女性を差別しないメンズリブ#5, 「構造的優位」による男性の暴力
「男性同士で考える」会、5回目を開催しました。
「男性同士で考える」「女性差別をしないメンズリブ」の会
第5回の開催です。
今回もいつものメンバー4名で行いました。
新しい参加者を募集中です。
読書会(4章)・感想
読書会は
『どうして男はそうなんだろうか会議』(筑摩書房, 2022)
の4回目。
第四章「男性が乱用しがちな『構造的な優位』とは?
―その『優位』を利用しない手立てを考えよう」
「構造的優位」という言葉から、有害な男性性や
男性の暴力性について考えました。
以下、雑多ではありますが、
今回の読書会と話のメモです。
◆全体を通して
☆ この文章を読んで初めて平山亮さんのことを知ったが、とても興味深い視点を持った方だと思った。
☆男らしさから降りられないと言う男性が、「女性がそれを許さないから」という理由で女性を敵に回していることもよく目にする。自分の問題や男らしさが生み出した男社会を別の人のせいにする男性について、分かりやすく説明されていた。
◆有害な「男性たちの支え合い」
p.142「ここで問題なのは、女性に対する自分の優位が脅かされないことを目的として、男性たちが支え合っていることです。そういう意味での支え合いは、むしろできなくなってほしい」
➡これは明らかに「女性への攻撃」でしかなく、
「支え合い」という肯定的な表現にはむしろ違和感をおぼえた。
◆男性によって理想化された女性像
p.146「『日本の包茎』を書く過程でわかったことは、男性の医師や雑誌編集者が、仮性包茎をおとしめる言説を、広告記事などを通して男性読者に向かって発信していたことです。」
➡男性によって理想化された女性像に脅かされるという経験は、自分もよくあった。
(例)
①ファッション雑誌を読むと、「女子受けコーデ」などの表記があること
②脱毛サロンの広告で「毛のある男性は生理的に無理」と表記があることなど…「これをしないと女性から気持ち悪がられるかもしれない、悪く言われるかもしれない」という不安はとてもあった。
◆女性に対して「抵抗」(?)する男性
p.147「でも男性は、自分を抑圧してくる男性に対して、あまり抵抗しているようには見えないんですよ。これはなぜなんでしょうね。自分を抑圧してくる女性に対しては相当、抵抗しますよね。」
➡この現象はとてもよく理解出来る。女性から「抑圧」(?)された時に、「相手が抑圧してきたから抵抗しているんだ」という男性をよく見かけるが、その対象が女性である場合に限ることもよくある。それは「抵抗」なのか?
「構造的優位」を利用してマウントをとる男性
p.148「構造的に優位にある者が、その優位を利用して何が悪い、という価値観があるのかもしれないですね」
➡年収・仕事・立場…様々な理由でマウントをとる男性は確かによく見かける。そこにあるジェンダー不平等に全く目を向けず、自分が優位にある立場を自分の実力だけで獲得してきたと錯覚している男性も多い。
◆男性の「幼稚な」コミュニケーション
p.150「『つらい』と言えば助けてもらえるだろうという、赤ちゃんマインド的なところが問題だと思うんですよ。女の人に助けてもらいたいなら、助けてもらえるようにすればいいだけで、相手の女性が助けることに合意してくれたなら、それでいいかなという」
➡捉え方によっては、男性が都合の良い解釈をするリスクもあると感じた。この直後に、
「女性からの『合意』を取り付けるための権力を持っていることをまずは意識し、そういう権力を知らず知らずのうちに使い、自分の世話を無自覚に相手に義務づけていないか、ということに気をつけながら、女性との交渉を行うべきですよね」
という表現もあり、前提にある男女の立場の不均衡さを意識したうえで交渉するべきだと明示している。しかし、先ほどの文だけを読んで、「女性に助けてと素直に言って助けてもらえばいいのだ」と誤解する男性が出てこないか心配になった。
➡本当に水平で対等なコミュニケーションとは何なのか。例えば、「労働環境」「経済格差」そのようなものが不均衡な状態で対等なコミュニケーションは叶わないと思う。当人たちの意識の問題だけで、「対等な合意」を得るというのは無理だと思った。
➡「女性は察してくれるであろう」という前提の上で、察してもらおうとするのは幼稚なコミュニケーションだと感じた。
