駆け出しの俳優が20代でやるべき5つのこと
この記事は20代以下のまだ売れたとは言い切れない駆け出し俳優のために書きました。才能や人気がめちゃくちゃあって、もう売れちゃって売れちゃって困ってるよおという人は対象外です。
俳優としてはまだまだだという自覚があり、これから20代に突入する人や、もう20代半ばという人、もしくはもう20代終わっちゃうよという人もまだ諦めずに読んでいただければと思います。
ちなみに30代以上を対象としていないのは、単純に自分がまだ32歳で、30代のことをまだ何も知らないからであって、ひょっとしたら30代以上の方にも役立つ内容があるかもしれません。
思いつきでざーっと書いていくので、まあ気軽な気持ちで読んでみてください。
①本をたくさん読む
20代という若い時期は、とにかく何も知らないと思った方がいいです。東大卒であれ芸大卒であれ、世間や世界のことを何も知りません(30代の僕も全然だし)
だから本をたくさん読みましょう。戯曲や演技に関する本は必読です。特に演技に関する本を読んでいる人がそんなにいない印象があるのですが、自分の仕事を向上させる技術のことはたくさん知っておいた方がいいです。
中でもスタニスラフスキーは必須。色々出てるんで好きなものを読んでみるといいでしょう。他にもサンフォード・マイズナーやステラ・アドラーの翻訳本も押さえておきたいですね。後は読みにくいかもしれませんがジャック・ルコックの『詩を生む身体』とか、興味があったらインプロに関する本とかも読んでみるといいでしょう。たくさん読むのが面倒だという人は『二十世紀俳優トレーニング』を読んで、世界中の演技メソッドの要点だけ押さえるのもいいでしょう。
正直、本だけではわからないことが多いと思うので、実際にワークショップなどに通うことは大切です(後述)。しかし、演技にはいろんな方法があり、選択肢があるんだということを知っておくこと自体が大切です。それをしないと、最初に出会った方法でうまくできなかった時に「才能がないんだ…」と誤解してしまいます。俳優の才能がない人なんていません。生かす方法を知らないだけなのです。そしてそれを知るの早ければ早い方がいいんです。自分を変えるのには、生きてきた人生の半分の時間がかかるから(アドラー心理学より)です。20歳なら10年、30歳なら15年かかります。
※僕の映像講義で「海外の演技メソッドをざっくり紹介する」というものがあります。よかったら参考までにどうぞ。
②ワークショップに行く
先述したように、本を読んだだけじゃあ演技は上手くなりませんし、何も身に付きません。読んで興味を持った演技メソッドを教えている場所は日本にたくさんありますし、面白かった劇団や尊敬してる俳優さんや演出家さんのワークショップでもいいでしょう。とにかく身体で学べる場所に行ってください。
ですが、訳もわからずとりあえずスクールに入所するのはやめてください。何も知らない状態でスクールに通うのにはリスクがあります。まずスクールは途中で辞めることが難しいのです。合わないな…と思っても退学するためにお金がかかったりします。それにスクールには複数講師がいるため、合わない人に出会う確率も上がりますし、指導力にそもそも問題がある人もいます。個人的には、そのスクールだけでなく、自身でもワークショップや企画をやったりしてる人は信頼できます。そうでない人は、ただ食いぶちとして講師をやっている可能性があるからです。
もしスクールに入るのだとしたら、事前によく調べてください。なぜそこがいいのか、そこで2年もしくは3年学んだ後に自分はどうなりたいのか。長くそこで学ぶ以上はそれなりの覚悟が要ります。明確なビジョンがない限りは尊敬出来る人や学びたいメソッドを教えてくれるワークショップに通う方がリスクも少なく、学びたい人から学びたいことを学んでいる状況の方が学習効果も高いです。
③合わない所はすぐ離れる
ワークショップ、スクール、劇団、事務所など、合わないなあと思ったらすぐに離れましょう。日本だけでもたくさん選択肢はありますし、日本がそもそも合わねえと思ったら海外にいっちゃうのもありです。
とにかく早々に自分の人生を決めちゃわないことです。先述もしましたが、めちゃくちゃ明確なビジョン、理由、目的、意義がない限りは、合わないところに身を寄せ続けることに何のメリットもありません。その場所が本当に自分の人生を良くしてくれるのかどうか、考えてください。
迷惑をかけちゃうかもしれないとか、干されるかもしれないなんて考えないでください。1人辞めたところで何の痛手にもなりませんし、他の道はいくらでもあります。俳優は死ぬまで出来るとはよく言ったもので、そう考えたら付き合っていく仲間というものは人生と同じレベルで大切なのです。そんな大事なポジションに訳わかんない奴を添えておいても何の意味もないわけです。
