【目指せソムリエ#21】美食の宝庫、シュッド・ウエスト
はじめに
プレソムリエの皆さん、こんばんは。今回でついにフランスの範囲の学習は最後!!近年のソムリエ試験ではフランスの配点はそこまで高くありませんが、これから始まる長いソムリエ人生の中ではとてもとても重要な基礎になると思います。
フランスの〆はシュッド・ウエスト地方です!シュッド・ウエストはその言葉通りフランスの南西に位置していて、スペインと隣接しています。シュッド・ウエスト最大の都市トゥールーズはフランス国内人口第4位の街でもあります。
テラコッタレンガの赤い街並みから、バラ色の都市と言われるそうです・・!なんて素敵なネーミング!!
南西地方のワインはプロヴァンス地方のような薔薇色のロゼ♪というよりは、ボルドー地方のような深紅のように深い赤ワインが伝統的に造られています。
シュッド・ウエスト地方の概要
シュッド・ウエストは旧地方区分のアキテーヌ地方とミディ・ピレネー地方を併せ、そこからボルドー地方(ジロンド県)を除いたフランス南西部の広大な地域です。中央高地からピレネー山脈のふもとまで広がり、現行政区分のオクシタニー地域圏とヌーヴェル・アキテーヌ地域圏の13県にまたがっています。
ここで造られるワインは個性豊かであり、垢抜けないワイン産地のイメージもあったのですが、新世代の台頭とともに、ワインは洗練されたものへと進化しつつあります。
ベルジュラックの近くには、ユネスコの世界遺産に登録されている「ヴェゼール渓谷の先史的景観と装飾洞創群」という先史時代の遺跡群があります。
また、ピレネー山脈の麓には聖母伝説で有名なナルドの町が位置しており、毎年600万人もの巡礼者や観光客が訪れています。
さらに、世界遺産の「フランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」には、ペリグーのサン・フロン大聖堂、アジャンのサン・カブレ大聖堂、バイヨンヌのサントマリー大聖堂など、多くの教会や大聖堂が登録されています。
トゥールーズ市は航空機産業と宇宙産業の重要な拠点であり、エアバス社が組み立て工場を有しています。CNES(フランス国立宇宙研究センター)の研究部門も存在し、メテオ・フランスや人工衛星開発で知られているタレスアレーニアスペース社もここに拠点を置いています。
シュッド・ウエスト地方の歴史
シュッドウエストは8世紀頃に古代ローマ人によってブドウ栽培がもたらされましたが、ムーア人やバイキングがたびたび襲来し、ブドウ畑を荒らし、海路によるワインの輸送も大きな損害を被りました。
12世紀以降、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路にあたり、巡礼者を迎える教会や修道院が増え、ブドウ畑が拡大していきました。(サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路は、スペイン北部にあるサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂に向かう巡礼路のことで、キリスト教の聖地とされています。今でも多くのキリスト教徒の人々や観光客が訪れています。)
カベルネ・フランやマルベックなどのいくつかのブドウ品種は巡礼者により他の地域に広がったと云われています。
他の地方のワインが販路を広げていくのとは対照的に、南西地方のワインはその流れから取り残されていたため、多くの固有品種がこの地に止まりました。1241年には英国王でアキテーヌ公のヘンリー3世がボルドーワインに特権を与え、ガロンヌ川やドルドーニュ川の上流域、その支流沿いのワインをクリスマス前にボルドー港に持ち込むことを禁じてしまい、シュッド・ウエスト地方のワインはさらに取り残されてしまいました。ひどい話ですね(T_T)
19世紀末には、フィロキセラとベト病に苛まれ、壊減的な被害を受けました。踏んだり蹴ったりです。その後はより生産性の高いブドウ品種が肥沃な平地に植えられ、安価な日常ワインの産地となりました。
しかし近年では志の高い栽培農家が量から質へ転換しており、質の高いワインを生み出す地品種に植え替え、特有の個性を備えたワインを造るようになっています!
