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金に困っても闇バイトをする必要はない

いま流行りの「闇バイト」の報道を見ていると、フラッシュバックする記憶が多すぎて手が震えることがある。

アングラの世界で生きるしかなかった俺には、馴染みのある景色だ。

俺もまた、金が必要だった。金のために良くないことを沢山してきた。

闇バイトという言葉は本質を見えにくくする。
あれは闇でもなければ、バイトでもない。借金返済に困って、今すぐ金を用意しなければならない切羽詰まった奴らが「今すぐ金を用意できる手段」を探しまくっているというのが現実だ。
「毎月の収入を増やしたい」とか「遊ぶ金が欲しい」とか、そんな悠長な話ではない。
カネに困っているからといって、時給1,200円で毎日働けばいいとかそういう話でもない。荷揚げ作業をすれば稼げるとか軽く言う人が多いが、そういうことではない。
借金返済や税金の督促、生活費などでお金が必要なのに、財布には10円もなく、今すぐに、本当に今すぐにお金が必要なのだ。お金がないと危ないことになるという恐怖があるのだ。

個人的な話をする。

30歳のとき、仕事が破綻しホームレスになった。ホームレスと言っても路上で寝ていたわけではなく、車で寝泊まりしていた。車はタイヤがパンクして走行不能、おまけに車検が切れていたし、バッテリーも死んでいた。車といっても屋根がついた小屋でしかなかった。

当時の俺は仕事が破綻し数千万円の借金を抱えていた。発達障害の脳みその俺には不可能なことを頑張り続けた結果だった。
銀行や消費者金融から借りている分は自己破産すれば逃れられたかもしれないが、商売柄、資金繰りはあまりよろしくない方面からのものだった。男を磨く仕事のみなさんからの資金繰りだ。
取り立てが熾烈を極め、暴力的だった。昨今と違い、コンプライアンスなんて屁でもない時代だ。
取り立てから逃げつつも、なんとか返済はしていかなければならない。返済だけならいい、自分が苦しいだけならまだ我慢できる。問題は、俺に頼っている人たちがいたことだった。
ひもじい思いはさせたくない、可哀想なことにはさせたくない、そういう恐怖感と重圧に苦しみながら、俺は今すぐ金儲けができるものをずっと探していた。
毎日のように10万円を稼ぐ必要があった。

その時点で既に頭がまともじゃなくなっていた。馬鹿な頭がもっと馬鹿になっていた。

ガラケーは止められていた。車は動かない。電車賃もない。ゴミから拾ってきた折り畳み自転車はあった。ハンドルが曲がっていてまっすぐ走らない自転車に乗って、図書館に通い詰めてた。
なぜ図書館なのかというと、当時、無料でインターネットにつながる共用のパソコンが置いてあったからだ。それで検索していたのはこんな単語。

「今すぐ金を稼ぐ方法」
「すぐに現金」
「高額バイト」

これは現代でもそうだと思うけれど、もうね、まともな情報は出てこない。当時、こんな情報が並んでいた。

①データ入力の簡単なお仕事で高収入
②裕福な女性のベッドのお相手をするお仕事です
③銀行口座を作ってくるだけで高収入
④お買い物をするだけでお給料

まあどれでも詐欺か犯罪だとすぐに分かる。
①は出会い系サイトで男性とやり取りをするサクラ
②は女性相手の強盗
③は口座売買の犯罪
④は騙し取ったクレカで高級時計を買ってくる犯罪

でも、切羽詰まった奴らならきっとやろうとするだろう。そして、当時も逮捕されるケースが多かった。
俺はというと、さすがにそれらは選ばなかったが、それは犯罪かどうかという判断ではなく、「本当に稼げるかどうか」というだけだった。違法でも本当に大金が稼げるならきっとやったと思う。その結果、後戻りができなくなり老人を殴り殺すとか、もしかしたらやったかもしれない。

金に困って追いつめられるとそういう心理状態になるのだ。

しかし偶然、俺は違う手段を取ることにした。まず18歳のときからの出自であるセックスの仕事。つまり女性のお相手をして対価をもらうというものをまた始めた。これでは大金は稼げないが飯のタネにはなる。

そして図書館のパソコンを使ってホームページを作り、既婚者専用の合コンを主催する商売を始めた。要するに既婚者のマッチングの仲介に入って金をせしめるというものだ。非常に情けなく、せこい商売だった。友人知人の元風俗嬢を人妻と称してサクラにして配置。エッチな見た目の会員がいるものだから、男性客は安くはない会費を払ってくれた。
次第に有名になってくると、サクラを使わなくても会員が増えた。男女ともにどんどん膨れ上がった。
しかしマッチングアプリではなくリアルの不謹慎合コンだったので会員同士のトラブルが頻発。管理に疲れ果て数年で撤退したが、その商売はそこそこ稼げた。少なくともまたガラケーを所有することができたし、車を直してまた乗れるようになった。

あとは、これも出自のひとつである風俗店。そしてここでは書けないがあとふたつの商売。

全部アダルト系の商売だった。いろんなところで言っているが、どうやら俺はエロ商売の才能が多少あるらしく、エロだけは失敗したことがない。エロの商売で俺を頼る人を養ってきたし、俺自身も生活ができた。犯罪に手を染めずに生き抜くことができた。

極貧時代に始めたその商売のいくつかは現在まで継続している。まともな社会人には今もなれないままだけど。

数年前にようやくすべての借金を完済し、クレジットカードも再び持つことができるようになった。若さをエロと借金返済につぎ込み、虚しさと情けなさに押しつぶされそうになるが、まあ、遅れたがなんとか人並みの最下層にはこぎつけることができた。本当に運が良かった。才能というけれど、才能じゃない、運でしかない。

そう考えると、パラレルワールドでは俺は金に困って強盗をし、無期懲役になっていたかもしれないと思う。あの金に困った時の、知能指数が3くらいになる感じは、思い出すと手が震えてくる。
高確率で俺は犯罪者になっていたはずだった。

俺はたまたま生き残っただけであり、99.9%は失敗に終わる。

現実的なことを言うと、闇バイトなんてしなくてもいいはずだ。金がなかったら自己破産をすればいいだけ。その知識がなかったら、自治体で行っている生活相談を利用したり、ファイナンシャルプランナー(保険屋ではなく本物の)に相談してもいいはず。
税金の滞納をしていたとしても役所に相談すれば分割払いに応じてくれる。金融機関は弁護士に相談すれば督促が止まる。生活がどうしようもなければ生活保護を申請することもできる。借金がなければコンビニのアルバイトでも十分生活できるようになるはずだ。

借金があるからといって、「大金を稼いでリセット」とか「目先の金を稼いでやりすごす」とか考えていると、最悪は一生刑務所で過ごすことになってしまう。

金に困ったら、まず責任を全て放棄すると考える方が安全。日本の法律は優れていて、お金に関してはゴメンナサイでリセットすることができる。
その知識だけあれば、なんとかなるよ。

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アキラ師
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