているが、記紀では性別の記述はない。
イザナギとイザナミの子。
アマテラス・ツクヨミとスサノオは、三貴神と呼ばれている
~ここから〜
天照大御神(アマテラスオオミカミ):いらっしゃいませ~。
人間の客:(人間の客、店内をうろうろ)
人間の客:(商品決定レジへ向かう)
人間の客:(バサッと荷物を置く)
天照大御神(アマテラスオオミカミ):(神に向かって何たる態度!これください。ぐらい言えんのか!)
天照大御神(アマテラスオオミカミ):ピッピッピッ。1200円です。
人間の客:(スマホをいじりながら金を出す)ん。これで。
天照大御神(アマテラスオオミカミ)::(まったくこやつは、なんたる態度だ。人間のくせに横柄だ。)かしこまりました。
天照大御神(アマテラスオオミカミ):8800円のお返しです。ありがとうございました。
(人間の客帰る。)
天照大御神(アマテラスオオミカミ):(時計を見る)
ふぁ~。やっと休憩~。店長~。天照(アマテラス)休憩入りまーす。
店長(人間):はーい。どーぞ。
(休憩中に、イザナミ、イザナギ、ツクヨミ、スサノオが来店)
スサノオ:あれ?天照(アマテラス)ちゃんいないじゃん。
イザナミ:たしかにいなさそうね。
ツクヨミ:ほんとだ。
イザナギ:いないな。
スサノオ:じゃぁ帰る?
イザナギ:まぁ。まて。どうやら、この人間界では「きゅうけい」という時間を「ばいと」に与えなきゃいけないらしい。
もしかしたら、その「きゅうけい」とやらに入っているのかもしれんぞ。
イザナミ:さすが私の惚れたおとこ。物知りだわ。
イザナギ:(照れる)
スサノオ:はいはい。そこ。(パンパンと手を打つ)
イザナミ:ごめん。
スサノオ:いいって。じゃぁ。だれか聞きにいこうよ。
そうだなぁ。ツクヨミ行って来てよ。
ツクヨミ:・・・・・・
スサノオ:イヤ?
ツクヨミ:……がんばる。
スサノオ:たのんだよ。
ツクヨミ:うん。
(ツクヨミ戻ってくる)
ツクヨミ:ただいま
スサノオ:おかえり
イザナミ:おかえり
イザナギ:おかえり
スサノオ:どうだった?
ツクヨミ:…うん。イザナギくんの予想通り、「きゅうけい」とかいうやつに入っているらしい。あと5分でレジに戻るってさ。
イザナギ:ほんとか?じゃぁ。みんなアマテラスが来るまで店にいようぜ。
せっかくだし、なにか買っていこう。
イザナミ:うん。
ツクヨミ:うん。
スサノオ:うん。
(天照大御神、レジに戻る)
(全員、天照大御神のレジへ並ぶ。)
天照大御神(アマテラスオオミカミ):次の方どうぞ。
スサノオ:これください。(缶コーヒーとポテチ)
天照大御神(アマテラスオオミカミ):220円です。(といいながら、顔を見る)
天照大御神(アマテラスオオミカミ):あっ!スサノオくんじゃん!
うそー。なんで?なんでいるの?
スサノオ:きみに会いに来たのさ……。なんてね。
実は、イザナミ、イザナギ、ツクヨミも一緒だよ。
スサノオ:ほら。(列の方を指さす)
天照大御神(アマテラスオオミカミ):まじで?
(列の方を見る)わぁ。ほんとだ!やばっ。どうする?
スサノオ:しごと終わったら、みんなでカラオケ行かない?