シュッド・ウエスト地方のブドウ品種
この地域は土壌や気候多様性からなるテロワールがあり、なんと約120種類もの地元品種が栽培されているそうです。
各地区のブドウ品種
広い産地ですので、各地区によって使用される品種も少しずつ異なってきます。
シュッド・ウエスト地方の郷土料理・チーズ
シュッド・ウエスト地方は、その独自の食文化と美食の宝庫として名高い地域です。
特に鴨肉の生産が盛んで、さまざまな鴨料理を楽しむことができます!鴨を低温の油でじっくりと煮たコンフィ・ド・カナールに、フォワ・グラを採取するために肥育した鴨であるマグレ・ド・カナールはシュッド・ウエストの名物料理です!フォワ・グラはレストランで楽しむことが出来るのはもちろん、缶詰や瓶詰めなんかでもよく売られています。
また、トリュフやハムやチーズ等、どれもワインのお供にぴったりなものばかりです!
シュッド・ウエスト地方のA.O.C.ワイン
ドルドーニュ川流域/ベルジュラック地区
ボルドー地方を流れるドルドーニュ川の上流に位置する産地で、ボルドーとほぼ同じ品種が栽培されていますが、ボルドーよりは少し涼しく粘度がちの土壌のため、赤はメルロー主体の口当たり優しいタイプ、白はソーヴィニヨン・ブラン主体のさわやかな辛口や、遅摘みや貴腐化したセミヨンを主体にして造られる甘口などが造られます。
ガロンヌ川流域
ボルドー地方を流れるガロンヌ川の上流に点在する産地です。
西側の地域は大西洋の影響を受け、比較的穏やかな海洋性気候。東側の地域は地中海性気候が混じるようになり、夏は暑く乾燥しています。
ロット川流域
ガロンヌ川に流れ込むロット川流域には、古くから知られるカオールのブドウ畑が存在します。
東側のエリアは大西洋による海洋性気候と地中海性気候の影響を受け、夏は温暖で乾燥し、冬に多くの雨が降ります。西側のエリアは地中海と中央高地の影響を受け、夏は暑く乾燥、冬は寒く昼夜の寒暖差が大きいのが特徴です。
タルン川流域
タルン川はアヴェイロン川に合流し、その後ガロンヌ川とも合流します。地中海性気候の影響による暑い夏と、海洋性気候の影響を受けた湿度が加わります。また、オータンと呼ばれる暑く乾燥した風により、ブドウの生育が促されます。
ガスコーニュ&バスク地区
広義のガスコーニュはボルドーも含まれますが、ここでは含まれません。中央部はアルマニャックの産地があります。バスクはスペインとフランスにまたがるピレネー山脈の麓に位置し、タナやプティ・マンサンなどの地品種から、個性的なワインが生み出されています。大西洋による海洋性気候の影響とピレネー山脈による山岳気候の影響を受け、秋も好天に恵まれ、昼夜の寒暖差が大きいのが特徴です。
リムーザン地区
リムーザン地区は教本に詳細な地図は記載されていないので、A.O.C.の場所を覚える必要はありません。(リムーザン地区自体はドルドーニュ地区の北東あたりに位置します)
以前はブドウ畑がありましたが、フィロキセラやウドン粉病などで壊滅後は回復せず、わずかな畑が残るのみです。
おわりに
フランスの学習、長かったですねーーー!私もまとめるのがとても大変でしたが、無事にここまで辿り着いて達成感でいっぱいです!!まだまだ先は長いですが、小さな達成感を重ねながら美味しいワインを飲んで自分を励まし労りつつ、夏まで頑張りましょう!
プルールではシュッド・ウエスト地方をはじめ、世界各国のワインを取り扱っています。
オンラインショップにはほんの一部のみの掲載なので、ワインをご希望の方はお気軽にこちらまでご相談ください☆
また、よく見直しをしているつもりなのですが、noteの間違いに気がついた方はこっそり教えて頂けるととても助かりますm(_ _)m
(間違いでなくても感想など頂けたら喜びます!!)