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【朗読用オリジナル小説】冬と夏の歓声
今日は、「冬と夏の歓声」というお話をお届けします♫
自信家のサトシくんが出会ったのは!?
冬と夏の歓声
冬空の下、体操服に身を包んだ子どもたちが、一人、また一人と運動場に戻ってきます。ゴールはすぐそこです。子どもたちの中には、年に一度のマラソン大会を楽しみにしていた子と、そうでない子がいました。
楽しみにしていたサトシくんは、すでに一位でゴールしていて、ゴールの際先生から配られたアメはもう口の中で溶けてなくなってしまいました。ゴールの時の喝采は過ぎ去ってしまったし、残るはトロい同級生たちが全員戻ってくるのを待つばかりです。
「先生!あと何人?」と退屈を持て余したサトシくんが振り返り、大声で聞きました。先生は、「あと一人だよ。応援してあげようね」と言いました。サトシくんは顔をしかめて前へ向き直りました。トロい同級生を応援するなんて、ごめんだと思ったのです。
後ろの方で歓声が上がりました。最後の一人が戻ってきたのです。まだ、やっと姿が見える距離まで近づいたところでした。みんな立ち上がり、一心に、最後の一人がゴールに向かって一歩一歩近づいてくるのを見つめています。手を叩きながら、大きな声で「がんばれ!」と叫んでいます。
ひときわ大きな歓声が上がり、大きな拍手の音が聞こえました。ゴールの方へ振り向いて見ると、最後の一人がゴールしたようでした。
サトシくんはなんだか気に入らないと思いました。あんなに早く走れた自分は、誰も迎えてくれなかったのに、トロいヤツはみんなから拍手と歓声で迎えられるなんて、ずるいと思いました。
「よく頑張ったな、コウタ!」先生がコウタくんの頭をくしゃっと撫でました。サトシくんは横目で見ながら、「コウタ、か」と呟きました。
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