圧倒的な力で押し流していく、この世界を。(『しわあわせ』/Vaundy)
日曜日で晴れていて風が強くて外に出たいけど少し億劫だ。何を着てもどんなコーディネートで身を包んでも顔の半分を覆うマスクのことを考えると少し憂鬱だ。
本屋にでも行って何か物色したいとも思うけれど500メートル歩くのがひどくしんどい気もする。あてもなく新宿の街をブラブラしたいとも考えてはみるものの駅のホームで電車を待つ間に心が潰れそうだ。
そうこうしているうちに時間だけが過ぎていく。寝起きのボサボサの頭。惰性で火をつける煙草。渦を巻くみたいな形で捨て置かれている毛布。
そうこうしているうちに時間だけが過ぎていく。
時間。否応なしに流れていく時間。否応なしに流されていく時間。日々を重ねることは簡単なようで難しくて、一日が終わるころに考える。今日は何を得たか、何を失ったか、あるいは何も変わらなかったか。
変わりたいけど変われない、変わりたいけど変わりたくない。大抵の場合、そんな矛盾を抱えながら、大いなる矛盾に飲み込まれながら、生きている。
時間は進むだけで後戻りはできない、もちろん止めることも無理だ、圧倒的な力がこの世界の規律であり問答無用のルールであり、抗うことのできない力だ。
風が強く吹く日曜日、尖った鉛筆で引いた線のようなか細い秒針が、この世界を今日も押し流していく。