演技を学ぶ場所に関してもこれは覚えておいてください。例えばマイズナーテクニックをAという場所で学んでいるが、なぜか合わないとなった時、引き続きマイズナーを学びたかったらAを辞めてBという場所で学んでください。同じメソッドでも、講師によって指導法が違いますし、合う合わないは必ずあります。体験レッスンとか単発WSとか見学とか、まずは気軽に顔を出してみてもいいでしょう。
④アウトプットの機会を自分で作る
20代の頃は学んだり、舞台に出してもらったりと、受け身になることが多くなりがちですが、必ずアウトプットをする機会を自分で作ってください。要はワークショップを開催したり、自主公演を企画したりせいってことです。
自分がただ舞台に出れればそれでいいという人もいるかもしれませんが、そうやって受け身な人は、残念ながら演技にも主体性を感じないのです。つまり自分なりのものがない。誰がやってもいいじゃんという俳優になってしまうのです。(ひっきりなしにオファーが来るほど求められている人は別ですが、多分この記事に必要性を感じて読んでる人はそういうわけじゃないと思います)
良い俳優、売れている俳優というのは、その人がやることに意味や価値があります。だから評価されるし、売れるのです。そしてその意味や価値を生み出すためには、自分で動いて打ち出していくしかないのです。自分は何がやりたいのか、どんな演技が好きなのか、どんな俳優になりたいのか、どんな作品や役を演じたいのか。自分で企画してみるとそれが明確になります。そしてそれを繰り返しているうちに自立した俳優になっていくのです。
これは自分の力でお金を稼ぐ練習という意味でもあります。現代は全人類クリエイター時代と言っても過言ではありません。誰でもその気になれば、自分の力で何かを作り出し、お金に変えることが出来る時代です。そんな素晴らしい時代なんですから、自分から動いてみましょう。
それに俳優さんの多くはお金を稼ぐのが下手です。これは商売の力がどうのこうのというわけではなく、自分に対して価値を感じていないのです。自分はお金を稼げるほどの者じゃありませんと思っているのでしょう。自己肯定感が低く、自信がなく、だから自然と弱い立場に追いやられてしまうのです。
それを変えるためには、実際に自分の力でお金を稼いでみることです。実際僕は26歳の時に演劇一本で生きていくと決めて、バイトやら非常勤やらを全部辞めて、ワークショップや自主企画などに振り切りました。その結果1年足らずで自分の力で飯を食えるようになり、自信と余裕が生まれました。それによってオーディションにも受かりやすくなったし、演技を伸び伸びと出来るようになったのです。この経験はバカになりません。
ワークショップなら身内や友達の稽古会から始めてみてもいいでしょう。戯曲を読む会とかでもいいかもしれません。公演はモノローグ(短い一人芝居)公演や朗読ならすぐ打てますし、それをやれる場所もいくつかあります。軽率に始めてみてください!
※個人的には一人芝居脚本は渋谷悠の『モノローグ集「穴」』『モノローグ集「ハザマ」』や妻の今井夢子の脚本など。場所は江古田の兎亭が安くておすすめです。
※自分の力でお金を稼ぐ方法論を具体的に紹介している映像講義もあります。よかったらこちらもどうぞ。
⑤良い仲間を見つける
最終的にはこれが一番かもしれません。というか、今まで話したことを全てやれば、自然と見つかります。
先述したように、演劇の仲間は死ぬまで付き合うことになる可能性があるのです。なので良い仲間がいることは大切です。自分の能力は親しい友人5人の平均だとも言われていますしね。
これは友人だけではなく、恩師と呼ばれる人もです。メンターという言い方をしてもいいかもしれません。いざとなったらこの人に相談しようという信頼出来る先生を1人は見つけてください。年齢を重ねるごとに、自分に意見してくれる人は少なくなってきてしまいますし、自分の経験にかまけて他人を受け入れられなくなってきてしまったりします。正しい指導を何もされないまま歳を食ってしまうほど恐ろしいことはありません。若いうちにそういう人は見つけておきましょう。
まとめ
というわけで、ざっと思いつきで書いてきましたがいかがだったでしょうか。
個人的にはかなり簡潔にまとまったんじゃないかなあと自負しております。全ては僕が20代の頃にやって思ったこと、ないし周りの良い俳優、売れている俳優を見て思ったことの集大成です。
もし質問や相談あったら、遠慮なく連絡ください。堅苦しいのは苦手なので、LINE@で気軽にメールしてくれるとありがたいです。
皆さんの活動が少しでも良い方向に向かいますよう祈っております。では。
僕のワークショップとか公演情報は以下HPにまとまってます。
情報を定期的に流しているオープンチャットもあります。現在320人近く利用者がいます。無料で匿名で入れますので、こちらもお気軽にどうぞ!