The Vaccines – ‘Back In Love City’ アルバムレビュー
The Vaccines – ‘Back In Love City’
はいと言うことで本日は The Vaccines – ‘Back In Love City’をレビューしていければと思います。
今作は3年ぶり5作目のアルバムでもありバンド1stアルバム発売から10周年でもありアルバムです。10年前渋谷のタワレコでリバーティンズの後継者という触れ込みでCDを手に取ったことを今でも覚えております。
そこから10年今作についてフロントマンのジャスティン・ヤングは次のように語っています。「ラヴ・シティは僕たちバンドが常に魅力を感じる、人間の感情、そして人間同士が持つ繋がることへの渇望というテーマから生まれたんだ。ある意味では僕たちはかつてないほど繋がっているとも言えるよね。だけど同時に僕たちは過去100年間で最も二極化しているし、世界はどんどん冷たくなっていく。もし愛や他の感情をすべて失ってしまった土地があったとして……ラヴ・シティに行けばそれを取り返せるとしたらどうする?」
前作のコンバットスポーツや前々作のイングリッシュグラフィティでから
個人的な印象として敢えてダサく見せるダサカッコよさみたいなところが彼らの印象でしたが、今作はよりその印象が際立ちこれまでのギターロックのサウンドがかなり電子音よりのサウンドへと展開されラブシティという彼らが仮想に作り出したネオンが光る街並みで生まれるストーリーは愛を感じられない現実世界で彼ら作り出した愛を感じられる世界で生まれる男女の恋模様です。
1. Back In Love City
トレンディなギターメロディにドラムの加速する物語。
Saying, "Don't forget your papers For the satisfaction zone"
という歌詞が完璧にメロディーと一体化して、最高にかっこいいです。
どんどん曲が煌びやかになるサビ。 PVで日本語字幕が出てくるのですが、日本のラブホ街をイメージをこの曲で想起させ、これまでの彼らの特徴的なリバーブな上に響くシンセサイザーが彼らのシンプリシティを複雑に交差させキャッチーさと渋谷の円山町のようなトレンディさの両方を掛け合わせたインディーディスコポップでアルバムの方向性を示します。
それは2曲目2. Alone Starでも感じられ、とても短い曲ではあるのですが、 リフのギター音はゲームのレース前のような緊迫感を与え、
シュガーコーテッドという歌詞は彼らの3作目イングリッシュグラフィティの1曲目handsomeにも登場する言葉なのですが、この曲は本来は3作目に収録されるはずだったはずらしいのですが、うまくサウンド出来ずに前作でもう一度挑戦しまた挫折し今作でそのトレンディな電子音と上手にマッチした楽曲は仮想世界に生きてる感覚を与えてくれるような駆け抜けるようなナンバーになっております。
3. Headphones Baby
そして今作のメインソングヘッドフォンズベイビー。
幸福感に溢れたサウンドがメランコリーな感覚を誘発し、
彼ら作り出した物語の中で主人公に自分をしたてくれます。
I wanna live inside your headphones, babyというミューズの ‘Plug In Baby’という曲を完全幸福状態にしたような歌詞。乾いたアコギにFFのゲーム音のようなバッキングシンセ音。
ヴァースとコーラスの緩急の付け方、本当にこの世界にずっといたいと思わせてくれるような中毒性のあるただの現実逃避ではなく、ポジティブで幸福感にありふれたある種の憧れに近いデジタル理想郷のような曲になっています。
5. Paranormal Romance
西部のガンマンのような世界観と電子音が結びついたメロディーとサウンドの融合、
馬のように跳ねるドラムビートに演技の台詞のような歌詞はどこかクリントイーストウッドを想起させます。
それは6. El Pasoという題名で伏線回収をするかのようにテキサス州最西端を題名にした曲は西部の男たちの愛を歌っているかのようなHow can you say that we're okay, baby? Who wants to live like this? I can't relax between the cracks, baby Who wants to live like this? という淡い歌詞は映画のセリフのようでアルバムの中でも指折りの淡い曲になっています。
7. Jump Off The Top
このアルバムの中で一番ライブで盛り上がる曲なんじゃないかと思うほど、間髪のないテンポに Let's jump off the topというポジティブとネガティブが混ざりあった歌詞は後先考えずに無心で聴くことができる曲だと思います。
Norgaardという曲のバイブスも感じられるアルバムの中で一番ロックンロールな曲で初期の彼らのサウンドに一番近いものを感じられると思います。ファンの間ではこの曲が一番好きという声もちらほら。
11. Savage
ブリトニースピアーズのwomanizerという曲を彷彿とさせるメロディーに
バッキングのシンセサイザーの宇宙的ロボティックサウンドと重厚なギターの断続的なサウンド。グラマラスでありながら同時にロボットのような無機質さも同時に兼ね備えていています。
12. Heart Land
乾いたアコギに13歳のアメリカに行ったことのないアメリカの文化が大好きなイギリス人が大人になるにつれ廃れていくアメリカを横目に昔のアメリカ文化に思いを馳せる曲です。
本当にアコギの音が渇いているのにも軽くなく、
とても重厚なサウンドにプラスして煌びやかなシンセの音が少年の記憶をリスナーに見せてくれます。
起伏のある曲ではないのでないのですが、とてもノスタルジーな雰囲気は個人的に大好きです。
全体的に見ると、全てがデジタルになり人間関係ですらデジタル化が進み希薄になりつつ世の中で、敢えて仮想世界のラブシティという仮想空間を念頭に繰り広げられるラブストーリーは彼らの問題提起でもあり答えでもあるのかもしれません。
11年間で5枚のアルバムを作る中でロックンロールがメランコリーラブロマンスを生み出した瞬間を見たような気がします。
思えば1作目のpost break up sex等々、今要素を感じさせるものは最初の段階から彼らの中にはあったと思います。ただ11年間という長い年月の中で彼らも様々な経験を、新しいエッセンスの中で最大限に彼らの特徴が現れた作品だと感じました。