◆わかった気にならないコミュニケーション
p.163「私たちにできるのは『他者の最善を、完全にわかったつもりにはならない』という、非・掌握の姿勢を取り続けることくらいで。それは友人に対してもそうだと思うんですよね」
➡誰に対するコミュニケーションにおいても、「わかった気にならない姿勢」はとても大事だと思った。
p.164「振られたショックで泣いてしまい、その場がシーンとなってしまったんですね。友人たちはこちらを励まそうと『盛り上がる歌を歌おうぜ!』みたいにしてくれたんですけど、それがちょっとしんどい感じもあって」
➡コンフィダントな関係(書籍参照)において、「こちらの気持ちを全く配慮せずに、良かれと思っての行動」に悩まされることはホモソーシャルでよくある。自分もとても悩まされてきた。
➡本人の気持ちを察しないで「良かれと思って」の行動が働くこと、それに対して「それは自分がなおのこと傷つくからやめてほしい」と言えなかったこと、どちらとも男性性が働いたことによる弊害だなと感じた。
後半フリートーク
◆出来事の共有
☆多様性や性教育、女性運動などを謳った人物や団体の差別発言・行動に対して思うこと
①「アクサグループ」と「TRP(東京レインボープライド)実行委員会」に対して抗議活動を行った個人に対し、実行委員会が警察を呼び言論弾圧的な行動を起こしたとされる事件
②「女性による女性のためのフェムテック」を啓発するイベントが、その名が広がってきたことで男性が介入してくるようになり、本来もっている意義をなくしてしまった事件
③性教育のyoutubeに出演していたお笑い芸人が、ラジオで女性蔑視発言をしていた事件
➡多様性やジェンダーフリー・女性差別に言及している個人や団体が、こういう問題を起こすということがとても悲しいし怒りが湧いてくる。
➡TRPに参加していた時は、「異性愛以外の性的指向が認められたコミュニティだ」と感じて素敵なイベントだと感じていた。しかし今振り返ってみると、男性優位社会の影響でLGBTQの中にも生まれてしまっているヒエラルキーを配慮出来ていない側面が強いイベントでもあったように感じる。
➡TRPについて…「男性と女性の不均衡さ」を忘れてしまったり置き去りにしてしまった上で、「多様性」が語られるのは危険であると思う。
☆ゲイ男性が不動産で入居を許してもらえなかったというツイートを見て思ったこと
本業が不動産企業であるが、「この事件がどういう理由で起こったのか」が私はあまり理解できなかった。
基本的に家賃滞納など、金銭的に問題が出ないという点を見て部屋の賃貸が可能かを判断する。そのため、ゲイカップルというだけで入居を断るケースは本当にあるのだろうかと思った。
☆ジャニー喜多川の性加害事件について
➡事件そのものも酷いものだが、これを一切報じないマスメディアが本当に情けなくてたまらなくなった。
➡男性のあいだにあるヒエラルキーが生み出した酷い事件だと感じた。周囲の反応も含めて、差別や暴力が肯定されてしまう国だと改めて感じた。
◆面白かった書籍やイベントの共有
☆「テクノコスプレ研究会」発行の『女装と思想』
女装男性であるあしやまひろこ氏が、当事者としてどういう経緯で女装をするようになったかが書かれている。
☆「エトセトラVOL.8 特集 アイドル、労働、リップ」
実際にアイドルとして活動を続けてきた方や、アイドルを応援しているファンなど、様々な側面からアイドルについて考えているエッセイ集。
アイドルは性役割規範の押し付けが未だとても多い職業だなと感じるからこそ、自分がどうアイドルと向き合っていくかが重要だと感じた。
☆「99分de名著」
「メンズリブや男性学はどのように社会を変えられるか?」というテーマで行われたオンラインイベント。
「恐らく、メンズリブや男性学には、家父長制や男性のヒエラルキーを崩壊させる働きはないのではないか」とあり、その中で「男性の運動や男性としてどう動いていくか」という話だった。特に、「マンボックス」という表現を初めて聞き、とても興味深い例え方だと思った。
今回紹介された本など一覧
おわりに
会について関心のある方は、是非ご連絡ください。
また、今後の当会の活動についても関心をもっていただき、
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していただけましたら幸いです。