不安だらけで留学したバスケ部女子が、短大全米チャンピオンを経て気づいたこと
アメリカにバスケ留学するような選手は自信がある、プロになるような人だとばかり思っていましたが実はそうではありませんでした。
短大全米チャンピオンになり現在はディビジョン1でプレーするヒル真理選手は初め留学をしたくないと思っていました。しかし、不安だったけれど、一歩踏み出す勇気を振り絞り、彼女は世界へと羽ばたいたのでした。
大切なのはとてもシンプル、一歩踏み出す勇気だったのです。
BASKETBALL DINERさん公式YouTubeにて、セントジョセフカレッジ所属の酒井達晶さん(@ta2basketball)と、現在アメリカのボーリンググリーンステイトユニバーシティ所属のヒル真理選手(@MariHil03019707)の対談が行われました。今回特別に許可をいただき、その対談の内容と,直接インタビューした内容を掲載させていただきました。
英語は嫌いだったが、与えてもらったチャンスは生かさなければ!
ヒル真理選手は2人の姉と1人の兄と弟を持つ5人兄弟で、父がアメリカ人。ヒル真理選手自身は全く英語が話せず留学に対して不安で否定的だった。
しかし家族みんなに留学を勧められ、アメリカの大学に留学しバスケに挑戦している姉の姿を見ている内に、徐々に心の変化が生まれ、アメリカ留学を決めた。
「当時の私は英語を話せないし怖かったので、高校3年生になるまでは留学に行きたいとは全く思っていませんでした。だけど、留学するチャンスは誰にでも与えられるわけではない。自分の成長にもつながるし、もっと視野を広げたいとだんだん思うようになり、アメリカ留学を決意しました。」
高校ではインターハイ出場も果たし、現在では短大全米チャンピオンになるような選手でさえ最初は不安ばかり、自信に満ち溢れて渡米したわけではなかったのだった。
悩まされた言葉の壁と日本との文化の違い
留学して誰もがぶつかる言語の壁に、ヒル真理選手も例外なく悩まされたが、わかってもらえなくても自分から話しかけていったそうだ。
「まずバスケの練習で手を抜かないこと、ディフェンスを頑張ることでコーチやチームメイトとの信頼関係を作りました。周りもいい人で英語が話せないことを気にかけてくれましたし、とにかく自分から話しかけました。しゃべることで周りから英語を教えてもらっています。」
チームメイトといる時間を増やすことで、英語に触れ勉強する時間も増やしていった。"留学生で第二言語が英語"と似た境遇を持つイタリア人選手と共感し合ったことも、大きなきっかけとなったそうだ。
言語の壁に加えて、授業でも日本との違いに苦労した。
「日本の授業との一番の違いはディスカッションです。アメリカの人たちは、他の人と意見が違くても自分の意見をはっきりと主張するのですが、私は自分の意見を言うのが苦手でいまだに苦労しています。それでも、聞かれたら自分の意見をはっきりと言えるようになったという面では昔と比べて変わったと思います。」
シーズン中は学業とバスケの両立がより難しくなり、タイムマネジメントの大切さを痛感したそうだ。さらに、ヒル真理選手はバスケ面でも衝撃的なことがあったという。
「コーチと選手との関係性に驚きました。距離が近いし、コーチと選手がはぐをしたり、プライベートの話もしていて日本では考えられないと思いました。また、短期大学に入学する前に居たIMGアカデミーでは、コーチがモップ掛けまでしてくれていて、選手ファーストの環境でとても恵まれていると思いました。」
思っていたのとは違ったアメリカのバスケ
日本ではセンターやフォワードをやっていたヒル真理選手だったが、アメリカではガードをやっている。慣れないポジションに加え、司令塔としての役目に四苦八苦した。
「ドリブルがすごく苦手だったので練習の1時間前に行って、酒井さんに教わったドリブルワークをしていました。また、司令塔として指示しなくてはいけないけど、最初全然できませんでした。
自信がなかったので、チームメイトにもっと声を出して、自信を持ってと言われていました。でも今は間違ってもいいから、身振り手振りで伝えています。チームメイトも理解したら周りにリピートしてくれているので周りに助けてもらっています。」
さらに自分が思っていたアメリカのバスケの形とは違った。
「当初アメリカのバスケは"フリーで身体能力任せ"だと思いこんでいましたが実際はそうではなく、かなり綿密にルールが決まっているんです。なので練習ではシチュエーション練習に多く時間を割いています。大学によって違うと思うんですけど、状況判断もプレーのチョイスもガードに任される事があったので、考える力や状況判断力がつきました。」
さらに練習の形式も日本とは異なり、当初は驚くことが多かったという。
「シーズン前は走ったり体づくりをしています。あとは、チーム内での対面練習をしています。しかし、シーズンが始まるとスカウティングやプレーの確認、新しいセットの追加をしています。
プラックティスプレイヤーとして、男子選手を呼んだりもしています。シューティングは練習中はやらないですね。全体練習では、チームでできることをやって、個人練習でシューティングやコーチと1on1をしたり自分のやりたい練習をさせてもらえています。」
バスケを通じて人をつなげたい
姉のヒル理奈選手は、アメリカの大学を卒業後Wリーグのトヨタに入団した。同様にヒル真理選手は少し違う未来を見ているようだ。
「大学卒業後は、日本に帰って世界で活躍できるような会社に勤めたいと思っています。将来の夢として、いずれはクリニックのような感じで子供にバスケを教えたいですね。さらに、まだ明確ではないものの、貧困地域のボランティア活動に参加してバスケを教えたいともぼんやりと考えています。」
バスケは好きだから続けたいけどプロになる事は考えていない、と話してくれた。
「今は全力で目標に向かってバスケをやっているけど、その後はもっと視野を広げてバスケ以外の世界にも知見を広げていきたいと思っています。バスケを通じて人をつなげるような役目をしたいんです。」
ヒル真理選手もやはり、アメリカに来て考えが変わったようだ。常識だと思っていたことが、自分の当たり前が通じない世界で、様々なことを学んだようだった。
飛び込んでしまえば何とかなる
最後に自分と同じように何か挑戦する人に向けてエールを送ってくれた。
「本当に変わりたいとか、自分が成長するきっかけを作りたいと思ったら、やりたいところに飛び込んでしまえばどうにかなるんです。自分の強い気持ちと志さえあれば大丈夫なんです。もちろん簡単なことではないけど、それを通じて成長することが出来るし、将来の視野が広がります。
挑戦する前はネガティブな感情に押しつぶされそうになるかもしれないけど、飛び込んでしまえば何とかなる。チャレンジする機会があるのならばチャレンジして欲しいと私は思います。」
短大全米優勝を経験するような選手でさえも自信があって渡米したわけでもない。ただ、大切なのは一歩踏み出す勇気。
勇気を振り絞って一歩踏み出してみませんか。
酒井達晶さん
Twitter:@ta2basketball
Instagram:@ta2basketball
YouTube:BASKETBALL DIARYBASKETBALL DINER
ヒル真理さん
Twitter:@MariHil03019707
Instagram:@mari10remu
今回の対談の全容はこちら