天照大御神(アマテラスオオミカミ):いいね。カラオケ。
いくいく。
スサノオ:よかった。じゃぁ。それで。
天照大御神(アマテラスオオミカミ):うん。
(店員の顔に戻り)ありがとうございました。
天照大御神(アマテラスオオミカミ):次の方~。
ツクヨミ:これください。
天照大御神(アマテラスオオミカミ):110円になります。
ツクヨミ:(聞こえるか聞こえないかぐらいの声で)…ありがとう。
天照大御神(アマテラスオオミカミ):次の方どうぞ。
イザナミ:これください。
天照大御神(アマテラスオオミカミ):360円になります。
イザナミ:ありがとう。
イザナミ:じゃぁ。あとで月読町(ツキヨミちょう)にある
「カラオケ三貴神」へ来てね。
天照大御神(アマテラスオオミカミ):うん。
天照大御神(アマテラスオオミカミ):次の方。
イザナギ:これください。
天照大御神(アマテラスオオミカミ):450円になります。
イザナギ:では。あとで。
天照大御神(アマテラスオオミカミ):うん。
(時計を見る)
天照大御神(アマテラスオオミカミ):(ちょうど上がれる時間ね)
天照大御神(アマテラスオオミカミ):店長~。上がらせていただきますね。
店長:はーい。いいよ。おつかれ~。
天照大御神(アマテラスオオミカミ):おつかれさまです。
店長:あっ。そうそう。アマテラスちゃん、明日おやすみにしといたから。
天照大御神(アマテラスオオミカミ):えっ?
店長:だってほら。みんな、アマテラスちゃんに会いにわざわざ神様の国から来たんだろ?
それに、いつもよくやってくれているから、明日やすみをプレゼントするよ。
ゆっくり楽しんでおいで。
天照大御神(アマテラスオオミカミ):ほんとですか!!店長ありがとうございます。(店長に抱きつく)
店長:おいおい。抱きつくな。いいってことよ。
ほら。早く行きなさい。
天照大御神(アマテラスオオミカミ):はい。ありがとうございます。
おつかれさまでした!
(店を出てカラオケ屋のある月読町(つきよみちょう)へ)
(歩くこと10分)
(カラオケ屋、到着)
イザナギ、イザナミ、ツクヨミ、スサノオ:おーそーい。
天照大御神(アマテラスオオミカミ):ごめん。ごめん。これでもマッハで来たんだけど。
スサノオ:うそうそ。急いで来たのはわかってる。ごめんね。
ただ、みんなはやく会いたいって気持ちが大きくてね。
天照大御神(アマテラスオオミカミ):ありがとう。
スサノオ:じゃぁ。さっそくなんか歌おうよ。
アマテラスちゃんなににする?
天照大御神(アマテラスオオミカミ):そりゃやっぱり……。
「神のまにまに」でしょ!
アマテラス以外の全員:だと思った。
(アマテラスが、歌唱中)
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
(曲、終わり)
アマテラス以外の全員:パチパチパチパチ
スサノオ:いやぁ。やっぱり、アマテラスちゃんの歌う
「神のまにまに」はいいなぁ。
次だれ歌う?
(近くを見ると、イザナミとイザナギは勝手に盛り上がっている。
ツクヨミは、すみっこにピタッと引っ付くように座っている)
スサノオ:もう。みんな自由だなぁ。さすが神。
そしたら、ぼくらも、話そうよ。ツクヨミもこっちへおいで。
ツクヨミ:・・・・・・
ツクヨミ:(すごく勇気を出して、スサノオとアマテラスの近くに来て座る)
スサノオ:おお。ツクヨミ、ボクの近くにすわってくれてありがとう。
スサノオ:なぁ。こういう機会ってあまりないから、
思ったこといっちゃうけどさ……。
天照大御神(アマテラスオオミカミ):なーに?
スサノオ:ボクね。みんなで力を合わせて、
人間も神も両方が生きやすい世界を創れたらどんなにいいかなぁ。おもっているんだけど……。
天照大御神(アマテラスオオミカミ):素敵ね。
スサノオ:だろ?
スサノオ:そこで、おねがいがあるんだけど……。
天照大御神(アマテラスオオミカミ):なーに?
スサノオ:実現させるの手伝ってくれないか?
天照大御神(アマテラスオオミカミ):いいけど……。わたしに、できるかしら?
スサノオ:だいじょうぶ。きみならできるよ。アマテラス。
きみにしかできないことなんだ。
だからおねがいだ。助けてくれ。そうスサノオは、懇願した。
それを見たアマテラスは、覚悟を決め、再び世の中を照らすことにした。
その光は、以前のそれより「さらにやさしく強くあたたかく」なっていた。
それは、たとえようのない美しさだった。
なんというか……。単にあかるいだけではなく、慈愛に満ちた世界がそこにはあった。
【完】